SNSで投資について発信していると、コメント欄にこんな質問が届くことがあります。
- 「この銘柄どう思いますか?」
- 「今買ってもいいですか?」
- 「まだ持ってますか?」
発信を始めたばかりの頃ほど、丁寧に答えたくなりますよね。むしろ、「せっかく聞いてくれたのに無視は失礼かな」、「経験者として役に立ちたい」、「普通の会話の範囲だよね?」そう思う方がほとんどだと思います。
ただここで、多くの人がうっすら感じている不安があります。「どこまで答えていいんだろう?」、「これはアドバイスになる?」、「でもただの感想だよね…?」この「なんとなくの不安」、実はとても自然なものです。
投資情報発信の世界では、コメント欄のやり取りがきっかけで“助言っぽく見えてしまう”ケースが少なくありません。しかもそれは、有料サービスでも勧誘でもなく、善意の返信から始まることが多いのです。
この記事では、
- どんな返信が普通の会話で
- どこからがアドバイスっぽく見えるのか
を、法律用語を使わずに初心者向けに整理します。「何を書いてはいけない」ではなくどう書けば誤解されにくいかという視点で解説していきます。
なお、投資情報発信がどこから金融規制の対象として考えられるのかについては、【基礎編】全体の考え方を整理した記事も用意しています。
初めてこのテーマに触れる方は、あわせて『【基礎編】投資情報発信はどこから「金融規制の対象」になるのか?― 個人発信者が最初に知っておくべき基本ルール』を先に読んでいただくと、本記事の内容もより理解しやすくなると思います。
本記事の概要
SNSで投資について発信していると、コメント欄で質問を受けることがあります。
その際、
- 丁寧に答えたい
- 経験を共有したい
- 役に立ちたい
という気持ちから返信した内容が、思わぬ形で“アドバイスのように見えてしまう”ことがあります。
特にコメント返信は、投稿よりも距離が近く見えるため、
- 自分では感想のつもり
- 経験談のつもり
- 雑談のつもり
でも、読み手や第三者からは判断を後押しする言葉として受け取られる場合があります。
この記事では、投資情報発信を始めたばかりの方向けに、
- コメント返信で誤解されやすい表現
- 「情報共有」と「アドバイスっぽい返信」の違い
- 初心者がやりがちな返信パターン
- 誤解を防ぐための考え方
を、専門用語を使わずにやさしく整理しています。
「何を書いてはいけないか」ではなく、どう書けば誤解されにくいかという視点でまとめています。これから投資情報発信を続けていく方が、安心してコメント返信できるようになるための基礎的な考え方をまとめた記事です。
なぜコメント返信は注意が必要なのか?― 投稿よりも距離が近く見えるから
投稿は不特定多数向けです。一方でコメント返信は、特定の人に答えているように見えます。ここが大きな違いです。
たとえば投稿で「最近は相場が不安定ですね」と書くのと、コメント欄で「今は買わない方がいいと思います」と書くのでは、受け取られ方が大きく変わります。
後者は、
- 個別相談
- 個別回答
- 個別判断
のように見えやすくなります。
しかも、
- 無料
- 善意
- 雑談
であっても関係ありません。「個別に答えているように見える」これだけで、アドバイス感が強くなるのです。
初心者がやりがちな返信パターン3つ
パターン①「自分ならこうする」型
例:
- 私なら今は待ちます
- 私なら買います
- 私はまだ持ってます
書いた本人は「自分の話」をしているつもりでも、読む側は、「じゃあ私もそうしよう」と受け取ります。結果として判断のヒントではなく判断そのものとして機能してしまうことがあります。
パターン②「安心させる」型
例:
- 長期なら大丈夫
- 下がっても問題ない
- いい銘柄だと思います
こうした言葉は励ましのつもりでも、第三者から見ると保証・評価・推奨に見えることがあります。
パターン③質問にそのまま答える型
例:
- 今買っていい?
- 売るべき?
- 何株?
こうした質問に、
- はい
- いいと思います
- 私なら買います
と答えると、一気にアドバイス感が強くなります。
「情報共有」と「アドバイス」の違いとは?その境界線
シンプルに整理すると「情報共有」と「アドバイス」の違いは、以下のようになります。
■情報共有
- 事実
- 仕組み
- ニュース
- 過去経験
- 一般論
→ 判断は相手
■アドバイスっぽく見える
- 行動提案
- タイミング
- 銘柄評価
- 個別回答
→ 判断を手伝っている
「情報共有」と「アドバイス」の判断基準
「情報共有」と「アドバイス」の判断基準をあえて単純化するなら、コメントの返信を読んだ人が「じゃあどうすればいいか」を決められてしまう返信になっているか否かということになります。
注意したい表現
以下の言葉は意図せずアドバイス感が出やすいです。
- 買い時
- 売り時
- 安心
- 大丈夫
- おすすめ
- 狙い目
- まだ上がる
特に個別質問への返信で使うと注意度が上がります。
コメント返信の考え方
コメント返信の考え方は、以下の3点に集約できます。
① 判断は相手に戻す
- 最終判断はご自身で
- 投資は人それぞれ
- 参考情報まで
② 個別最適化しない
- 資金量
- 生活状況
- 目的
を前提に話さない。
③ 行動を書かない
- 買う
- 売る
- 保有
を直接言わない。
よくある事例10個― これは情報共有?それともアドバイス?
以下では、アドバイスと受け取られやすいよくある事例をご紹介します。
①「今買っても大丈夫ですか?」→「長期なら大丈夫だと思います」
→ アドバイスっぽく見える
②「この銘柄どう思います?」→「いい銘柄ですね」
→ 評価型で注意
③「まだ持ってますか?」→「私は持ってます」
→ 文脈次第で注意
④「いつ売りますか?」→「◯円で売る予定です」
→ タイミング提示
⑤「初心者です」→「まずはこの銘柄がおすすめ」
→ 推奨表現
⑥「下がってます」→「気にしなくて大丈夫」
→ 安心保証型
⑦「今から入れます?」→「まだ間に合うと思います」
→ 行動誘導
⑧「何株買いました?」→「100株買いました」
→ 行動参考化
⑨「ナンピンすべき?」→「私はしてます」
→ 間接誘導
⑩「売るか迷ってます」→「長期なら持ってていいと思います」
→ 判断補助型
まとめ― コメント返信は「親切さ」と「誤解防止」のバランスが大切
ここまで見てきたように、SNSのコメント欄でのやり取りは、
- ただの雑談
- 感想の共有
- 経験談
のつもりでも、読み手や第三者から見ると“アドバイスのように見える”瞬間があります。
特にコメント返信は、投稿(不特定多数向け)よりも特定の人に答えているように見えるため、距離が一気に近くなります。
その結果、「親切に答えただけ」、「経験を話しただけ」、「善意だった」という返信でも、
判断を後押しする言葉として受け取られてしまうことがあります。
図解で振り返る:どこから誤解されやすいか
本記事のここまでの内容を簡易的に図解化すると以下のようになります。



大切なのは「言い換え」ではなく「意識」
ここで重要なのは、「何を書いたらアウトか」を細かく覚えることではありません。それよりも、読んだ人が「自分はどう動けばいいか」決められてしまう返信になっていないかという視点を持つことです。
つまり、
- 判断は相手に戻す
- 一般論にとどめる
- 行動を示さない
この3点を意識するだけで、誤解される可能性は大きく下がります。
安全な投資情報発信のカギは「答えすぎない」こと
投資情報発信では、丁寧に答える人ほど信頼されます。しかし同時に、丁寧に答えすぎる人ほど誤解されやすいという側面もあります。
だからこそ、
- すべてに答える
- 判断まで答える
- 行動まで示す
必要はありません。
むしろ、「ここから先はご自身の判断になります」と自然に線を引ける発信者の方が、長く安心して発信を続けられます。
安全に発信を続けるための視点
投資情報発信は、継続してこそ意味があります。そして継続には、余計な誤解を避けることがとても重要です。
コメント欄での一言が問題になるケースは、悪意があったときではなく善意だったときに起きます。
だからこそ、「誤解されない書き方」、「誤解されにくい距離感」を最初から意識しておくことが、結果的に安心して発信を続ける土台になります。
最後に
コメント欄は、雑談の場でもあり、公開された場でもあります。親切に答えることと、判断を代わりにすることは別です。少し意識するだけで、発信はぐっと安全になります。
「役に立つ返信」をしながら「アドバイスと誤解されない」バランスを取ることこれが、安心して続けられる投資情報発信の第一歩です。
よくある疑問Q&A|投資情報発信を始めたばかりの方へ
Q1. コメントに質問が来たら、無視した方がいいのでしょうか?
A.いいえ、無視する必要はありません。
ただし、答え方を少し工夫することが大切です。
たとえば、
- 事実やニュースを共有する
- 一般的な考え方を伝える
- 最終判断は相手に戻す
この3点を意識すれば、過度に心配する必要はありません。「全部答えない」ではなく、判断まで答えないことがポイントです。
Q2. 自分の経験談を話すだけなら問題ありませんか?
A.経験談そのものは、多くの場合問題になりにくいです。
ただし、
- 今買うべき
- 今売るべき
- まだ上がる
といった行動につながる形になると、受け取り方が変わってきます。経験談は、過去の話として一般的な感想として共有する意識を持つと安心です。
Q3. 「私はこうします」と書くのも控えた方がいいですか?
A.絶対に書いてはいけない、というわけではありません。
ただし、「そのまま真似できる形」になると、参考というより判断のヒントそのものとして受け取られやすくなります。
特にコメント欄では、距離が近く見えるため注意が必要です。
Q4. 無料で発信しているだけなら大丈夫ですよね?
A.無料かどうかよりも、「個別に答えているように見えるか」がポイントになります。
善意のやり取りでも、特定の質問に対して具体的な行動を示すと、アドバイスのように見えることがあります。
「無料だから大丈夫」というより、答え方の距離感を意識することが大切です。「無料での投資情報発信」と「金融規制」の関係性についてより詳しく知りたい方は、『【基礎編】『無料でやっていればOK』は本当か?投資情報発信と金融規制の基本的な考え方』をご覧ください。
Q5. 「大丈夫だと思います」と励ますのも控えるべきですか?
A.励ましの言葉自体がすぐに問題になるわけではありません。
ただし、
- 大丈夫
- 安心
- 問題ない
といった言葉は、相手の判断を後押しする形に見えることがあります。
特に、
- 買い
- 売り
- 保有
とセットになると注意度が上がります。励ます場合は、「投資は人それぞれ最終判断はご自身で」といった形で判断を相手に戻すと安心です。
Q6. 全部一般論にしてしまうと、冷たい印象になりませんか?
A.その心配は多くの方が持っています。
ただ実際は、
- 丁寧な言い方
- 柔らかい表現
- 感謝の一言
を添えるだけで、印象は大きく変わります。大切なのは、「答えないことではなく答えすぎないこと」です。
Q7. フォロワーが少ないうちは気にしなくていいですか?
A.フォロワー数はあまり関係ありません。
むしろ、
- 小さなアカウント
- 始めたばかり
- 少人数コミュニティ
の方が、距離が近く見える分、個別相談のように見えやすいことがあります。早い段階から返信のスタイルを整えておくと、後から楽になります。
Q8. どこまでなら安心して返信できますか?
A.目安としては、読んだ人が「どう動けばいいか」決められない返信なら安心寄りです。
逆に、「これを読めば行動が決まる」という内容になると、アドバイス感が強くなります。
迷ったときは、
- 一般論にする
- 情報共有で止める
- 判断は相手に戻す
この3点に戻ると整理しやすくなります。
Q9. コメント返信が怖くなってきました…
A.そう感じるのは自然です。ただ、必要以上に怖がる必要はありません。
多くの場合、
- 少し言い回しを変える
- 距離感を意識する
だけで、誤解はかなり減らせます。大切なのは、「完璧に避けることではなく誤解されにくくすること」です。
Q10. 結局、何を一番意識すればいいですか?
A.シンプルに言うと、「判断を代わりにしない」この一点です。
- 情報を共有する
- 考え方を伝える
- でも決めるのは相手
この形を保てれば、安心して発信を続けられます。
投資情報発信を始めたばかりの時期は、誰もが手探りです。コメントに丁寧に答えたい、役に立ちたい、その気持ちはとても大切です。そのうえで、「誤解されない形で続ける」という視点を持つことで、発信はずっと楽になります。
このQ&Aが、安心して発信を続けるための小さな指針になれば幸いです。
執筆者プロフィール
金融法務コンサルタント。元行政書士として、IFA登録や投資助言・代理業登録の支援実績多数。
現在は、ブログ・noteを通じて、金融ビジネスに関わる実務家向けに、制度解釈や実務上の注意点を中心とした情報発信を行っています。現在公開中の有料note記事は、金融法務note集で紹介していますので、ご興味のある方は、ご覧ください。
本サイトでは、可能な限り一次情報・実務視点に基づいた解説を行っていますが、個別事案については一般論だけでは判断が難しいケースも少なくありません。そのような場合に限り、筆者が提供している金融法務コンサルタントサービスにおいて、制度上の位置付け整理やリスクの考え方についての整理支援を行っています。
本サイトでは、投資助言・代理業、IFAビジネス、投資情報発信に関する法務・コンプライアンス情報を解説しています。
ただし、個別の事業形態や状況によっては、情報だけでは判断が難しいケースもあります。そのような場合の補足的な選択肢として、コレクト金融法務コンサルタント事務所では、個別整理を目的としたコンサルティングを行っています。
参考資料・関連ページ
※ 本記事は、以下の一次資料・業界ガイドラインを踏まえて作成しています。
参考資料
・金融庁:投資運用業等 登録手続ガイドブック
・関東財務局:登録に係るQ&A(投資助言・代理業)
・一般社団法人日本投資顧問業協会ホームページ
・大和総研:SNS上にあふれる投資情報にどう対処すべきか
関連ページ
・【基礎編】投資情報発信はどこから「金融規制の対象」になるのか?― 個人発信者が最初に知っておくべき基本ルール
・【基礎編】SNSで投資経験に基づく話をしても大丈夫?個人発信者が誤解しやすい3つのポイント
・【基礎編】『無料でやっていればOK』は本当か?投資情報発信と金融規制の基本的な考え方

コメント