【基礎編】投資情報発信者が意識すべき情報共有と投資助言の違いとは?

【基礎編】投資情報発信と金融ルール

 投資について情報発信をしていると、こんな気持ちになったことはないでしょうか。

  • 自分の投資経験を話しているだけなのに、どこまでなら大丈夫なのか分からない
  • 銘柄名を出すと、急に一線を越えてしまう気がする
  • フォロワーから「今、買ったほうがいいですか?」と聞かれて、答えに詰まる

 このような感覚は、決して珍しいものではありません。むしろ、投資情報発信を始めた人の多くが、はっきりと言語化できないまま抱えている“無自覚な不安”です。

 結論から言えば、投資について話すこと自体は、基本的に自由です。自分の考えや経験、感じたことを発信するだけで、すぐに問題になるわけではありません。

 それでも不安が消えないのは、「情報を共有しているつもり」が、受け取る側には“投資のアドバイス”のように見えてしまう場面があるからです。

 本記事では、難しい法律用語はできるだけ使わずに、

  • どこまでが情報共有なのか
  • どこからが投資助言と受け取られやすくなるのか

を、具体例を交えながら整理していきます。金融や法律の知識がなくても、感覚的に理解できることを目指します。

 なお、投資情報発信がどこから金融規制の対象として考えられるのかについては、【基礎編】全体の考え方を整理した記事も用意しています。
 初めてこのテーマに触れる方は、あわせて『【基礎編】投資情報発信はどこから「金融規制の対象」になるのか?― 個人発信者が最初に知っておくべき基本ルール』を先に読んでいただくと、本記事の内容もより理解しやすくなると思います。

  1. 本記事の概要
  2. 投資の話をすること自体は、基本的に自由
  3. それでも多くの人が不安を感じる理由
  4. 情報共有と投資助言の違いを、ざっくり整理すると
    1. 情報共有とは
    2. 投資助言と受け取られやすいもの
  5. 【具体例】これは情報共有?それとも助言っぽい?
    1. 例1:「私はこの銘柄を〇円で買いました」
    2. 例2:「この銘柄は今後も上がると思います」
    3. 例3:「初心者なら、この銘柄が無難です」
    4. 例4:「今は買い場だと思いますか?」と聞かれたら
    5. 例5:「この銘柄は、長期で持てば安心だと思います」
    6. 例6:「私はこのやり方で、うまくいきました」
    7. 例7:「この指標が出たら、買いのサインです」
    8. 例8:「この銘柄、今かなり注目されています」
    9. 例9:「私は今、この銘柄を保有しています」
    10. 例10:「この中から選ぶなら、これが一番だと思います」
    11. 判断を渡していないか?を一度立ち止まって考える
  6. なぜ“受け手目線”がそこまで重要なのか
  7. 初心者の発信者が意識しておきたい3つの視点
  8. まとめ|境界線を知ると、発信はむしろ続けやすくなる
  9. よくある疑問Q&A|この記事を読んだあとに感じやすいこと
    1. Q1.「自分の投資経験を話すだけ」なら、本当に大丈夫ですか?
    2. Q2.銘柄名を出しただけで、問題になることはありますか?
    3. Q3.「買いだと思う」「上がりそう」と言うのも避けたほうがいいですか?
    4. Q4.フォロワーから「今、買ったほうがいいですか?」と聞かれたら?
    5. Q5.「これは大丈夫かな?」と迷ったら、どう考えればいいですか?
    6. Q6.結局のところ、一番大事なポイントは何ですか?
  10. 執筆者プロフィール
  11. 参考資料・関連ページ

本記事の概要

 本記事では、投資について情報発信を始めたばかりの方に向けて、

  • どこまでが「情報共有」で、どこからが「投資のアドバイス」と受け取られやすくなるのか
  • なぜ発信者本人が思っている以上に、言葉の影響力が大きくなりやすいのか
  • 不安を感じたときに、どんな視点で発信内容を見直せばよいのか

を、専門的な法律用語を使わず、具体例を交えながら整理しています。

 「自分の経験を話しているだけなのに、なぜか不安になる」 「フォロワーからの質問に、どう答えればいいか分からない」そんな“言葉にしにくいモヤモヤ”をほどき、安心して投資情報発信を続けるための考え方を身につけることが、本記事の目的です。

投資の話をすること自体は、基本的に自由

 まず前提として知っておいてほしいのは、投資に関する話題を発信すること自体は、原則として問題ではないという点です。

 たとえば、次のような内容は、多くの個人発信者が日常的に行っています。

  • 最近の相場ニュースについての感想
  • 自分が過去に経験した投資の失敗談・成功談
  • 市場全体の雰囲気や、自分なりの考え方

 これらは、「事実」や「個人の経験」「考え方」を共有しているにすぎません。そのため、「投資の話をしたら、すぐにアウトなのでは?」と過度に身構える必要はありません。問題になりやすいのは、話している内容そのものよりも、その伝え方や受け取られ方です。

それでも多くの人が不安を感じる理由

 では、なぜ「基本的に自由」と言われても、不安が消えないのでしょうか。その理由は、投資情報発信には、次のような構造があるからです。

  • 発信者は「雑談」「経験共有」のつもり
  • 受け手は「参考にすれば利益が出るかもしれない」と期待する

 このズレがあると、発信者の意図とは関係なく、「勧められた 判断材料ではなく、判断そのものを示された」と感じる人が出てきます。

 特に、フォロワーが増えたり、発信内容が具体的になったりすると、発信者自身が思っている以上に、言葉の影響力は大きくなりがちです。この「影響力の自覚しづらさ」こそが、不安の正体と言えます。

情報共有と投資助言の違いを、ざっくり整理すると

 ここで一度、細かい話は置いておいて、違いをシンプルに整理してみましょう。

情報共有とは

  • 事実や経験、考え方を提示する
  • 判断材料を“置いておく”イメージ
  • 最終的な判断は、あくまで受け手に委ねられている

投資助言と受け取られやすいもの

  • 相手の投資行動を後押しする形になっている
  • 「どう動くべきか」を示している
  • 受け手が判断を任せてしまいやすい

 重要なのは、発信者の気持ちではなく、内容がどう機能しているかです。

【具体例】これは情報共有?それとも助言っぽい?

 ここからは、よくある具体例を見ていきましょう。

例1:「私はこの銘柄を〇円で買いました」

 これは、過去の事実を共有しているだけなので、基本的には情報共有に近い表現です。ただし、頻繁に発信したり、成功事例ばかりを強調したりすると、受け手が「真似すればいいのでは」と感じる可能性は高まります。

例2:「この銘柄は今後も上がると思います」

 自分の見解を述べているだけですが、断定的に見える場合、受け手によっては期待を煽られたと感じることがあります。「なぜそう思うのか」「あくまで個人の考えであること」を補足するだけでも、印象は変わります。

例3:「初心者なら、この銘柄が無難です」

 この表現は、特定の人(初心者)に対して、行動の方向性を示しています。受け手からすると、「自分向けのおすすめ」と受け取られやすく、投資助言に近づきやすい表現です。

例4:「今は買い場だと思いますか?」と聞かれたら

 フォロワーからの質問は、特に注意が必要です。

  • 「私はこう考えています」と一般論として答える
  • 明確な売買判断は示さない

といった距離感を意識することで、リスクを下げることができます。

例5:「この銘柄は、長期で持てば安心だと思います」

 一見すると、落ち着いた意見表明に見えますが、「安心」という言葉は、人によってはリスクが低い・失敗しにくいという意味に受け取られやすい表現です。

 とくに、投資に慣れていない人ほど、「この銘柄なら大丈夫そうだ」と判断を委ねてしまうことがあります。

 長期投資について触れる場合は、

  • なぜそう考える人が多いのか
  • どんな前提やリスクがあるのか

をセットで伝えることで、情報共有としての距離感を保ちやすくなります。

例6:「私はこのやり方で、うまくいきました」

 成功体験の共有は、多くの人がやりがちな発信です。ただし、この表現が続くと、受け手は「この方法を真似すればいい」と感じやすくなります。

 成功談を語る場合は、

  • うまくいった理由だけでなく
  • うまくいかなかった可能性や前提条件

にも触れることで、「体験談」として受け取られやすくなります。

例7:「この指標が出たら、買いのサインです」

 指標やデータを使った説明は、説得力がある反面、行動の合図として受け取られやすい点に注意が必要です。「サイン」「合図」といった言葉は、「これが出たら買うべき」という意味に直結しがちです。

 データを紹介する場合は、

  • 一般的にどう使われているか
  • 必ずしも結果につながるわけではないこと

を補足するだけでも、印象は大きく変わります。

例8:「この銘柄、今かなり注目されています」

 市場の注目度を伝える表現も、初心者が使いやすいものです。ただし、「注目されている」という言葉は、「これから上がりそう」という期待を自然と連想させます。

 事実として触れる場合は、

  • どのような理由で注目されているのか
  • 一時的な話題である可能性

にも触れると、冷静な情報共有になります。

例9:「私は今、この銘柄を保有しています」

 保有状況の開示自体は、事実の共有に過ぎません。ただし、影響力が出てくると、「あの人が持っているなら、自分も」と感じる人が増えてきます。

 保有を伝える場合は、

  • なぜ選んだのか
  • どんな点に注意して見ているのか

を説明することで、「真似する対象」ではなく「考え方の参考」として伝わりやすくなります。

例10:「この中から選ぶなら、これが一番だと思います」

 複数の選択肢を示したうえでの比較は、一見すると中立に見えます。しかし、「一番」という表現は、最終的な結論を示しているため、受け手は判断を任せてしまいやすくなります。

 比較を行う場合は、

  • それぞれの特徴や違い
  • 向き・不向きが分かれる点

を並べて示すほうが、情報共有としてのバランスを保ちやすくなります。

判断を渡していないか?を一度立ち止まって考える

 ここで紹介した各事例に共通しているのは、

  • 発信者本人は「体験や考えを共有しているつもり」
  • 受け手は「自分はどう動けばいいのか」を受け取ってしまいやすい

という視点のズレです。

 大切なのは、正しい・間違っているではなく、「この発信を見た人は、次にどんな行動を取りそうか?」を一度想像してみることです。結論や行動を渡すのではなく、考え方や材料を共有する。 その意識を持つだけで、情報共有と助言っぽさの境界線は、ぐっと見えやすくなります。

なぜ“受け手目線”がそこまで重要なのか

 投資の世界では、判断の結果として損失が出ることもあります。そのとき、「あの人が勧めたから買った」と感じさせてしまう構造があると、トラブルの火種になりかねません。

 発信者に悪意がなくても、影響力のある立場からの言葉は、判断を委ねさせてしまう力を持っています。だからこそ、

  • 判断材料を提供しているのか
  • 判断そのものを示してしまっていないか

という視点が重要になります。

初心者の発信者が意識しておきたい3つの視点

 最後に、投資情報発信をするうえで、最低限意識しておきたいポイントをまとめます。

  1. 自分の考えと、相手の行動を切り分ける
    自分の意見を述べることと、相手に行動を促すことは別物です。
  2. 断定的・誘導的に見えやすい言葉を避ける
    「絶対」「間違いない」「今しかない」といった表現は、受け手の判断を狭めます。
  3. 質問への回答は“一歩引いた位置”で
    個別の売買判断を求められた場合ほど、距離感が重要です。

 完璧に線引きする必要はありませんが、これらを意識するだけでも、安心感は大きく変わります。

まとめ|境界線を知ると、発信はむしろ続けやすくなる

 投資情報発信は、決して「危ないもの」ではありません。ただし、情報共有と投資助言の境界線は、思っている以上に感覚的で、分かりにくいものです。

 だからこそ、

  • 不安を感じた時点で、感覚はかなり健全
  • 境界線を知ることで、発信はむしろ楽になる

と言えます。次回以降の記事では、より具体的に「注意すべき表現」や「よくある誤解」についても掘り下げていく予定です。安心して発信を続けるための参考にしていただければ幸いです。

よくある疑問Q&A|この記事を読んだあとに感じやすいこと

Q1.「自分の投資経験を話すだけ」なら、本当に大丈夫ですか?

 基本的には問題ありません。この記事でお伝えしてきたとおり、自分が実際に経験したことや、そのときどう考えたかを話すこと自体は、情報共有の範囲に収まることがほとんどです。

 ただし、

  • 成功例だけを強調しすぎていないか
  • 「この通りにやればうまくいく」と受け取られそうな言い方になっていないか

といった点には、少しだけ気を配ると安心です。

Q2.銘柄名を出しただけで、問題になることはありますか?

 銘柄名を出しただけで、すぐに問題になるわけではありません。

 ただし、

  • 今すぐ買うべきかどうか
  • どんな人に向いているか

といった行動につながる情報までセットで示してしまうと、受け手によっては「勧められた」と感じやすくなります。

 銘柄名を出す場合は、

  • なぜ注目したのか
  • 自分はどう考えたのか

といった背景を中心に伝えるほうが、情報共有として伝わりやすくなります。

Q3.「買いだと思う」「上がりそう」と言うのも避けたほうがいいですか?

 必ずしも、すべて避けなければならないわけではありません。ただ、こうした表現は、受け手によっては期待を強く持たせてしまうことがあります。

  • あくまで自分の考えであること
  • 将来の結果を保証するものではないこと

を、言葉の流れの中で自然に補足できると、印象はかなり変わります。

Q4.フォロワーから「今、買ったほうがいいですか?」と聞かれたら?

 多くの発信者が、一番悩む場面です。

 この場合、

  • 自分の考え方や一般的な見方を説明する
  • 最終的な判断は本人次第であることをはっきりさせる

といった形で答えるのが、無理のない対応です。個別の売買判断をそのまま示すよりも、考え方のヒントを渡すイメージを持つと、答えやすくなります。

Q5.「これは大丈夫かな?」と迷ったら、どう考えればいいですか?

 迷った時点で、その感覚はとても健全です。

 そんなときは、

  • この発信を見て、誰かがそのまま行動しそうか
  • 判断材料ではなく、判断そのものになっていないか

を一度、立ち止まって考えてみてください。

 少しでも不安が残る場合は、

  • 表現をやわらかくする
  • 一般論として言い換える

だけでも、リスクは下げられます。

Q6.結局のところ、一番大事なポイントは何ですか?

 一番大事なのは、「何を言うか」よりも「どう受け取られるか」です。発信者に悪意がなくても、受け手が「勧められた」「任せた」と感じてしまうと、思わぬトラブルにつながることがあります。

 だからこそ、

  • 判断は相手に残す
  • 行動を決めるところまで踏み込まない

この2点を意識するだけで、投資情報発信はぐっと続けやすくなります。

執筆者プロフィール

 金融法務コンサルタント。元行政書士として、IFA登録や投資助言・代理業登録の支援実績多数。
 現在は、ブログ・noteを通じて、金融ビジネスに関わる実務家向けに、制度解釈や実務上の注意点を中心とした情報発信を行っています。現在公開中の有料note記事は、金融法務note集で紹介していますので、ご興味のある方は、ご覧ください。

 本サイトでは、可能な限り一次情報・実務視点に基づいた解説を行っていますが、個別事案については一般論だけでは判断が難しいケースも少なくありません。そのような場合に限り、筆者が提供している金融法務コンサルタントサービスにおいて、制度上の位置付け整理やリスクの考え方についての整理支援を行っています。

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ただし、個別の事業形態や状況によっては、情報だけでは判断が難しいケースもあります。そのような場合の補足的な選択肢として、コレクト金融法務コンサルタント事務所では、個別整理を目的としたコンサルティングを行っています。

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参考資料・関連ページ

※ 本記事は、以下の一次資料・業界ガイドラインを踏まえて作成しています。

参考資料
金融庁:投資運用業等 登録手続ガイドブック
関東財務局:登録に係るQ&A(投資助言・代理業)
一般社団法人日本投資顧問業協会ホームページ
大和総研:SNS上にあふれる投資情報にどう対処すべきか

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