一般社団法人資産運用業協会の設立決議を受けて一般社団法人日本投資顧問業協会に所属している投資助言・代理業者が2026年4月1日に向けてやるべきこと

投資助言・代理業

 一般社団法人日本投資顧問業協会及び一般社団法人投資信託協会の両協会は、2025年7月1日の定時総会において合併契約を承認し、2026年4月1日に両協会を吸収合併する形で「一般社団法人資産運用業協会」を設立する決議を行いました。
 本記事では、一般社団法人日本投資顧問業協会に所属している投資助言・代理業者が、2026年4月1日に向けて行うべき対応について整理します。

📝記事概要

 2026年4月1日に予定されている「一般社団法人資産運用業協会」の設立に伴い、一般社団法人日本投資顧問業協会に所属する投資助言・代理業者は、登録情報や業務書類、広告・契約書面などの名称変更を含む複数の対応が求められます。
 本記事では、変更届出の期限や実務上の注意点を整理するとともに、社内体制の整備、顧客対応、外部委託先との連携、金融庁からの通知確認など、実務者が見落としがちなポイントも網羅的に解説しています。
 記事末尾には、社内準備に役立つチェックリストと対応マニュアルの雛形も掲載。協会統合に向けた準備を円滑に進めたい事業者にとって、実務的な指針となる内容です。

◇一般社団法人資産運用業協会が設立される背景

 新協会設立の背景には、「資産運用立国」の実現に向けて、業界の自主規制機能を一元化し、会員の運用力やガバナンスの強化、発信力の向上を図る狙いがあります。加盟見込み社数は約900社、運用資産は約1000兆円に達する見込みです。両協会は2024年1月に統合検討を開始し、資産運用業を「銀行・証券・保険」と並ぶ柱とすることを目指しています(2025年9月30日付日本経済新聞より)。

◇投資助言・代理業者が2026年4月1日までにやるべきこと

 以下に、投資助言・代理業者が新協会設立に向けて対応すべき事項を整理します。

  1. 登録申請事項の変更登録を、2026年4月1日から2週間以内に当局へ届け出る。
  2. 業務方法書に旧協会名の記載がある場合、他の業務内容等に変更があれば併せて変更届を提出する(変更がない場合は提出不要)。
  3. 標識の修正を2026年4月1日以降、速やかに実施する。
  4. 広告等に記載された所属団体名を、新協会名に変更する(変更期限は設立後1年以内)。
  5. 契約締結前交付書面(電磁的方法による提供を含む)に記載された所属団体名を、新協会名に変更する(変更期限は設立後1年以内)。
  6. 2026年4月1日以降に提出する事業報告書に記載する所属団体名を新協会名に変更する。
  7. 金融ADR代替措置において協会名の記載がある場合は、該当箇所を変更する。
  8. 社内規程やホームページ等に記載された旧協会名を、新協会名に変更する。

◇まとめ:実務対応に向けた追加の留意点

 これらの変更手続きは複数部署にまたがる可能性があるため、社内で対応タスクを明確化し、担当者を決めておくことが重要です。特に業務方法書や契約書面の変更は、法務部門との連携が不可欠です。
 また、既存顧客からの問い合わせに備え、協会名変更に関する説明文案やFAQを事前に準備しておくと安心です。外部委託先(ホームページ制作会社、広告代理店、電子交付サービス提供事業者など)との連携も早めに行い、対応スケジュールを共有しておきましょう。
 今後、金融庁や新協会から追加の事務連絡やQ&Aが発出される可能性もあるため、公式発表を定期的に確認し、社内対応方針を柔軟にアップデートできる体制を整えておくことが望まれます。
 さらに、これらの対応履歴や意思決定の記録は、将来的な監査や検査で確認される可能性があるため、記録を残しておくことも忘れずに行いましょう。

チェックリスト雛形(社内準備用)

 以下は、社内対応の抜け漏れ防止に活用できるチェックリストの雛形です。必要に応じてカスタマイズしてご利用ください。

  • ☐登録申請事項の変更届出の準備
  • ☐業務方法書の記載確認と変更要否の判断
  • ☐標識の修正スケジュールの策定
  • ☐広告・契約書面の文言変更案の作成
  • ☐顧客向け説明文案・FAQの作成
  • ☐ホームページ・社内規程の記載変更の洗い出し
  • ☐外部委託先との対応スケジュール共有
  • ☐金融ADR関連文書の記載確認
  • ☐事業報告書の様式変更対応
  • ☐対応履歴の記録と保存方針の策定
  • 金融庁・新協会からの通知の定期確認体制の構築

社内対応マニュアル一般社団法人資産運用業協会設立に伴う対応事項(2026年4月1日施行)

 このマニュアルは、一般社団法人日本投資顧問業協会が一般社団法人資産運用業協会へ統合されることに伴い、当社が必要とする社内対応を整理したものです。各部署が連携し、漏れなく対応を完了するための指針として活用してください。

  1. 登録申請事項の変更届出(法務・コンプライアンス部門)
  • 対象:金融庁への登録申請事項(協会名)の変更
  • 期限:2026年4月1日から2週間以内
  • 対応:変更届出書類の作成、電子申請システムへの提出準備、提出後の受理確認と記録保存
  1. 業務方法書の確認・変更(法務部門)
  • 対象:業務方法書に旧協会名が記載されている場合
  • 対応:他の業務内容・方法に変更がある場合は、併せて変更届を提出、変更がない場合は提出不要、記載箇所の洗い出しと文言修正案の作成
  1. 標識の修正(総務部門)
  • 対象:事務所内外の標識、プレート等
  • 期限:2026年4月1日以降、速やかに実施
  • 対応:現物確認と修正箇所の特定、新協会名を反映した標識の制作・設置
  1. 広告・契約書面の文言変更(営業・法務部門)
  • 対象:広告、パンフレット、契約締結前交付書面(電子交付含む)
  • 期限:新協会設立後1年以内
  • 対応:該当文書の一覧化、新協会名への文言変更案作成、顧客向け説明文案・FAQの作成、変更後の社内承認・再配布
  1. ホームページ・社内規程の修正(広報・総務部門)
  • 対象:会社ホームページ、社内規程、社内マニュアル等
  • 対応:該当箇所の洗い出し、新協会名への修正案作成、外部制作会社との連携(必要に応じて)
  1. 金融ADR関連文書の修正(法務部門)
  • 対象:金融ADR代替措置に関する文書
  • 対応:協会名記載箇所の確認、新協会名への変更対応
  1. 事業報告書の様式変更(経理・コンプライアンス部門)
  • 対象:2026年4月1日以降に提出する事業報告書
  • 対応:所属団体名の変更反映、様式の更新と社内共有
  1. 外部委託先との連携(総務・広報部門)
  • 対象:ホームページ制作会社、広告代理店、電子交付サービス提供事業者など
  • 対応:協会名変更に伴う作業依頼、対応スケジュールの共有と進捗管理
  1. 金融庁・新協会からの通知確認体制(コンプライアンス部門)
  • 対象:事務連絡、Q&A、ガイドライン等
  • 対応:定期的な公式サイトの確認、新情報の社内共有と対応方針の更新
  1. 対応履歴の記録と保存(全体管理)
  • 対象:各対応の記録と証跡
  • 対応:対応履歴の記録(日時・担当者・内容)、電子ファイル・紙媒体での保存、将来的な監査・検査への備え

参考資料
日本経済新聞:投資信託協会と投資顧問業協会、26年4月に合併へ

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✍ 執筆者プロフィール

 金融法務コンサルタント。元行政書士として、IFA登録や投資助言・代理業登録の支援実績多数。
 現在は、ブログ・noteを通じて、金融ビジネスに関心のある実務家向けに情報発信を行っています。

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