暗号資産に関する助言を行っている方へ──制度改正の波に備えていますか?
2025年6月、金融庁は暗号資産を金融商品取引法の枠組みに移行する方針を公表しました。これにより、これまで登録不要とされていた現物暗号資産への助言も、投資助言・代理業の対象となる可能性があります。
本記事では、制度改正の最新動向と、助言業務に与える影響、そして今から備えておくべき実務対応のポイントをわかりやすく解説します。
制度改正に備え、今すぐ確認しておきたい内容をまとめました。
暗号資産に関する助言を行う個人・事業者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
📝記事概要
暗号資産に関する助言は、現物取引であれば原則として投資助言・代理業への登録は不要ですが、デリバティブ取引やシグナル配信などを含む場合には登録が必要です。2025年6月には、金融庁が金融審議会総会にて「暗号資産を金融商品取引法(金商法)の枠組みに移行する方針」を公表し、制度改正に向けた議論が本格化しています。2026年の通常国会での法改正を目指す動きもあり、今後の制度設計次第では、現物暗号資産への助言も登録対象となる可能性があります。
また、税制面でも見直しが検討されており、現行の雑所得(最大55%)から申告分離課税(約20%)への移行が議論されています。これにより、投資家の関心が高まり、暗号資産市場の活性化につながる可能性もある一方で、助言業者にとってはコンプライアンス負担の増加が予想されます。制度改正の動向を注視し、早期に対応方針を検討することが重要です。
◇本記事でわかること
- 暗号資産への助言が投資助言・代理業に該当する事例と該当しない事例
- 最新の法改正の動向とその影響
- 業界におけるコンプライアンス負担の増加と市場活性化の可能性
- 制度改正に向けた実務者の対応ポイント
◇暗号資産に関する助言が投資助言・代理業に該当しない事例とは?
ビットコインなどの現物暗号資産に対する助言は、現行制度では金融商品に該当しないため、投資助言・代理業への登録は不要とされています。また、暗号資産の信用取引に関する助言も、一定の条件下では登録不要とされるケースがあります。
ただし、信用取引に関する助言が、実質的にデリバティブ取引に該当する場合には、登録が必要となる可能性があるため、助言対象の取引形態や商品性を慎重に確認する必要があります。
◇暗号資産に関する助言が投資助言・代理業に該当する事例とは?
2020年5月の改正金融商品取引法施行以降、暗号資産デリバティブ取引に関する助言は、金融商品として位置づけられ、投資助言・代理業への登録が必要となりました。現物取引は資金決済法の対象である一方、デリバティブ取引は金商法の対象となるため、法的な位置づけが異なります。
実務上は、助言対象が現物かデリバティブかを明確に区別することが難しいケースも多く、特にシグナル配信やコピートレードサービスの提供などは、助言の内容や形式によって登録が必要となる可能性があります。助言行為の性質を踏まえ、慎重な判断が求められます。
◇暗号資産に関する法改正の動向は?
2025年6月、金融庁は金融審議会総会にて「暗号資産を金融商品取引法の枠組みに移行する方針」を正式に示しました。背景には、暗号資産の口座数が1,200万件を超え、預かり資産が5兆円規模に達するなど、市場の急拡大があります。
現在、金融庁では有識者を交えたワーキンググループが制度設計を進めており、2025年秋以降の審議を経て、2026年の通常国会での法改正を目指しています。制度改正の目的は、投資家保護の強化、情報開示の充実、無登録業者への対応などであり、暗号資産の分類(資金調達型/非資金調達型)に応じた規制の導入も検討されています。
税制面では、現行の雑所得(最大55%)から、株式投資と同様の申告分離課税(約20.315%)への移行が議論されており、損益通算や損失繰越控除の導入も含めて、投資家にとって有利な制度設計が期待されています。
◇法改正は投資助言・代理業者にどのような影響を与える?
制度改正が予定通り進んだ場合、投資助言・代理業者には以下のような影響が想定されます。
- 現在は登録不要とされている現物暗号資産への助言も、金商法の対象となり、登録が必要になる可能性がある
- 金融庁の規制を遵守するためのコンプライアンス体制の強化が求められ、人件費や管理コストの増加が予想される
- 一方で、税制改正により投資家の参入障壁が下がることで、暗号資産市場が活性化し、助言ニーズが拡大する可能性もある
◇制度改正に向けた実務者の対応ポイント
制度改正に備え、暗号資産に関する助言を行う個人・事業者は、以下の点を意識して対応を進めることが重要です。
- 助言対象の暗号資産が「資金調達型」か「非資金調達型」かを確認し、規制対象となる可能性を把握する
- 現物暗号資産への助言が金商法の対象となる可能性を踏まえ、登録準備や社内体制の整備を検討する
- 税制改正の動向を踏まえ、顧客への説明資料や損益計算の仕組みを見直す
- 金融庁や業界団体が発信する最新情報を定期的に確認し、制度設計の進捗に応じて柔軟に対応する
◇まとめ:制度改正に備えた暗号資産助言のポイント
暗号資産に関する助言業務は、制度改正の動向によって大きく変化する可能性があります。特に、2025年6月に金融庁が示した「暗号資産の金商法移行方針」は、現物暗号資産への助言も規制対象となる可能性を含んでおり、助言者・事業者にとって重要な転換点となるでしょう。
本記事で解説したポイントを踏まえ、以下の点を意識して対応を進めることが推奨されます。
- 現物暗号資産への助言も、将来的に投資助言・代理業の登録対象となる可能性がある
- デリバティブ取引やシグナル配信、コピートレードなどは、現行制度でも登録が必要な場合がある
- 制度改正は、コンプライアンス負担の増加と同時に、投資家の関心拡大によるビジネスチャンスも生む
- 税制見直しにより、暗号資産の申告分離課税化や損益通算の導入が検討されている
- 金融庁の最新情報を継続的に確認し、助言対象の分類や業務内容の見直しを進めることが重要
制度改正は「待つもの」ではなく「備えるもの」です。今後の法制度の変化を正しく理解し、助言業務の透明性と信頼性を高めることで、暗号資産分野での継続的な成長と差別化につながります。
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