📝記事概要
投資助言・代理業の登録には、経営者や助言担当者などが最低3年の実務経験を持つ必要があります。業務内容によってはシステム担当者も必要となる場合があります。コンプライアンスや監査業務は外部専門家の支援で補完可能ですが、社内にも一定の経験者を配置する必要があります。
少人数での登録も可能ですが、金融業経験者が2名以上必要で、外部支援への依存度が高くなる傾向があります。また、年間1000万円以上の経費を見込む必要があるため、収益とのバランスを慎重に検討することが重要です。
本記事でわかること
- 投資助言・代理業の人的構成要件:各役職で最低3年の実務経験が必要
- 外部支援の活用:コンプライアンスや監査業務は外部専門家の支援で補完可能だが、社内にも担当者を配置する必要がある
- 経費の考慮:人件費だけで年間1000万円以上の固定コストがかかる可能性があり、収益とのバランスを慎重に検討する必要がある
- 登録準備の自己診断:人的構成や外部支援体制の有無をチェックできる
- 制度変更の展望:2025年のパブリックコメントに基づく今後の柔軟化の可能性
🔍 人的構成要件の全体像(簡易まとめ)
● 経営者
- 必要経験:金融商品取引業者の役員または管理職としての経験が原則3年以上
- 外部委託:不可(ただし、知識補完のための外部支援は可能)
- 補足:他業種の役員経験者は、資格取得や外部支援体制の構築で補完可能
● 助言担当者
- 必要経験:助言対象金融商品に関する実務経験が原則3年以上
- 外部委託:不可
- 補足:投資経験+資格保有で補完可能な場合もあり
● コンプライアンス担当者
- 必要経験:金融商品取引業でのコンプライアンス業務経験が原則3年以上
- 外部委託:条件付きで可能(弁護士等の支援が前提)
- 補足:2007年9月30日以降の経験が必要。外務員資格や研修履修者はプラス評価
● 内部監査担当者
- 必要経験:金融商品取引業者での監査業務経験が原則3年以上
- 外部委託:条件付きで可能(外部委託しても社内配置は必須)
- 補足:他業種での監査経験者も、外部支援体制の構築で補完可能
● システム担当者(※提供するサービスによっては、設置を求められる場合もあるが、必須ではない)
- 必要経験:業務内容に応じて、システム保守管理の経験が求められる(目安3年以上)
- 外部委託:可能
- 補足:自動売買やAIを用いたサービスを提供する場合は、設置が必要になるケースが多い
◇登録準備のためのチェックリスト
以下の項目にすべてチェックが入る場合、登録要件を満たしている可能性があります。
□ 経営者に金融業界での役員または管理職経験がある
□ 助言担当者に対象金融商品の実務経験がある
□ コンプライアンス担当者に3年以上の実務経験がある、または外部支援体制がある
□ 内部監査担当者を社内に配置できる
□ 年間1000万円以上の経費を見込んでいる
◇各役職に求められる職務経験の要件
〇経営者
- 金融商品取引業者の役員としての経験(最低3年、合算可)
- 他業種での役員経験がある場合は、資格取得や外部支援体制の構築で補完可能
- 管理職経験のみの場合も、補完次第で登録可能
- 経営経験も金融業務経験もない場合は、登録は極めて困難
〇分析・助言担当者
- 助言対象金融商品に対する最低3年の実務経験
- 投資経験+資格保有で補完可能な場合もあり
〇コンプライアンス担当者
- 金融商品取引業でのコンプライアンス経験(最低3年)
- 2007年9月30日以降の経験であることが必要
- 弁護士や外務員資格保有者、研修履修者はプラス評価
- 外部委託の全面解禁の可能性も議論されている(※後述)
〇内部監査担当者
- 金融商品取引業者での監査経験(最低3年)
- 他業種での監査経験+外部支援体制で補完可能
- 外部委託も可能だが、社内配置は必須
〇システム担当者
- 自動売買やAIを用いたサービスを行う場合、保守管理経験が求められる
- 目安として3年以上の経験が必要とされるケースが多い
◇小規模事業者のモデルケース紹介
例:A社(従業員2名)
- 代表者:元証券会社の管理職
- 助言担当者:FP資格保有者で投資経験豊富
- コンプライアンス・監査:外部の弁護士に委託
→ 登録を受け、現在は法人向け助言業務を展開中
このように、少人数でも役割を兼任しながら、外部支援を活用することで登録は可能です。
◇登録後の収益モデルの簡易試算
登録後の経費は、最低でも年間1000万円以上が見込まれます。
例えば、以下のような収益モデルが考えられます:
- 月額顧問料:5万円
- 顧客数:20社
- 年間売上:5万円 × 12ヶ月 × 20社 = 1,200万円
このように、収益と経費のバランスを事前にシミュレーションしておくことが重要です。
◇制度変更の展望(2025年パブリックコメントより)
2025年のパブリックコメントでは、コンプライアンス業務の全面委託の可能性が示唆されました。
これにより、今後は人的構成要件の柔軟化が進む可能性もあります。
ただし、現時点では社内に一定の機能を持たせることが求められており、完全な外部委託が認められるかは不透明です。
◇まとめと次のステップ
投資助言・代理業の登録には、各役職に最低3年程度の実務経験が求められます。
外部専門家の支援を受けることで補完可能な部分もありますが、社内に一定の経験者を配置する必要があります。
少人数での登録も可能ですが、金融業経験者が2名以上必要であり、外部支援の活用が前提となるケースが多くなります。
また、年間1000万円以上の経費を見込んだ上で、収益とのバランスを慎重に検討することが重要です。
📌 登録準備だけでなく「買収による参入」を検討中の方へ
人的構成要件をクリアする方法として、「既存登録業者のM&Aによる買収」を検討されている方も増えています。
しかし──
✅ 登録維持の形式だけでは済まない実務の落とし穴
✅ 買収前に必ず確認すべき“許認可の盲点”
✅ スムーズな事業承継に必要な人的要件と専門家の関与
これらを知らずに進めると、買収後に「登録取消」や「業務停止」といった重大なリスクに直面する可能性も。
有料note記事「M&Aで投資助言業に参入する際の注意点【実務チェックリスト付き】」では、元行政書士の視点から、実際の相談事例をもとに法的・実務的な注意点を徹底解説。社内検討用に使えるチェックリストも付属しています。
💡 M&Aによる参入を検討している経営者・実務担当者の方は、意思決定の前にぜひご一読ください。
▶︎ [有料note記事「M&Aで投資助言業に参入する際の注意点【実務チェックリスト付き】」|価格:700円]
関連ページ
・投資助言・代理業登録するための要件に関心のある方は当WEBの金融許認可コラムをご覧ください