IFA事業に関するご相談事例

 IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)事業は、自由度の高い営業スタイルや顧客本位の提案が可能である一方、法令遵守・業務設計・広告表示・報酬体系など、実務上の注意点も多岐にわたります。
 このページでは、実際に寄せられたご相談事例をもとに、IFA事業に関するよくある疑問や課題についてQ&A形式でわかりやすく解説しています。

  • ✅ 登録や業務範囲に関する誤解
  • ✅ 金融機関との連携や報酬の受け取り方
  • ✅ 広告・表示の注意点
  • ✅ 顧客対応や契約書の整備

など、実務に直結するポイントを網羅しています。
 IFA事業を始める方、すでに運営中の方、制度や規制の理解を深めたい方にとって、リスク回避と信頼構築のヒントとなる内容を厳選しています。

Q1.IFAとして開業するには、法人である必要がありますか?

A1. 多くの場合、法人格が求められますが、証券会社によって異なります。

IFAとして証券会社等と金融商品仲介業の業務委託契約を締結するには、以下の条件を設けているケースが一般的です:

  • ① 法人であること
    → 個人事業主では契約できない証券会社が多く、法人格(株式会社・合同会社など)が求められる傾向があります。
  • ② 2名以上の外務員資格保有者が在籍していること
    → 一種または二種外務員試験に合格し、IFA業務に従事できる人材が複数名いることが条件となる場合があります。
    ただし、これらの条件は証券会社ごとに異なるため、事前に募集要項や契約条件を確認することが重要です。
    法人設立のタイミングや人員体制の整備も、開業準備の一環として計画的に進めることが推奨されます。

Q2.IFAとして契約する証券会社等は、どのような基準で選べばよいですか?

A2. IFA事業の方向性や顧客ニーズに合った証券会社を選ぶことが重要です。

 金融商品仲介業の業務委託契約を締結する際には、以下のようなポイントを意識して選定することが推奨されます:

🔍選定時のチェックポイント

  • 自社の理念や営業方針との親和性
    → 証券会社の事業姿勢が、自社の顧客対応方針や提案スタイルと合っているかを確認します。
  • 取扱金融商品の種類と幅
    → 自社の顧客層が求める商品(投資信託、債券、保険など)が揃っているかが重要です。
  • IFAへの支援体制の充実度
    → 提供されるシステムの使いやすさ、営業支援の有無、問い合わせ対応のスピードなどをチェックします。
  • IFA側の要望が反映される柔軟性
    → 特定の商品を扱いたいなどの要望に対して、証券会社が柔軟に対応してくれるかどうかも重要です。
  • 契約・運用にかかる費用の明確性
    → 初期費用、月額費用、システム利用料などの有無と金額を事前に確認し、事業計画に反映させましょう。
  • IFAとの連携姿勢の積極性
    → IFAを単なる外部委託先ではなく、重要な販売チャネルとして位置づけているかを見極めます。
  • 金融機関出身者以外への開業支援の有無
    → 業界経験がない方にも門戸を開いているかどうかは、参入障壁の低さに直結します。

 証券会社によって、IFAへの支援体制や契約条件、連携姿勢には大きな違いがあります。
 自社の事業モデルや顧客層に合ったパートナーを選ぶことで、IFAとしての活動の幅と信頼性が大きく向上します。

Q3.社内に金融機関勤務経験者がいないのですが、IFA事業者になることは可能ですか?

A3. 金融機関勤務経験がなくても、IFA事業を始めることは可能です。

 近年では、証券会社等も多様な販売チャネルの確保を重視しており、金融機関出身者に限らず幅広い人材・法人に門戸を開いている傾向があります。

  • 審査において、金融機関勤務経験者が在籍しているとプラス評価となる場合はありますが、
    → それが必須条件ではない証券会社も多く存在します。
  • 実際に、異業種からIFA事業に参入し、成功している法人も多数あります。
    → 事業計画の明確さ、顧客対応力、コンプライアンス意識などが重視される傾向です。
  • ただし、金融商品仲介業の業務委託契約を締結するには、外務員資格保有者の確保や業務体制の整備が必要です。
    → 経験者がいない場合は、外部人材の採用や教育体制の構築も視野に入れるとよいでしょう。

 金融機関出身でなくても、誠実な顧客対応と健全な業務運営ができる体制があれば、IFA事業への参入は十分に可能です。
 挑戦を前向きに捉え、必要な準備を着実に進めることが成功への第一歩です。

Q4.IFAと金融商品仲介業者の関係性について教えてください

A4. IFAは、制度上「金融商品仲介業者」として登録された事業者です。

 日本でIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)として活動するには、以下のステップが必要です:

  1. 証券会社等との業務委託契約の締結
    → IFAは、証券会社等から委託を受けて、その金融商品を仲介する立場になります。
  2. 金融商品仲介業者としての登録(内閣総理大臣の登録)
    → 証券会社との契約後、金融商品仲介業者として正式に登録されることで、IFAとしての活動が可能になります。

 つまり、IFAとして活動するためには、「金融商品仲介業者として登録されていること」が制度上の前提条件です。
 IFAは、登録された仲介業者として、証券会社等の金融商品を顧客に提案・仲介する役割を担います。

Q5.IFA業界への参入傾向について教えてください

A5. IFA業界は、異業種からの参入が増えており、今後も拡大が期待される分野です。

 近年のIFA業界では、以下のような業種からの参入が目立っています:

  • 保険代理店業や不動産業など、金融商品との親和性が高い業界
    → 既存の顧客基盤や資産形成ニーズに対応する形でIFA業務を取り入れるケースが増加しています。
  • 相続・資産管理などを扱う士業(税理士・司法書士・行政書士など)
    → 顧客のライフプランに関わる業務との連携を図る目的でIFA事業を展開する動きが広がっています。
    こうした流れに加え、証券会社側でもIFAとの連携強化に積極的な姿勢が見られ、IFA法人の数も増加傾向にあります。
    参考までに、2021年6月時点では約600社のIFA法人が日本国内に存在していました。

📈今後の展望と参入余地
 IFAの存在は欧米では広く認知され、顧客本位の資産形成支援の担い手として定着しています。
 一方、日本ではまだIFAの知名度は高くなく、市場は未成熟であり、新規参入の余地は十分に残されています。

  • 顧客ニーズの多様化
  • 証券会社の営業体制の変化
  • 中立的なアドバイスへの期待の高まり
    などを背景に、IFA業界は今後も拡大と専門化が進む可能性が高い分野です。

Q6.IFA法人の収益源にはどのようなものがありますか?

A6. IFA法人の収益源は、主に以下の3つに分類されます。それぞれに特徴と注意点があります。

① 顧客の取引手数料
 証券会社の取引システムを通じて、顧客が株式や投資信託などを売買した際に発生する手数料の一部がIFA法人の収益となります。

  • 一般的には、顧客から得た手数料収入のうち2〜4割程度を証券会社に支払う必要があるケースが多いです。
  • 手数料率や分配比率は、証券会社との契約内容によって異なります。

② 顧客の預かり資産(投資信託等)からの管理報酬
 顧客の資産残高に応じて、継続的な報酬が発生するモデルです。

  • 目安としては、年間0.5〜2.0%程度の管理報酬が設定されることが多いです。
  • 近年では、証券会社側もこの残高報酬型モデルを重視する傾向が強まっており、IFAとの提携方針にも影響を与えています。

③ 紹介料(他業種との連携による収益)
 IFAが顧客のニーズに応じて、他業種の専門家やサービスを紹介し、成約時に紹介料を得るモデルです。

  • 例:不動産仲介業者、M&A仲介会社、相続・税務に詳しい士業など
  • 紹介料の金額は案件によって異なりますが、収益規模としては小さい傾向にあります。
  • ただし、顧客満足度の向上や長期的な信頼構築に寄与する重要な手段として活用されています。

💡補足:収益モデルの選択とバランス
 IFA法人の収益構造は、証券会社との契約内容や顧客層、提供するサービスの幅によって大きく異なります。
 近年は「取引手数料中心」から「資産残高報酬中心」へと移行する動きもあり、安定的な収益を確保するためには、複数の収益源をバランスよく設計することが重要です。

📘 補足情報

 より詳しい情報は、当事務所のブログ記事「【解説】IFAビジネスの始め方と収益モデルの成功パターン」でも解説しておりますので、ご興味のある方は、ご覧ください。

Q7.社内に証券外務員資格の保持者がいない場合、IFAとして開業できないのでしょうか?

A7. 外務員資格保持者がいない場合、IFAとしての業務は行えませんが、資格取得により開業は可能です。

 日本でIFAとして金融商品の販売・勧誘を行うには、証券外務員資格(一種または二種)を保有し、外務員登録を受けた者が業務を担当する必要があります。

  • 社内に外務員資格保持者が一人もいない場合、IFAとしての営業活動(仲介業務)は行えません。
    → そのため、開業前に外務員資格の取得と登録手続きを進める必要があります。

📝資格取得と登録の流れ

  1. 証券外務員試験に合格する
    → 一種または二種のいずれかを選択(業務内容に応じて)
  2. 外務員登録申請を行う
    → 所属するIFA法人が、業務委託契約を締結した証券会社を通じて、日本証券業協会に申請します。
  3. 日本証券業協会による外務員登録の完了
    → 登録が完了すると、正式に金融商品の仲介業務が可能になります。
    ※新規開業のIFA法人の場合、証券会社が外務員登録手続きを代行するケースが一般的です。

💡補足:開業準備としての資格取得
 IFA事業を始めるにあたっては、外務員資格の取得と登録が最初の重要なステップです。
資格保持者の確保は、証券会社との契約条件にも関わるため、開業前に計画的に準備することが推奨されます。

Q8.IFAとして開業したいと考えています。まず何から始めるべきでしょうか?

A8. 開業準備は、情報収集と証券会社との接点づくりから始めるのが効果的です。

 IFAとしての開業を検討されている場合、まずは以下のステップから取りかかることをおすすめします:

🪜ステップ1:制度と条件の理解

  • 本ページの Q1(法人格や外務員資格の要件) を確認し、IFAとして活動するための基本条件を整理しましょう。

🪜ステップ2:証券会社の情報収集

  • IFAを募集している証券会社等に資料請求を行い、契約条件や支援体制を比較検討します。
  • 多くの証券会社では、IFA希望者向けに説明会や個別相談会を開催していますので、積極的に参加してみましょう。

🪜ステップ3:自社との相性を見極める

  • 自社の既存顧客層や事業内容に合った金融商品を取り扱っている証券会社を選定し、具体的な連絡・相談を開始します。
  • 取扱商品、支援体制、契約条件などを踏まえ、自社にとって最適なパートナーを見つけることが重要です。

 IFA事業は、制度理解・パートナー選定・体制整備の3つが開業準備の柱となります。
 焦らず段階的に進めることで、スムーズな立ち上げと長期的な事業運営につながります。

📘 補足情報

 関連する解説を当事務所のブログ記事「FPがIFA登録を目指す前に確認すべき実務ポイントと業態選択」で取り上げておりますので、ご興味のある方は、ご覧ください。

Q9.金融商品仲介業者として登録してから、IFA事業者として営業を開始するという理解でよいのでしょうか?

A9. 実は、順序はその逆になります。

 一般的には「まず登録してから営業開始」と考えがちですが、IFA事業の場合は、証券会社等との業務委託契約が先になります。
 この点は、Q4でも触れているとおり、金融商品仲介業の登録申請は、証券会社等との契約が成立していることが前提です。
 つまり、IFAとして営業を始めるには、まず証券会社等と業務委託契約を締結し、その後に登録手続きが進められるという流れになります。
 実際のステップは次のようになります:
 まず、証券会社等と業務委託契約を締結します。
 その契約をもとに、証券会社等が財務局への登録申請を代行します。
 登録が完了すると、証券業協会コードの取得や外務員登録などの手続きが進み、すべてが整った段階でIFAとしての営業が可能になります。
 このように、「契約 → 登録 → 営業開始」という順序が基本です。
 登録が先ではなく、契約が先という点を押さえておくと、IFA開業の流れがよりスムーズに理解できるはずです。

Q10.提携できるIFA法人を募集している証券会社を教えてください。

A10. IFA法人との提携を受け入れている証券会社はいくつか存在します。

 代表的な証券会社として、以下のような企業が挙げられます:

  • SBI証券
  • 楽天証券
  • あかつき証券
  • 東京東海証券
  • マネックス証券

 ただし、これらの証券会社の中には、時期や募集枠の都合により、IFA法人の新規募集を一時停止している場合もあります。
 そのため、提携を検討される際は、各社の公式ホームページや説明会情報などを直接確認することをおすすめします。
 また、どの証券会社と提携するかを選ぶ際には、自社の顧客層や取扱商品との相性、サポート体制、契約条件などを総合的に判断することが重要です。
 この点については、Q2でも触れていますので、併せてご参照ください。

Q11.私は個人事業主なのですが、個人事業主はIFA事業者として開業できないのでしょうか?

A11. 法人でなくても、IFAとして開業できる可能性はあります。

 多くの証券会社では、コンプライアンス管理や業務体制の観点から、法人事業者のみを受け入れているケースが一般的です。
 これは、金融商品仲介業における責任体制や監督体制を明確にするための方針によるものです。
 ただし、例外的に、個人事業主との業務委託契約を受け入れている証券会社も存在します。
 そのような証券会社では、特に証券会社のリテール部門などで実務経験を積んだ個人事業主を対象に、IFAとしての開業を支援しているケースが見られます。
 もしご自身が実務経験をお持ちで、個人事業主としてIFA事業を検討されている場合は、個人事業主の受け入れ実績がある証券会社を探し、直接アポイントを取ってみることをおすすめします。
 事前に募集要件や契約条件を確認し、開業の可能性を具体的に探ることが重要です。

📘 補足情報

 関連する解説を当事務所のブログ記事「副業・複業としてのIFA事業の可能性と課題」で取り上げておりますので、ご興味のある方は、ご覧ください。

Q12.業務委託の証券外務員だけで、IFA法人として開業することは可能ですか?

A12. 結論から言うと、業務委託の外務員のみではIFA法人としての開業はできません。

 IFA法人として開業するためには、社内に常勤の証券外務員が2名以上在籍していることが原則的な要件とされています。
 この常勤要件は、開業時だけでなく、開業後の運営においても継続的に求められるものです。
したがって、外部との業務委託契約によって外務員を確保し、社内に常勤者がいない状態で法人を設立・運営することは、制度上認められていません。
 仮に開業時に常勤外務員がいたとしても、後にすべて業務委託に切り替えてしまった場合には、提携している証券会社との契約違反に問われる可能性が高くなります。
 さらに、金融商品仲介業者としての適格性そのものが疑問視されるリスクも生じます。
IFA法人としての信頼性や継続的な業務体制を確保するためにも、常勤外務員の配置は不可欠な要素です。
 制度の趣旨を踏まえ、安定した人員体制を整えた上で開業・運営を進めることが重要です。

Q13.暗号資産仲介業の創設が検討されていると聞きました。どのような制度になるのでしょうか?

A13. 現在、金融庁では「暗号資産・電子決済手段仲介業(仮称)」の創設が検討されています。

 この制度は、暗号資産の取引に関する仲介業務を対象とした新たな枠組みで、2025年以降の導入が視野に入れられています。
 現時点で公表されている主な検討内容は以下の通りです:
 まず、仲介業者は「暗号資産交換業者」や「電子決済手段等取引業者」といった既存の事業者に所属する形で活動することが想定されています。
 また、仲介業者自身は利用者の資産を預からないため、財務的な参入規制は設けない方向で検討されています。
 さらに、AML/CFT(マネーロンダリング・テロ資金供与対策)については、仲介業者ではなく、所属先の交換業者が義務を負う仕組みが想定されています。
 このように、仲介業者の役割は「媒介」に特化し、リスク管理や規制対応は所属先の事業者が担う設計となる見込みです。
 なお、これらはあくまで検討段階の内容であり、今後の制度設計やパブリックコメント等を経て、変更される可能性があります。
 最新情報は金融庁の公式発表や関連資料を随時確認するようにしましょう。

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