個人事業主でも登録できる?投資助言・代理業登録の必要条件と現実

投資助言・代理業

 本記事では、私が行政書士として活動していた頃から現在に至るまで、多くのお客様からご相談をいただいてきた「個人事業主でも投資助言・代理業に登録できるのか?」というテーマについて、制度の設計と実務の現実、そして登録を目指す場合・目指さない場合の選択肢まで、実務的な視点で解説していきます。

📝記事概要|個人事業主でも登録できる?投資助言・代理業登録の必要条件と現実

 本記事では、個人事業主が投資助言・代理業に登録できるかどうかについて、制度上の可能性と実務上のハードルを詳しく解説しています。登録に必要な人的体制や実務経験、資金面の負担、外部委託の限界などを踏まえ、登録を目指す場合の準備ステップと、登録せずに合法的に投資情報を発信する方法も紹介。投資情報を発信する事業者が、自身のビジネスの方向性を判断するための実務的な指針を提供します。

🔍こんな方におすすめ

  • 投資情報を発信している個人事業主
  • 投資助言・代理業の登録を検討している方
  • 金融商品取引法との適法な距離感を知りたい方
  • 法人化や人的体制の整備を考えている方

📌本記事でわかること

  • 制度上の登録要件と実務上の審査基準
  • 登録に必要な人的構成と実務経験
  • 金銭的負担と運営体制の現実
  • 外部委託の限界と注意点
  • 登録せずに情報発信するための工夫
  • 登録を目指す場合の準備ステップと戦略

◇投資助言・代理業の制度上の設計と現実

 まず、「個人事業主でも投資助言・代理業に登録できるのか?」という問いに対して、制度上は「可能」と答えることができます。実際、金融商品取引法上は法人格を持たない個人事業主でも登録申請を行うことが認められています。
 しかし、登録審査が厳格化されている2025年現在、個人事業主が新規で投資助言・代理業に登録することは、極めて困難となっています。制度上の「可能性」と、実務上の「現実」には大きなギャップがあるのが実情です。

◇最低限求められる実務経験や人的構成要件

 投資助言・代理業に登録するためには、以下のような人的体制が求められます。

  • 経営者
  • 分析・助言担当者
  • コンプライアンス担当者
  • 内部監査担当者

 これらの役割に対して、それぞれ3年程度の実務経験が必要とされており、登録実務上は金融業界経験者が最低2名以上必要です。
 一見すると、経験者を2名確保できれば登録できそうに思えますが、実際には2名体制では顧客対応や業務運営に限界があり、外部の弁護士等に内部監査等を委託することを前提とした体制では、運営コストや業務負担が重くなりがちです。そのため、一般的には最低3名体制で登録を目指すケースが多くなります。

◇資本金要件はなし、でも「ヒトと体制」で審査される現実

 投資助言・代理業には資本金要件はありませんが、登録完了後には500万円の供託金を管轄の法務局に収める必要があります。
 登録時に必要な資金は比較的少額ですが、審査では「ヒトと体制」が厳しくチェックされます。人的体制を整えるには、個人事業主にとっては重い金銭的負担が生じます。具体的には、人件費だけでも年間最低1000万円程度の負担を覚悟する必要があり、外部委託費用や事務所の家賃なども加味すると、初年度の運営コストは相応に高額になります。

◇外部委託で補える範囲は?

 人的資本が限られる個人事業主にとって、コンプライアンスや内部監査を外部の弁護士等に委託することは現実的な選択肢の一つです。
 ただし、外部支援を受けたとしても、社内に担当者を置く必要があり、その担当者にも一定の実務経験が求められます。この点が、個人事業主が登録を目指す際の大きなハードルとなっています。

◇登録を目指す場合の現実的なステップ

 それでも登録を目指す場合には、以下のような準備が必要です。

  1. 金融業界経験者の確保(人脈・採用戦略)
  2. 業務運営体制の構築(役割分担・責任体制)
  3. 外部専門家との連携体制の整備
  4. 金銭的シミュレーション(初年度コスト試算)

 また、法人化することで人的体制の構築や資金調達がしやすくなり、登録審査でも有利になる傾向があります。実際に登録に成功した事業者の多くは法人格を有しており、3名以上の体制を整えた上で登録を行っています。

◇登録せずに投資情報を発信する方法

 登録が難しい場合でも、金融商品取引法に抵触しない範囲で投資情報を発信することは可能です。以下のような工夫が有効です。

  • 市況解説や経済ニュースの紹介
  • 投資教育・金融リテラシー向上を目的としたコンテンツ
  • 特定銘柄の推奨を避け、分析手法や考え方の紹介に留める

 たとえば、「この銘柄は買い」といった断定的な表現は避け、「私はこう考える」「このような分析手法がある」といった主観的・教育的なスタンスを取ることで、助言行為に該当しないよう配慮することが重要です。
 金融庁のガイドラインや過去の行政処分事例を参考にすることで、発信内容のリスクを事前に把握することも可能です。

◇個人事業主の方から投資助言・代理業の登録に関してよくいただくご質問(Q&A)

 ここまでの内容の復習を兼ねて、個人事業主の方から投資助言・代理業の登録に関してよくいただくご質問の中で代表的なものを三つご紹介します。

Q1. 投資助言・代理業に登録しないと、どこまで発信していいの?
A1. 市況解説や教育的な情報提供は可能ですが、特定銘柄の推奨や売買タイミングの助言は避けるべきです。
Q2. 外部委託だけで登録できる?
A2. 外部委託は補助的な役割であり、社内に実務経験者を配置する必要があります。
Q3. 法人化すれば登録しやすくなる?
A3. 一般的には、法人化することで人的体制や資金面の整備がしやすくなり、登録審査でも有利になる傾向があります。

◇まとめ

 ここまで述べてきたように、個人事業主が投資助言・代理業に登録するのは、制度上は可能であるものの、実務上は非常に困難です。
 そのため、投資情報を発信している個人事業主は、自己のビジネスが投資助言・代理業に該当しないよう工夫するか、法人化や人的体制の整備を含めて本格的に登録を目指すか、慎重に判断する必要があります。

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