近年、新NISA制度の開始などにより、個人が投資を始める際のハードルが下がり、投資に関心を持つ方が増えています。
このような流れの中で、会社員として働きながら個人投資家として成功し、獲得した投資のノウハウをもとに、投資助言を行いたいという方から、投資助言・代理業への登録に関するご相談をいただく機会が増えてきました。
そこで本記事では、「副業・複業として個人が投資助言・代理業を行うことは可能なのか?」と「個人が副業・複業として投資助言ビジネスを行う場合の可能性と落とし穴」について、制度面・実務面の両方から解説していきます。
📝記事概要|副業・複業で投資助言・代理業を始めたい人へ
副業・複業として投資助言・代理業に関心を持つ個人が増える中、本記事では「制度上の可能性」と「実務上の現実」を踏まえ、登録のハードルや代替手段について詳しく解説しています。
主な内容は以下の通りです:
- 投資助言・代理業に登録するための人的構成要件と費用
- 副業・複業として登録する際の制度上の可否と実務的な難しさ
- 金融業界経験がない個人が直面する課題と登録断念の事例
- 合法的に投資情報を提供する方法と注意点
- 投資情報提供ビジネスの収益化モデル(アフィリエイト、広告収入、noteなど)
- よくある誤解に対するQ&A形式の補足
- 不正行為のリスクと、合理的な情報発信のあり方
副業として投資関連ビジネスを検討している方にとって、制度の正しい理解と現実的な選択肢を知るための一助となる内容です。
◇投資助言・代理業に登録する際に求められる人的構成要件と登録に要する費用
まず、投資助言・代理業に登録する際に最大の難関となるのが人的構成要件です。
登録には以下の役割を担う人材が必要です:
- 経営者
- 分析・助言担当者
- コンプライアンス担当者
- 内部監査担当者
それぞれに3年程度の実務経験が求められ、登録実務上は金融業界経験者が2名以上必要とされています。
一見すると、金融業界経験者が2名いれば登録できそうに思えますが、実際には2名体制では顧客数が限られ、外部の弁護士等に内部監査を委託する必要があるなど、運営面での制約が多くなりがちです。そのため、一般的には最低3名体制での登録を目指すケースが多くなります。
登録に必要な費用は以下の通りです:
- 登録免許税:15万円
- 供託金:登録完了後に500万円を法務局に供託
なお、制度上は個人事業主でも登録可能であり、資本金要件はありません。
◇副業・複業として個人が投資助言・代理業を行うことは可能なのか?
制度上は、個人事業主として登録する道が開かれており、他社の従業員であることも欠格事由には含まれていないため、理論的には副業・複業としての登録は可能です。
しかし、制度上可能であることと、実務的に可能であることは別問題です。
たとえば、以下のようなご相談をいただいたことがあります:
「会社員として働きながら個人投資家として10年間のキャリアがあります。数千万円の利益も得ました。個人投資家仲間と投資助言・代理業に登録して副業として事業を始めたいのですが、登録申請代行をお願いできますか?」
この方もご友人も金融機関での勤務経験がなく、人的構成要件を満たせていないため、登録は断念されました。
このように、金融業界での実務経験がない方が多く、人的構成要件を満たせず登録できないケースが非常に多いのが現状です。また、資金面や人的資本が乏しいことから、外部から人材を確保するのも難しく、常勤性が求められるポジションもあるため、フルタイム勤務の会社員では「業務執行体制が不十分」と判断されるリスクもあります。
さらに、金融機関に勤務している方が副業として登録を目指す場合も、利益相反の懸念から副業が認められないケースが多く、現実的には困難です。
◇現実的な選択肢:投資情報の提供ビジネス
こうした背景から、副業・複業として投資助言・代理業に登録するのは極めて困難です。そこで、代替的な選択肢として「投資情報の提供ビジネス」が考えられます。
以下の条件を満たす情報提供であれば、登録なしでも合法的に行うことが可能です:
- 会員登録が不要
- 誰でも自由にアクセス可能(ブログやSNSなど)
- 不特定多数が随時閲覧できる状態
- 無料で閲覧可能
一方、以下のような形式は投資助言・代理業に該当する可能性が高いため注意が必要です: - 会員登録が必要
- パスワードでアクセス制限がある
- 特定の者しか閲覧できない
- 有料で閲覧させる形式
このような形式で情報提供を行う場合は、投資助言・代理業への登録が必要になる可能性があるため、慎重な判断が求められます。
◇投資情報提供ビジネスの収益化モデル
合法的に情報提供を行う場合でも、収益化の可能性は十分にあります。以下のようなモデルが考えられます:
- アフィリエイト
証券会社や投資関連書籍などの紹介リンクをブログやSNSに掲載し、成果報酬を得る方法です。
※注意点:紹介内容が「助言」と誤認されないよう、表現には十分注意が必要です。 - 広告収入
YouTubeやブログに広告を掲載し、閲覧数や再生数に応じて収益を得る方法です。Google AdSenseなどが代表的です。
※注意点:助言的な表現(「この銘柄は買い」など)は避け、教育的・一般的な内容にとどめることが重要です。 - 有料コンテンツ販売
noteやメルマガなどで、投資体験談や市場の見方などを有料で提供する方法です。
※注意点:助言的内容は避け、あくまで個人の体験や一般的な教育コンテンツにとどめる必要があります。
◇よくある誤解とQ&A
このテーマについてお客様からよくいただく質問をQ&A形式でまとめました。
Q1. 投資で成功した経験があれば、助言業に登録できるのでは?
A1. 投資経験と助言業登録に必要な「金融業界での実務経験」は別物です。制度上の要件を満たす必要があります。
Q2. 無料でもメルマガで投資情報を配信すれば合法?
A2. メルマガは「特定の者への配信」とみなされる可能性があるため、注意が必要です。
◇まとめ
副業・複業として個人が投資助言・代理業の登録を行うことは制度上可能ですが、実務的には極めて困難です。中には、名義貸しや形式的な役職配置などの不正行為に手を染める事例もありますが、これは行政処分や刑事罰の対象となるだけでなく、民事上の責任も問われる可能性があります。
法的・倫理的にも、こうした不正を行ってまで参入することは合理的ではありません。
個人が副業・複業として投資に関するビジネスを行う場合は、投資助言業に抵触しない形での情報提供にとどめ、合法的かつ持続可能な形で活動することが最も現実的な選択肢です。
関連ページ
・【2025年版】投資助言・代理業に登録するための人的構成要件まとめ
・個人事業主でも登録できる?投資助言・代理業登録の必要条件と現実
コメント