2025年6月、金融庁が金融審議会総会にて「暗号資産を金融商品取引法(金商法)の枠組みに移行する方針」の検討を正式に開始しました。これにより、暗号資産が金商法の対象になる方向性が明示され、現行制度下での助言業務に大きな影響が生じる可能性があります。
本記事では、現在、投資助言・代理業の登録をせずに、現物暗号資産に関する投資助言を行っている事業者が、この制度移行を見据えて取り組むべき課題や備えるべき実務対応について解説します。
📝記事概要
2025年6月の金融審議会における方針決定により、暗号資産が金融商品取引法(金商法)の対象となる可能性が高まっています。本記事では、未登録の投資助言業者が現物暗号資産に対して行う助言について、法改正後に生じる実務的・制度的リスクを整理し、登録の検討やコンプライアンス体制の再構築の必要性を解説しています。
特に、業種区分の再編、情報開示義務の強化、インサイダー取引規制の導入など、助言業務に直接関係する規制強化のポイントを紹介。加えて、「登録する」「登録しない」それぞれのメリット・デメリット比較や、今から備えるべき対応リストも掲載し、制度移行を前提とした判断材料と行動指針を事業者に提供する内容となっています。
◇暗号資産に関する投資助言の現状
2025年8月時点では、以下のような整理が可能です。
- ○ 現物暗号資産(例:ビットコイン等)への助言
⇒ 投資助言・代理業に該当しない - × 暗号資産デリバティブ取引への助言
⇒ 投資助言・代理業への登録が必要
しかし、実務では現物かデリバティブかの判断が難しいケースも多く、助言対象となる暗号資産の性質や取引形態を十分に分析した上で、慎重な業務設計が求められます。
◇今後想定される規制の方向性
- 情報開示義務の強化
ホワイトペーパーの記載や価格変動要因の説明義務等が助言業者にも求められる可能性があります。 - インサイダー取引規制の導入
助言時に取得した内部情報の取扱いに関する規制が導入される見込みです。 - 不公正取引・詐欺的勧誘への対応強化
オンラインサロンや勧誘行為も規制対象となる可能性があり、表現の適正化が求められます。 - 税制との連動
暗号資産の利益が分離課税(約20%)に移行することで、助言戦略や顧客対応にも税務的影響が及びます。
◇登録・非登録のメリット比較
【登録した場合のメリット・デメリット】
- 金商法対応によるコンプライアンス強化が図られ、法的リスクが低減する
- 投資助言業者としての信頼性が向上し、顧客や提携先との関係性が築きやすくなる
- 登録申請、監督対応、業務運営のためのコストや業務負担は増加する
- 規制環境下においても事業継続が可能となり、助言業務の安定性が高まる
【登録せず現行のままで維持する場合のメリット・デメリット】
- 登録コストをかけずに現行の業務を継続できるため、短期的には負担が軽い
- 金商法への制度移行後には違法状態となるリスクがあり、事業継続に支障が生じる可能性がある
- 提携先や顧客からの警戒が強まることで、対外的評価が低下するリスクがある
- 制度移行により、撤退やビジネスモデルの転換を迫られる可能性がある
◇今から備えるべき実務対応
制度移行を前提とした備えとして、以下のアクションが推奨されます。
- 助言内容の棚卸しと助言対象資産の明確化
- 助言対象に応じた契約書・利用規約の見直し
- 情報開示体制の構築(開示書面の準備、説明責任)
- 税務戦略の確認と顧客向け説明ツールの整備
- 外部専門家(法務・税務)との定期的な相談体制構築
- インサイダー情報遮断ルートの明文化
◇事業方針の分岐と選択肢
規制移行を踏まえ、事業者は以下のいずれかのルートを選択する必要があります。
- 登録ルート(助言業継続)
⇒ 投資助言・代理業の登録、業務体制の整備、説明責任と情報開示への対応 - 撤退・転換ルート
⇒ 助言業務の終了手続き、顧客対応方針の策定、新しい収益モデルへの移行準備
◇まとめ
規制移行は、「暗号資産助言業務の制度化」を意味し、従来のグレーゾーン的な運用から脱却する転換期といえます。
今こそ、自社の立ち位置・責任・事業戦略を見直し、法制度の変化に対応する準備を始めるべき時期です。
参考ページ
・Coin Choice「【2025年7月23日最新】金融庁、暗号資産の「金商法」移行を本格検討へ」
・金融審議会総会(令和7年6月25日)「暗号資産を巡る制度のあり方に関する検討について」
・森・濱田松本法律事務所HP「政府における暗号資産規制の見直しに関する動向」
関連する当事務所のブログ記事
・「【解説】暗号資産に関する助言を行うを行う際の注意点」
コメント