2022年12月26日、合同会社KYが提供するAI投資サービス「Needs」に対し、関東財務局は「無登録で金融商品取引業を行っていた」として警告を発しました。
「投資教育」をうたいながら、実際には銘柄選定や売買指示を行っていたとされるこの事例は、投資教育と投資助言の境界線を改めて問い直すものです。
近年、SNSやオンライン教材を通じた「無登録投資助言」に対する行政の監視は強まっています。投資教育や情報発信を行う個人・事業者にとって、法的リスクを理解し、教育に徹する姿勢を持つことが不可欠です。
📝記事概要
2022年12月26日、合同会社KYが提供するAI投資サービス「Needs」に対し、関東財務局は「無登録で金融商品取引業を行っていた」として警告を発しました。
「投資教育」をうたいながら、実際には銘柄選定や売買指示を行っていたとされるこの事例は、投資教育と投資助言の境界線を改めて問い直すものです。
近年、SNSやオンライン教材を通じた「無登録投資助言」に対する行政の監視は強まっており、情報発信者にとっては法的リスクを理解し、教育に徹する姿勢が不可欠です。
記事のポイント
- 事例の概要:「Needs」は投資教育をうたいながら、実態は投資助言に該当すると判断され警告を受けた。
- 教育と助言の違い:教育は一般的知識の提供、助言は特定銘柄や売買タイミングの推奨。
- 法的リスク:金融商品取引法違反、行政処分、刑事罰、信用失墜による事業継続困難。
- 行政処分の傾向:SNSや教材を通じた無登録助言が増加。AIや「副業」「簡単に稼げる」といったキャッチコピーを利用する事例が目立つ。
- 情報発信者へのチェックリスト:特定銘柄の推奨回避、自己責任の明示、最新法規制の確認、専門家の支援体制。
- 事例比較表:教育と助言の違いを具体的に整理。
- FAQ:教育と助言の線引き、契約書の効力、AI活用の注意点、無登録助言のリスクなどを解説。
読者へのメッセージ
この事例は、投資教育と投資助言の境界線を理解する上で象徴的です。無登録助言は行政処分の対象となり得るため、情報発信者は「教育」に徹し、法的リスクを回避する姿勢が不可欠です。
安定的にビジネスを続けるためには、法規制の動向チェックと専門家の支援という二つの柱が欠かせません。
◇事例の概要
- 合同会社KYは、AIを活用した投資情報サービス「Needs」を提供。
- サービスは「投資教育」をうたいつつ、実際には特定銘柄の選定や売買タイミングに関する情報を提供していたとされる。
- 関東財務局は金融商品取引法に基づき、「投資助言・代理業」に該当する可能性が高いと判断し、警告を発出。
重要な示唆:無登録で投資助言・代理業を行い行政処分を受けると、将来的に合法的な金融ビジネスの道が閉ざされる可能性が極めて高いです。
◇教育と投資助言の境界線
教育と投資助言の境界線は、以下のように定義できます。
- 教育:投資理論や金融知識、過去の市場事例を一般的に解説する行為。
- 助言:特定の銘柄や売買タイミングについて判断を提示し、投資行動を誘導する行為。
境界線が曖昧になりやすい事例
- セミナーで「この銘柄は今後伸びる」と発言
- 教材に「買うべきタイミングは○○」と記載
- SNSで「来週は△△株が上がる」と予測
👉 実務上の注意:教育コンテンツを作る際には、特定銘柄や指数への言及、断定的な売買推奨は避ける必要があります。
◇無登録で投資助言を行う法的リスク
無登録で投資助言を行う法的リスクとして主に以下の三点があります。
- 金融商品取引法違反に該当する可能性
- 行政警告から業務停止命令、刑事罰に至るリスク
- 信用失墜による事業継続困難
契約書に「投資助言を目的ではない」と記載していても、実態が助言に当たれば行政処分対象となります。
◇近年の行政処分の傾向
近年は、以下のような事例に対する処分が増加傾向にあります。
- SNSやオンライン教材を通じた無登録助言への警告が増加
- 高齢者や投資初心者をターゲットにした事例が多発
- 「AI」「副業」「簡単に稼げる」といったキャッチコピーを利用するケースが目立つ
上記の事例に加えて、YouTubeやブログからLINE等のクローズドな場に誘導し、投資助言や高額情報商材を販売する事例も問題視されています。
◇情報発信者へのチェックリスト
投資教育・情報発信を行う際に、以下の点を確認しましょう。
✅ 特定銘柄の推奨を避けているか
✅ 投資判断は自己責任であることを明示しているか
✅ 教材やセミナーは「一般的知識の提供」に留めているか
✅ 最新の法規制を確認しているか
✅ 専門家の助言を受ける体制を整えているか
◇事例比較:教育と助言の違い
改めて教育と助言の違いをまとめると以下の表のようになります。

◇まとめ
「Needs」事例は、教育と助言の境界線を考える上で象徴的なものです。
無登録助言は行政処分の対象となり得るため、情報発信者は「教育」に徹し、法的リスクを回避する姿勢が不可欠です。
安定的にビジネスを続けるためには、法規制の動向チェックし、専門家の支援を受ける
という二つの柱が欠かせません。
💬よくある質問(Q&A):IFAビジネスと利益相反リスクについて
Q1. 「投資教育」と「投資助言」の違いは、どこで線引きされるのですか?
A1. 投資教育は「一般的な知識や理論の提供」に留まります。例えば「分散投資の重要性」や「過去の市場事例の解説」は教育です。一方、投資助言は「特定の銘柄や売買タイミングを推奨する行為」であり、投資行動を誘導するものです。教育と助言の境界は「特定性」と「行動誘導性」にあります。
Q2. 「この銘柄は有望」とSNSに書いたら助言になりますか?
A2. 特定銘柄を推奨する表現は助言に該当する可能性が高いです。教育目的なら「有望とされる銘柄の特徴」や「一般的に成長企業に見られる傾向」を解説する形に留めるべきです。
Q3. 「買うべきタイミングは○○」と教材に書いたらどうですか?
A3. 売買タイミングを断定的に示すことは助言に該当します。教育目的なら「一般的に○○のような局面が買いの判断材料とされる」といった表現に留めるべきです。
Q4. 契約書に「助言は行わない」と書いておけば安心ですか?
A4. 契約書の文言よりも「実態」が重視されます。契約書に助言を否定する文言があっても、実際に助言行為をしていれば行政処分対象になります。
Q5. 「過去の事例を解説する」ことも助言に当たりますか?
A5. 過去の市場事例を一般的に解説することは教育に該当します。ただし「この事例と同じだから今は買い時だ」と現在の投資行動に結びつけると助言になります。
Q6. 顧客から「○○株を買った方がいいですか?」と聞かれたらどう答えるべきですか?
A6. 「○○株は良い選択です」と答えると助言に該当します。教育目的なら「投資判断は自己責任であり、一般的に長期投資では分散が重要です」といった一般論に留めるべきです。
Q7. 「AIを使った投資教育サービス」は安全ですか?
A7. AIを活用すること自体は問題ありません。ただし、AIが特定銘柄や売買タイミングを提示する場合は助言に該当する可能性が高く、無登録で行えば行政処分対象になります。
Q8. 無登録で投資助言を行った場合、どんなリスクがありますか?
A8. 主に以下の四点のリスクがあります。
- 金融商品取引法違反による行政処分(警告・業務停止命令)
- 刑事罰の対象となる可能性
- 顧客に損害を与えれば民事賠償責任
- 信用失墜による事業継続困難
Q9. 「教育目的」として有料セミナーや教材を販売するのは問題ありませんか?
A9. 教育目的であれば合法です。ただし、教材やセミナーで特定銘柄や売買タイミングを推奨すれば助言に該当します。販売形態よりも「内容」が重視されます。
Q10. 行政処分を受けると、その後登録して合法的に投資助言業を行うことはできますか?
A10. 行政処分を受けた場合、将来的に投資助言・代理業の登録は極めて困難になります。事実上、合法的に金融ビジネスを行う道が閉ざされると考えるべきです。
Q11. 情報発信者がリスクを避けるために最低限守るべきルールは?
A11. 以下の五つを守る必要があります。
- 特定銘柄の推奨を避ける
- 投資判断は自己責任であることを明示する
- 教材やセミナーは「一般的知識の提供」に留める
- 最新の法規制を常に確認する
- 必要に応じて金融法務の専門家に相談する
参考資料
・関東財務局:無登録で金融商品取引業等を行う者について(合同会社KY)
・副業裁判24時|Needs(ニーズ)は詐欺まがい?
関連ページ
・ホームページやブログで投資情報の提供を行う際の注意点
・メールマガジンによる投資情報提供の注意点|規制と対応策
・投資助言業行政処分事例
・行政処分事例から学ぶ教訓①|投資助言業者の不正防止マニュアルとコンプライアンス強化策
・行政処分事例から学ぶ教訓②|投資助言・代理業登録制度と無登録業者に対するリスク解説
✍ 執筆者プロフィール
金融法務コンサルタント。元行政書士として、IFA登録や投資助言・代理業登録の支援実績多数。
現在は、ブログ・noteを通じて、金融ビジネスに関心のある実務家向けに情報発信を行っています。現在公開中の有料note記事は、投資助言/IFA有料note紹介で紹介していますので、ご興味のある方は、ご覧ください。
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