本ページでは、投資助言・代理業やIFA(金融商品仲介業)に関わる実務者向けに、金融商品取引法を中心とした重要用語を「登録実務・業務設計の視点」から解説しています。
単なる定義紹介にとどまらず、「実務でどこが問題になりやすいか」「誤解されやすいポイント」もあわせて整理しています。
金融商品取引業の基本概念
金融商品取引業
金融商品取引業とは、金融商品取引法に規定されている投資性のある金融商品を取り扱う業務のことです。
金融商品取引業は、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資運用業、投資助言・代理業の4つに分類されています。
金融商品取引業の業務には、有価証券(株式、公社債など)・デリバティブの販売・勧誘、投資助言、投資運用、顧客資産の管理が含まれています。
このように、金融商品取引業は、投資家の投資資産に重大な影響を与える業務を行っていることから、投資家保護と金融市場の健全な発展のために、金融商品取引法に基づく登録を行うことを義務付けられています。
ちなみに、よく誤解されがちですが、金融商品仲介業(IFA事業者)は、金融商品取引業とは異なります。
金融商品仲介業は、金融商品取引業を補完する業務、具体的には有価証券の売買等の媒介や有価証券の募集もしくは売出しの取り扱い等の業務を行っています。
金融商品仲介業も金融商品取引法に基づく登録を行う必要があります。
▶ 実務上のポイント
- 「どの業務に該当するか」により登録区分が大きく異なる
- SNS・オンライン講座・投資スクール運営では、意図せず投資助言・代理業に該当するケースが多い
▶ よくある誤解
- 「売買を直接しなければ金融商品取引業ではない」という誤解
- 実際には「助言」「勧誘」も対象となる点に注意
金融商品取引法における有価証券
全ての有価証券が金商法における有価証券とされているわけではありません。
有価証券とは、財産的価値のある権利を示す証券であり、その権利の移転や行使に証券が必要とされているものです。
これらの有価証券は各種の法律にその根拠が定められており、私法上の有価証券としては、手形法に基づく手形、小切手法に基づく小切手、商法に基づく貨物引換証・倉荷証券や国際海上物品運送法に基づく船荷証券等がありますが、これらは、いずれも流通性は認められるものの、投資対象性が認められないため、金商法における有価証券とはされていません。
金商法における有価証券は、金商法2条1項各号に次のように規定されています(松尾直彦『金融商品取引法〔第6版〕』pp.61~62の[図表3-2]から引用)。
・公的証券グループ(法2条1項1号~3号)
国債証券、地方債証券および特別法人債権
・社債券グループ(4号・5号)
資産流動化法に規定する特定社債券および社債券
・出資証券グループ(6号~8号)
特別法人出資証券、優先出資法に規定する優先出資証券、資産流動化法に規定する優先出 資証券・新優先出資引受権証券
・株券グループ(9号)
株券および新株予約権証券
・信託グループ(10号~14号)
投資信託・外国投資信託の受益証券、投資証券・新投資口予約権証券・投資法人債権、外国投資証券、貸付信託受益証券、特定目的信託受益証券および受益証券発行信託受益証券
・コマーシャル・ペーパー(CP) (15号)
・抵当証券(16号)
・外国証券・証書グループ(17号・18号)
・カバードワラント(19号)
・預託証券・証書(DR) (20号)
・政令指定証券・証書(21号)
海外譲渡性預金(CD)および学校債権(令1条)
登録金融機関
銀行、共同組織金融機関、保険会社(外国保険会社等を含む)、証券金融会社、商工組合中央金庫等の金融機関は、有価証券関連業または投資運用業等を行うことを禁止されています。
しかし、内閣総理大臣の登録を受けることで、これらの金融機関は、登録禁輸機関として本来これらの金融機関が原則として禁止されている一部の有価証券関連業務を行うことができるようになります。
これらの金融機関は、明示的に投資助言業務のような、投資運用業および有価証券関連業以外の金融商品取引業を行うために、金融商品取引業者として登録を受けることを禁止されているわけではありませんが、登録金融機関制度があることで、金融機関が、金融商品取引業者として登録を受けることは基本的に想定されておらず、登録金融機関として登録を受けることが想定されています。
登録金融機関は、登録を受けることで次のような業務を行うことができます。
①投資助言・代理業
②書面取次ぎ行為
③国債等の売買
④デリバティブ取引
⑤有価証券の募集又は私募
投資助言・代理業関連業務
投資助言・代理業
1.投資助言・代理業とは
投資助言・代理業とは、金融商品取引法に基づき、
①投資助言業務および②代理・媒介業務を行う金融商品取引業の一類型です。
この業務は、投資者の投資判断に直接影響を与える行為を含むことから、
投資家保護の観点で特に厳格な規制対象とされています。
2.投資助言・代理業を構成する2つの業務
① 投資助言業務
投資助言業務とは、
投資顧問(助言)契約に基づき、報酬を得て、
有価証券または金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に関する助言を行う業務をいいます。
この場合、最終的な投資判断は投資者自身が行う点が、
投資運用業(投資一任)との大きな違いです。
典型例
- 個別銘柄の売買タイミングや保有判断に関する助言
- 特定の金融商品を前提とした投資戦略の提示
- 継続的なポートフォリオ改善の助言
② 代理・媒介業務
代理・媒介業務とは、
投資運用業者または投資助言・代理業者から委託を受け、
投資一任契約または投資顧問(助言)契約の締結に関する代理または媒介を行う業務です。
自ら助言を行わない場合であっても、
契約締結の関与を行う点に注意が必要です。
3.【重要】実務上の判断ポイント
▶ 実務ポイント①
「助言」に該当するか否かは、形式ではなく内容で判断される
投資助言該当性は、
- 「教育」「情報提供」「一般論」と称しているか
- 有料か無料か
といった形式ではなく、
- 特定性(銘柄・商品・タイミング等)
- 投資判断への直接性
- 個別事情への配慮の有無
といった実質的内容により判断されます。
そのため、
- 投資スクール
- 有料note・会員制コンテンツ
- 個別相談やチャット対応
などでは、意図せず投資助言・代理業に該当するリスクが生じやすい領域といえます。
▶ 実務ポイント②
「継続性」がある場合、投資助言該当性が高まりやすい
単発の一般的情報提供と異なり、
- 定期配信
- 継続的なフォロー
- 長期的な助言関係
が認められる場合、
投資助言業務として評価される可能性が高くなります。
特に、サブスクリプション型サービスや月額課金モデルでは、
業務設計段階での法的整理が不可欠です。
▶ 実務ポイント③
IFA業務との境界線に注意
IFA(金融商品仲介業)は、
取引の勧誘・媒介等に業務が限定されており、
投資判断に関する助言を行うことはできません。
しかし、実務上は、
- 「中立的なアドバイス」のつもりでも
- 顧客の投資判断に踏み込んだ説明を行ってしまう
ことで、投資助言該当性が問題となるケースがあります。
IFAと投資助言・代理業は、
制度上は明確に区別されているものの、
実務上は線引きが非常に重要な領域です。
4.よくある誤解と注意点
❌ 誤解①
「売買を代行しなければ投資助言・代理業ではない」
→ 誤りです。
投資判断に関する助言を行う時点で、投資助言業務に該当し得ます。
❌ 誤解②
「無料であれば投資助言には当たらない」
→ 誤りです。
無償であっても、他の対価性や業務性が認められれば問題となります。
❌ 誤解③
「教育目的なら必ず適法」
→ 誤りです。
教育目的であっても、内容が具体的・個別的であれば、
投資助言該当性が否定されるとは限りません。
5.実務対応の重要性
投資助言・代理業は、
「知らずに違反してしまう」リスクが極めて高い業務分野です。
サービス設計や情報発信の段階で、
- 業務区分の整理
- 提供内容の線引き
- 契約・表現の適法性確認
を行うことが、長期的な事業継続に直結します。
IFA・金融商品仲介業
IFA
1.IFAとは
IFA(Independent Financial Advisor)とは、金融商品取引法上の「金融商品仲介業者」として登録を受け、第一種金融商品取引業者、投資運用業者、または登録金融機関の委託を受けて、金融商品仲介行為を行う事業者をいいます。
IFAは、自ら金融商品取引業を営むものではなく、委託元である金融商品取引業者等のために仲介行為を行う立場にあります。
2.IFAが行うことのできる業務範囲
IFAが行うことのできる業務は、金融商品取引法により、以下のような金融商品仲介行為に限定されています。
主な業務内容
- 有価証券の売買等の勧誘
- 有価証券の募集または売出しの取扱い
- 申込みの受付
- 取引に付随する説明行為
一方で、IFAは契約の当事者とはならず、顧客との契約関係は、あくまで委託元の証券会社等との間で成立します。
そのため、
- 顧客口座の管理
- 約定処理
- 顧客資産の保管
はいずれも、委託元の金融商品取引業者等が行います。
3.IFAになるまでの基本的な流れ
IFAとして業務を行うためには、次のような手順を踏むのが一般的です。
- 業務委託を希望する証券会社・金融機関との面談
- 委託元による適格性審査への合格
- 金融商品仲介業業務委託基本契約の締結
- 内閣総理大臣(実務上は財務局)への金融商品仲介業登録
- 日本証券業協会における外務員登録
このように、IFAは委託元の管理・監督下で業務を行う仕組みとなっており、単独で自由に業務内容を設計できるわけではありません。
4.【重要】実務上の判断ポイント
▶ 実務ポイント①
IFAは「投資判断の助言」を行うことはできない
IFAは、投資判断に関する助言(いわゆる投資助言)を行うことは認められていません。
- 「どの商品を買うべきか」
- 「いつ売るべきか」
- 「このポートフォリオは適切か」
といった投資判断に直接踏み込む行為は、投資助言・代理業に該当する可能性があります。
IFAの業務はあくまで、
- 商品内容の説明
- 仕組みやリスクの説明
- 勧誘・仲介
にとどめる必要があります。
▶ 実務ポイント②
「中立的アドバイス」と投資助言の線引きは曖昧になりやすい
IFAは「独立・中立的な立場」と説明されることが多い一方で、実務では次のような行為が問題となりやすい傾向があります。
- 顧客の属性を踏まえた具体的な商品選択の示唆
- 複数商品の中から一つを強く推奨する行為
- 運用方針や売買判断に踏み込んだ説明
これらは、形式上は説明や助言に見えても、内容次第では投資助言該当性が問題となるため注意が必要です。
▶ 実務ポイント③
情報発信・SNS・セミナーとの組み合わせに注意
IFAが、
- ブログ
- SNS
- セミナー
- 有料コンテンツ
等を通じて情報発信を行う場合、仲介業務とは別に独立した投資助言行為と評価されるリスクがあります。
特に、
- 継続的な情報提供
- 特定銘柄・商品の言及
- 有料性・会員制
がある場合は、金融商品仲介業の枠を超えていないかの検討が不可欠です。
5.よくある誤解と注意点
❌ 誤解①
「IFAは何でもアドバイスできる」
→ 誤りです。
投資判断に関する助言は原則として行えません。
❌ 誤解②
「委託元があるから法的責任は軽い」
→ 誤りです。
IFA自身にも、金融商品取引法上の義務や責任が課されます。
❌ 誤解③
「投資助言・代理業より安全なビジネス」
→ 一概には言えません。
業務内容次第では、無登録投資助言として問題視される可能性があります。
6.実務対応の重要性
IFAは、制度上は投資助言・代理業よりも登録要件が緩やかとされていますが、業務内容の線引きを誤ると、法令違反リスクが顕在化しやすい業態です。
特に、
- 投資教育
- コンサルティング
- 情報発信
と組み合わせる場合には、制度理解と業務設計の両立が不可欠です。
コレクト金融法務コンサルタント事務所では、IFAビジネスや投資助言・代理業に関する制度理解・業務設計について、実務の視点から個別のご相談をお受けしています。
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