行政処分事例から学ぶ教訓②|投資助言・代理業登録制度と無登録業者に対するリスク解説

行政処分事例

 近年、SNSやブログ、メルマガなどを通じて投資情報を発信する個人や事業者が増えています。中には「自分は助言業者ではない」「単なる情報提供だから問題ない」と考えている方もいるかもしれません。
 しかし、金融商品取引法では、投資判断に影響を与えるような情報提供を業として行い、報酬を得ている場合には「投資助言・代理業」に該当する可能性があります。登録を受けずにこうした行為を続けると、行政処分や刑事罰の対象となることもあるのです。
 本記事では、令和6年11月27日に関東財務局が公表した行政処分事例「Net」をもとに、投資助言・代理業の登録制度と無登録業者に対するリスクについて解説します。

📝記事概要|無登録で投資助言を行うことのリスクとは?

 本記事では、令和6年11月27日に関東財務局が公表した行政処分事例「Net」をもとに、投資助言・代理業の登録制度と、無登録で業務を行うことのリスクについて解説します。

  • ✅ 行政処分の背景と「警告」の意味
  • ✅ 投資助言・代理業登録制度の構造と目的
  • ✅ 無登録業者に対する刑事罰・行政措置の可能性
  • ✅ 情報発信が「助言業」に該当するケースの注意点
  • ✅ 登録業者かどうかを確認する方法
  • ✅ 登録申請の流れと必要書類(事業者向け)
  • ✅ 登録業者が備えるべき内部管理体制の具体例

 「知らなかった」では済まされない制度の落とし穴と、読者自身が取るべきリスク管理のポイントを、実務的な視点から丁寧に解説しています。情報発信を行う個人や、登録を検討する事業者の方は必読の内容です。

◇事件の概要|警告を受けた「Net」の事例

 関東財務局が令和6年11月27日に公表した行政処分によれば、事業者「Net」はインターネットを通じて投資顧問契約に基づく助言の勧誘を行っていたとして、警告を受けました。

  • 業者名:Net
  • 所在地(公表時点):東京都大田区南蒲田2-16-1
  • 行為の概要:投資顧問契約に基づく助言の勧誘(インターネットを通じた営業)
  • 処分内容:警告書の発出(金融商品取引法第29条違反)
  • 公表日:令和6年11月27日
  • 公表機関:関東財務局

※公表文では、業者名や所在地について「勧誘資料等に基づく記載であり、虚偽の可能性がある」と明記されています。令和7年10月時点で、刑事処分や証券取引等監視委員会による申立て等は確認されていません。

◇投資助言・代理業登録制度の意義と構造

 投資助言・代理業は、金融商品取引法に定められた「金融商品取引業」の一類型です。助言契約や代理・媒介を通じて投資判断を支援する業務を業として行うには、財務局への登録が必須です。

 登録制度の趣旨は以下の通りです:

  • 投資者の保護(誤誘導や不適切な助言の防止)
  • 監督・検査制度の整備(帳簿保存、業務規程、内部管理体制)
  • 責任追及の制度的基盤(行政処分・刑事制裁の根拠)

 登録には、役員・従業員体制、資本要件、内部管理規程、顧客保護措置などの整備が求められます。

◇警告処分の意味と位置づけ

 無登録業者に対する「警告」は、強制力を持つ処分ではありませんが、以下のような意味を持ちます:

  • 業務停止命令ではなく、改善・停止を促す勧告的性質
  • 業者名・行為概要の公表による注意喚起と抑止効果
  • 証券取引等監視委員会による検査や禁止命令申立て、刑事捜査への足掛かり

 つまり、警告は「初期段階の行政対応」であり、違法性の最終判断ではありません。

◇無登録助言業者に課されうる刑事リスク・罰則

 無登録で投資助言・代理業を営むことは、金融商品取引法違反です。以下のような刑事リスクがあります:

  • 5年以下の懲役または500万円以下の罰金、またはその併科
  • 行政処分と並行して刑事罰が科される可能性
  • 被害者申し立てや証拠把握による捜査開始の可能性
  • 登録業者と紛らわしい商号使用も処罰対象

◇補足①|情報発信が「助言業」に該当する可能性

 有料メルマガやサロン、LINE配信などで特定銘柄の推奨を継続的に行っている場合、報酬の有無にかかわらず「助言業」に該当する可能性があります。情報発信を業として行う場合は、登録の要否を慎重に検討しましょう。

◇補足②|登録業者かどうかの確認方法

 契約前には、金融庁の「登録業者一覧」で業者名や所在地を検索し、登録状況を確認することが重要です。登録番号の記載がない、所在地が曖昧、代表者名が不明な場合は特に注意が必要です。

◇補足③|登録申請の流れと準備すべき書類(事業者向け)

 登録申請には、事業計画書、履歴書、資本要件の証明、内部管理規程、契約書雛形などが必要です。財務局との事前相談や専門家への依頼も有効です。

◇補足④|登録業者が備えるべき内部管理体制の具体例

 登録業者には、助言内容の記録保存、利益相反の管理、契約内容の明確化、苦情対応体制などが求められます。これらは投資者保護の実務的基盤であり、無登録業者には通常備わっていません。

◇まとめ|「知らなかった」では済まされないリスク

 無登録で投資助言を行うことは、金融商品取引法違反であり、行政処分や刑事罰の対象となる重大な行為です。処分を受けた場合、将来的に正規の登録を受けることが困難になる可能性もあります。
 情報発信を行う個人や事業者は、「自分は関係ない」と思い込まず、制度の理解と登録要否の確認を怠らないことが重要です。読者の皆様には、ぜひ本記事を契機に、制度の正しい理解とリスク管理を徹底していただきたいと思います。

💬 Q&A

Q1. 無登録でも「無料で情報を発信するだけ」なら問題ないのでは?
A1. 無料であっても、継続的に特定銘柄の推奨などを行い、読者の投資判断に影響を与える場合は「助言業」に該当する可能性があります。報酬の有無だけで判断せず、発信内容と態様を慎重に確認しましょう。

Q2. 登録業者かどうかはどこで確認できますか?
A2. 金融庁の公式サイトに「登録業者一覧」が掲載されています。業者名や所在地で検索できるため、契約前に必ず確認することをおすすめします。

Q3. 登録申請にはどのような準備が必要ですか?
A3. 事業計画書、役員・従業員の履歴書、資本要件の証明、内部管理規程、契約書雛形などが必要です。財務局との事前相談や、行政書士・弁護士など専門家への依頼も有効です。

Q4. 警告を受けただけでは違法とは言えないのですか?
A4. 警告は「初期段階の行政対応」であり、違法性の最終判断ではありません。ただし、警告を契機に検査や刑事捜査に発展する可能性があるため、軽視すべきではありません。

Q5. 無登録業者が登録業者と似た商号を使うとどうなりますか?
A5. 金融商品取引法では、登録業者と紛らわしい名称の使用も禁止されています。これに違反した場合、行政処分や刑事罰の対象となる可能性があります。

Q6. 将来的に登録を目指す場合、過去の違反歴は影響しますか?
A6. はい。過去に無登録で助言業を行い、行政処分を受けた場合、登録審査において不利になる可能性があります。信頼性や適格性が問われるため、違反歴は重大な障害となり得ます。

参考資料
関東財務局ホームページ:無登録で金融商品取引業等を行う者について(Net)

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✍ 執筆者プロフィール

 金融法務コンサルタント。元行政書士として、IFA登録や投資助言・代理業登録の支援実績多数。
 現在は、ブログ・noteを通じて、金融ビジネスに関心のある実務家向けに情報発信を行っています。

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