【基礎編】暗号資産について発信するときのルールは?投資情報発信初心者が知っておきたい基本

【基礎編】投資情報発信と金融ルール

 暗号資産について、X(旧Twitter)やYouTube、ブログ、noteなどで情報発信してみたい。

 そう考えている方もいるのではないでしょうか。

 暗号資産は価格の動きが大きく、新しいサービスや制度変更などの話題も多いため、投資情報を発信するテーマとして注目されやすい分野です。

 一方で、暗号資産について発信するときには、「投資に関する情報なら何を書いてもいい」というわけではありません。

 たとえば、

「この暗号資産はこれから上がる」
「今のうちに買っておいた方がいい」
「この取引所を使えば儲かる」
「この銘柄を買っておけば大丈夫」

といった表現を何気なく使ってしまうと、単なる情報紹介のつもりでも注意が必要になることがあります。

「自分は金融の専門家ではないから関係ない」

と思う方もいるかもしれません。

 しかし、投資情報を発信するのであれば、自分の発信が読者の投資判断にどのような影響を与えるのかを意識することが大切です。

 さらに、2026年には暗号資産を取り巻く制度の大きな見直しが進んでいます。

 金融庁は、暗号資産をこれまでの資金決済法による規制から、金融商品取引法による規制の対象とする制度改正を進めており、2026年7月15日には関連する改正法が成立しました。改正では、暗号資産に関する情報提供の仕組みや不公正な取引への対応なども整備されることになっています。

 ただし、この記事を読むうえで、法律の細かい条文を覚える必要はありません。

 まずは、

「暗号資産について発信するとき、どんなことに気を付ければいいのか?」

を知ることから始めましょう。

 この記事では、金融法務の知識がない投資情報発信初心者の方に向けて、暗号資産を発信するときに知っておきたい基本的な考え方を、できるだけ難しい言葉を使わずに解説します。

  1. 本記事の概要
    1. この記事のポイント【3行まとめ】
    2. 本記事の想定読者
    3. この記事を読むと分かること
  2. 第1章 暗号資産について発信するだけでも注意が必要なの?
    1. 「情報を伝える」だけなら問題ない?
  3. 第2章 「情報紹介」と「投資を勧めること」はどう違う?
    1. 「情報紹介」に近い発信の例
    2. 投資判断を強く促す発信には注意
  4. 第3章 暗号資産の発信で特に注意したいポイント
    1. 「絶対」「確実」などの言葉を使わない
    2. 具体的な売買を強く勧めない
  5. 第4章 「おすすめ」という言葉にも注意しよう
  6. 第5章 広告・PRとして暗号資産関連サービスを紹介するとき
    1. 広告なのに広告だと分からない状態にしない
    2. 「紹介料をもらう=すべて問題」というわけではない
  7. 第6章 「紹介するサービス」そのものも確認しよう
  8. 第7章 SNS・YouTube・ブログではどこに注意すればいい?
    1. XなどのSNS
  9. 第8章 YouTubeでは「動画全体」で考える
  10. 第9章 ブログ・noteでは「記事全体の流れ」に注意
  11. 第10章 初心者がやりがちな発信を3つのケースで考えてみよう
    1. ケース1 「この暗号資産は上がる」と投稿する
    2. ケース2「初心者におすすめの暗号資産」を紹介する
    3. ケース3 暗号資産関連サービスを紹介する
  12. 第11章 2026年の制度変更で、なぜ発信者も基本を知っておく必要があるの?
  13. 第12章 初心者が覚えておきたい「5つの確認」
  14. 第13章 「法律を知らないから発信できない」と考える必要はない
  15. 第14章 情報発信者が意識したい「3つの視点」
    1. 視点1 「何を伝えているか」
    2. 視点2 「どう伝えているか」
    3. 視点3 「読者はどう受け取るか」
  16. まとめ|まずは「発信前に一度立ち止まる」ことから
    1. 次回の記事では
  17. よくある質問(Q&A)|暗号資産について発信する初心者が知っておきたいこと
    1. Q1.暗号資産について発信すること自体が禁止されているのですか?
    2. Q2.「この暗号資産はおすすめです」と書くのはダメですか?
    3. Q3.「この暗号資産は上がると思います」と、自分の意見を書くのもダメですか?
    4. Q4.「私はこの暗号資産を持っています」と書くのは問題ありませんか?
    5. Q5.暗号資産交換サービスを紹介して、紹介料をもらうのはダメですか?
    6. Q6.「PR」「広告」と書いておけば、それだけで大丈夫ですか?
    7. Q7.Xで投稿するだけなら、ブログやYouTubeよりもルールはゆるいですか?
    8. Q8.YouTubeで「おすすめの暗号資産○選」と紹介するのはダメですか?
    9. Q9.ブログやnoteなら、詳しく説明しているので問題ないですか?
    10. Q10.暗号資産を紹介する前に、紹介先の会社まで調べる必要がありますか?
    11. Q11.金融法務の知識がない初心者は、暗号資産について発信しない方がいいのでしょうか?
    12. Q12.結局、初心者は発信前に何を確認すればいいですか?
    13. Q13.「法律に違反していないか分からない」ときはどうすればいいですか?
    14. Q&Aから覚えておきたいこと
  18. 執筆者プロフィール
  19. 参考資料・関連ページ

本記事の概要

この記事のポイント【3行まとめ】

  • 暗号資産について発信するときも、内容や表現には注意が必要
  • 「情報を紹介すること」と「投資を勧めること」は同じではない
  • 初心者は、発信前に「何を・誰に・どのように伝えるのか」を確認する習慣をつけることが大切

本記事の想定読者

 この記事は、次のような方を想定しています。

  • 暗号資産についてSNSやブログ、YouTube、noteなどで発信してみたい方
  • 投資情報発信を始めたばかりの方
  • 金融法務についてほとんど知識がない方
  • 「暗号資産について発信するとき、何に注意すればいいの?」と疑問に感じている方
  • 暗号資産や暗号資産関連サービスを紹介してみたい方

この記事を読むと分かること

 この記事では、次のようなことを分かりやすく説明します。

  • 暗号資産について発信するときの基本的な考え方
  • 「情報紹介」と「投資を勧めること」の違い
  • 注意したい表現
  • SNS・YouTube・ブログ・noteで注意したいポイント
  • 暗号資産関連サービスを紹介するときの注意点
  • 投資情報発信初心者が発信前に確認したいポイント

第1章 暗号資産について発信するだけでも注意が必要なの?

 まず最初に知っておきたいのは、

「暗号資産について発信すること自体が、すべて禁止されているわけではない」

ということです。

 たとえば、

  • 暗号資産とは何かを説明する
  • 暗号資産の仕組みを解説する
  • 過去の価格推移を紹介する
  • 暗号資産に関するニュースを紹介する
  • 制度変更について解説する
  • 暗号資産のメリットや注意点を整理する

といった発信は、一般的な情報提供として行われることがあります。

 では、なぜ注意が必要なのでしょうか。

 ポイントは、「情報を伝えること」と「投資を勧めること」は同じではないということです。

「情報を伝える」だけなら問題ない?

 たとえば、

「今日はビットコインの仕組みについて解説します」

という発信と、

「ビットコインはこれから上がるので、今すぐ買いましょう」

という発信では、読者に与える印象が大きく違います。

 前者は「知識を伝える」ことが中心です。

 一方、後者は「こういう投資行動をした方がいい」と読者に働きかけています。

 この違いは、暗号資産の情報発信を考えるうえで、とても重要です。

第2章 「情報紹介」と「投資を勧めること」はどう違う?

 金融法務の知識がない初心者の方は、最初から法律用語を覚える必要はありません。

 まずは、次のようにシンプルに考えてみましょう。

情報紹介

「この暗号資産には、このような特徴があります」

投資を勧める発信

「この暗号資産を買った方がいいです」

 この2つは、似ているようで意味が違います。

 もちろん、実際の法律上の判断は、単に一つの文章だけを見て決まるものではありません。

 発信の内容、相手、継続的なやり取り、報酬の有無など、さまざまな事情を考える必要があります。

 そのため、初心者の方は、

「この一言なら絶対に大丈夫」「この言葉なら必ず違法」

という単純な考え方をしないことも大切です。

「情報紹介」に近い発信の例

 たとえば、次のような発信です。

 このような発信では、「読者に知ってもらうこと」が中心になります。

投資判断を強く促す発信には注意

 一方で、次のような発信になると注意が必要です。

 ここで大切なのは、「この表現を使ったら直ちに違法」という意味ではないことです。

 実際の判断では、発信全体を見る必要があります。

 ただ、投資情報発信を始めたばかりの方であれば、こうした表現を安易に使わない方が安全です。

第3章 暗号資産の発信で特に注意したいポイント

 ここからは、暗号資産について発信するときに特に意識したいポイントを紹介します。

「絶対」「確実」などの言葉を使わない

 投資には、将来どうなるか分からないという性質があります。

 そのため、

「絶対に上がる」

「確実に儲かる」

「損することはありません」

といった表現には注意が必要です。

 特に暗号資産は価格が大きく動くことがあります。

 実際に金融庁が公表した2026年の暗号資産制度見直しに関する資料でも、暗号資産投資については利用者保護の観点から制度整備が必要とされており、今回の規制見直しが暗号資産投資に「お墨付き」を与えるものではないことも明確にされています。

 つまり、

「法律で規制される金融商品になった=安全に儲かる商品になった」

ということではありません。

 情報発信者としても、この点を誤解させるような表現は避ける必要があります。

具体的な売買を強く勧めない

 次のような文章を考えてみましょう。

「今の価格は安いので、今すぐ買っておくべきです。」

 これは、単なる暗号資産の説明というより、読者に具体的な投資行動を促す文章になっています。

 もちろん、実際の法的評価は発信全体を見なければ判断できません。

 しかし、投資情報発信初心者の方は、

「情報を伝えること」と「投資行動を指示すること」をできるだけ分ける

という意識を持っておくとよいでしょう。

 たとえば、

「この暗号資産について、最近注目されている理由を整理します。」

という書き方であれば、「なぜ注目されているのか」という情報を伝えることが中心です。

 一方、

「この暗号資産は今が買い時です。」

となると、読者の具体的な投資判断に踏み込む印象が強くなります。

第4章 「おすすめ」という言葉にも注意しよう

 投資情報発信では、「おすすめ」という言葉を使う場面も多いでしょう。

 たとえば、

「初心者におすすめの暗号資産3選」

というタイトルです。

 このタイトルだけで直ちに問題になると考える必要はありません。

 しかし、記事の中身を見て、

  • 「この3つを買えばいい」
  • 「この中では○○が一番おすすめ」
  • 「今買っておけば利益が期待できる」
  • 「初心者は○○だけ買えばいい」

など、具体的な投資を強く促している場合には注意が必要です。

 つまり、

「おすすめ」という一つの言葉だけを見るのではなく、記事全体を見る

ことが重要です。

第5章 広告・PRとして暗号資産関連サービスを紹介するとき

 暗号資産について発信していると、取引サービスや関連サービスの紹介依頼を受けることもあるかもしれません。

 たとえば、

「この暗号資産交換サービスを紹介してください」

という依頼です。

 この場合、単なる情報発信とは別の視点も必要になります。

広告なのに広告だと分からない状態にしない

 企業などから依頼を受けて紹介する場合には、

「これは広告・PRとして紹介しているのか?」

を確認することが大切です。

 広告であることを隠して、一般の利用者による自然なおすすめ投稿のように見せることは、読者に誤解を与える可能性があります。

 暗号資産に限った話ではありませんが、広告・PRを行う場合には、広告であることが分かるようにするという基本を忘れないようにしましょう。

「紹介料をもらう=すべて問題」というわけではない

 ここも初心者の方が誤解しやすいポイントです。

 紹介料や広告収入を受け取ること自体だけを見て、

「お金をもらったら違法」

と考える必要はありません。

 重要なのは、

  • どのようなサービスを紹介しているのか
  • どのような契約に基づいているのか
  • どのような内容を発信しているのか
  • 読者に広告・PRであることが分かるようになっているか
  • その紹介行為が法律上どのような行為に当たるのか

などを確認することです。

 特に金融商品や暗号資産関連サービスでは、一般の商品紹介とは違ったルールが関係することがあります。

第6章 「紹介するサービス」そのものも確認しよう

 暗号資産について発信するときは、自分が書く文章だけでなく、

「誰のサービスを紹介しているのか」

にも目を向けましょう。

 たとえば、暗号資産交換業者などを紹介する場合です。

 金融庁は、暗号資産を取り扱う事業者について登録制度を設けています。

 そのため、サービスの紹介を依頼された場合には、

「この会社はどのような事業者なのか?」

を確認する習慣をつけることが大切です。

 また、金融庁は無登録業者への対応を強化しており、2026年4月には、暗号資産等の購入を顧客に助言するなどの行為を行っていた投資顧問会社について、証券取引等監視委員会が検査結果に基づく勧告を公表しています。そこでは、暗号資産等の購入を助言したことや、リスクを十分に説明しないまま高い利益が得られるような説明をしていたことなどが問題として示されています。

 これは投資情報発信者にそのまま同じ規制が適用されるという話ではありません。

 しかし、

「暗号資産を紹介するときは、紹介先のサービスや事業者も確認する」

という重要な教訓にはなります。

第7章 SNS・YouTube・ブログではどこに注意すればいい?

 暗号資産の情報発信は、X、YouTube、ブログ、noteなど、さまざまな媒体で行われます。

 媒体が違っても基本的な考え方は変わりません。

 ただし、媒体ごとに注意するポイントがあります。

XなどのSNS

 Xでは、短い文章で情報を伝えることになります。

 そのため、

「この銘柄、絶対上がる。」

「今すぐ買った方がいい。」

のように、強い言葉だけが目立ってしまうことがあります。

 また、投稿本文だけではなく、

  • プロフィール
  • 固定ポスト
  • リプライ
  • DM
  • 外部サイトへのリンク

なども含めて、発信全体を考える必要があります。

 特に、

「SNSで興味を持たせる → LINEへ誘導する → 個別に投資判断を伝える」

というように発信方法が変化していく場合には、単なる情報発信とは異なる問題が出てくる可能性があります。

 SNSだから安全、というわけではありません。

第8章 YouTubeでは「動画全体」で考える

 YouTubeでは、動画本編だけを見れば慎重な説明をしているのに、

タイトルやサムネイルでは非常に強い表現を使っている

というケースがあります。

 たとえば、

動画本編

「暗号資産には価格変動リスクがあります。投資を行う場合は慎重な判断が必要です。」

と説明していたとしても、

サムネイル

「2026年、絶対に買うべき暗号資産3選!」

となっていたら、視聴者は「買うことを勧められている」と感じるかもしれません。

 そのため、YouTubeでは、

タイトル → サムネイル → 本編 → 概要欄 → 固定コメント → 外部リンク

まで含めて確認することが大切です。

第9章 ブログ・noteでは「記事全体の流れ」に注意

 ブログやnoteでは、SNSよりも詳しく説明できます。

 これは大きなメリットです。

 一方で、記事全体を読んだ結果、

「結局、この暗号資産を買えばいいんだ」

と読者が受け取る構成になっていないかを確認する必要があります。

 たとえば、

  1. 暗号資産の特徴を紹介
  2. 今後の市場拡大を説明
  3. 将来の価格上昇を予想
  4. 他の暗号資産より優れていると説明
  5. 最後に「今が買い時」と結論

という記事であれば、単なる情報紹介とは言いにくくなる可能性があります。

 もちろん、これも記事の一部分だけで法律上の判断が決まるわけではありません。

 しかし、初心者の方は、

「記事の最後まで読んだとき、読者にどのような行動を促しているように見えるか」

を確認してみてください。

第10章 初心者がやりがちな発信を3つのケースで考えてみよう

 ここでは、実際の発信をイメージしてみましょう。

ケース1 「この暗号資産は上がる」と投稿する

注意したい例

「この暗号資産は今後かなり上がると思います。今のうちに買っておきましょう!」

 この文章では、

  • 将来の値上がりを予想している
  • 購入を促している

という2つの要素があります。

比較的慎重な表現

「この暗号資産が最近注目されている理由について、特徴や市場での動きを整理してみます。」

 こちらは、購入を直接促すのではなく、情報を整理することを目的とした表現です。

ケース2「初心者におすすめの暗号資産」を紹介する

注意したい例

「暗号資産初心者なら、この銘柄を買っておけばOKです。」

 「買っておけばOK」という表現は、読者の投資判断をかなり強く誘導しています。

見直し例

「暗号資産初心者が知っておきたい代表的な銘柄について、それぞれの特徴と注意点を整理します。」

 こちらであれば、

「どれを買うか」ではなく「それぞれどのような特徴があるか」

を説明する構成にできます。

ケース3 暗号資産関連サービスを紹介する

 たとえば企業から、

「当社のサービスをXで紹介してください」

と依頼されたとします。

 この場合、

「私が普段から使っているおすすめサービスです!」

とだけ書くのではなく、

  • 広告・PRなのか
  • 報酬を受け取るのか
  • どのようなサービスなのか
  • 紹介先の事業者について確認したか
  • 読者が誤解するような表現になっていないか

を確認しましょう。

 金融庁は、金融商品取引業や暗号資産交換業などの登録を受けていない者による広告掲載等について、違法となり得るケースを明確化するため、2024年にガイドライン等を改正しています。

 つまり、

「広告として紹介するだけだから、自分には関係ない」

と簡単に考えないことが大切です。

第11章 2026年の制度変更で、なぜ発信者も基本を知っておく必要があるの?

 ここで、今回のシリーズの背景にある制度変更について少し確認しておきましょう。

 2026年7月15日に成立した改正法では、暗号資産について、これまでの資金決済法による規制から、金融商品取引法による規制の対象とする見直しが行われます。

 金融庁は、暗号資産を「有価証券とは異なる金融商品」として金融商品取引法に位置付ける方向を示しています。

 また、暗号資産について、

  • 必要な情報を公表する仕組み
  • 重要な情報が発生した場合の情報提供
  • インサイダー取引への対応
  • 投資家保護のためのルール

などが整備される予定です。

 ただし、ここで注意したいことがあります。

「金融商品になった=安全になった」ではない

暗号資産が金融商品として扱われる方向になったからといって、

「国が安全な投資商品として認めた」

という意味ではありません。

 金融庁自身も、暗号資産投資について「お墨付きを与えるものではない」と明確にしています。

 したがって、情報発信者としても、

「国が金融商品にしたから、これからは安心」

といった説明をしないことが重要です。

第12章 初心者が覚えておきたい「5つの確認」

 ここまでの内容を、発信前に確認できる形にまとめてみましょう。

 この5つを、投稿前・動画公開前・記事公開前に確認する習慣をつけてみてください。

第13章 「法律を知らないから発信できない」と考える必要はない

 ここまで読んで、

「暗号資産について発信するのは難しそう……」

と思った方もいるかもしれません。

 しかし、最初から金融法務を完璧に理解する必要はありません。

 むしろ、投資情報発信を始めたばかりの方にとって重要なのは、

「分からないまま勢いで発信しない」

という姿勢です。

 たとえば、

「この表現は強すぎないかな?」

「これは単なる情報紹介なのかな?」

「このサービスを紹介して大丈夫かな?」

と疑問を持つだけでも、大きな一歩です。

 分からないことがあれば、公開前に確認する。

 それだけでも、発信に対する意識は大きく変わります。

第14章 情報発信者が意識したい「3つの視点」

 最後に、暗号資産について発信するときに意識してほしい3つの視点をまとめます。

視点1 「何を伝えているか」

 暗号資産の特徴やニュースを紹介しているのか。

 それとも、具体的な投資判断を伝えているのか。

 まずここを確認します。

視点2 「どう伝えているか」

 同じ情報でも、

「こういう特徴があります」

と伝えるのか、

「だから今買うべきです」

と伝えるのかでは、意味が変わります。

 情報の内容だけでなく、言葉の選び方も確認しましょう。

視点3 「読者はどう受け取るか」

 最後に、

「この投稿を読んだ人は、どう受け取るだろう?」

と考えてみてください。

 自分としては「情報を紹介しただけ」のつもりでも、読者には「買うように勧められた」と受け取られることがあります。

 発信者側の意図だけではなく、受け手から見た印象も確認することが大切です。

まとめ|まずは「発信前に一度立ち止まる」ことから

 暗号資産について情報発信すること自体が、直ちに問題になるわけではありません。

 しかし、

「何を発信するか」だけでなく、「どのような言葉で伝えるか」

によって、発信の意味合いは大きく変わります。

 特に投資情報発信を始めたばかりの方は、次の点を意識してみてください。

 そして、最も大切なのは、

「これは情報を伝えているのか、それとも投資を勧めているのか?」

と発信前に一度立ち止まって考えることです。

 金融法務の知識がない初心者であっても、こうした基本的な視点を持つことから始められます。

 暗号資産を取り巻く制度は今後さらに変化していくため、情報発信を続けるのであれば、その変化にも注意しておきましょう。

次回の記事では

 次回は、今回の記事で取り上げた「表現」にもう少し踏み込んで、

「『この暗号資産はおすすめ』と書くのは大丈夫?投資情報発信で注意したい表現」

というテーマを取り上げます。

 「おすすめ」「買い時」「上がると思う」など、投資情報発信でつい使ってしまいがちな言葉について、

「どのような点に注意すればいいのか」

を、具体的な例を使いながら初心者向けに解説します。

※本記事について

 本記事は、暗号資産に関する情報発信を始める方に向けて、基本的な考え方を分かりやすく整理したものです。

 実際に法律上問題となるかどうかは、発信内容、発信方法、相手方との関係、報酬の有無など、個別の事情によって異なります。

 「この発信をしても大丈夫なのか」「このサービスを紹介して問題ないのか」など、具体的な判断が必要な場合には、個別の事情を踏まえて確認することをおすすめします。

よくある質問(Q&A)|暗号資産について発信する初心者が知っておきたいこと

Q1.暗号資産について発信すること自体が禁止されているのですか?

 いいえ、暗号資産について情報を発信すること自体が、すべて禁止されているわけではありません。

 たとえば、

  • 暗号資産の仕組みを説明する
  • 暗号資産に関するニュースを紹介する
  • 制度変更について解説する
  • 過去の価格推移を紹介する
  • 暗号資産の特徴や注意点を整理する

といった情報発信は一般的に行われています。

 ただし、発信内容が「この暗号資産を買った方がいい」「今すぐ投資すべき」といった形で、読者の投資判断を強く促すものになる場合には注意が必要です。

 まずは、「情報を伝えているのか、それとも投資を勧めているのか」を意識してみましょう。

Q2.「この暗号資産はおすすめです」と書くのはダメですか?

 「おすすめ」という言葉を使っただけで、直ちに問題になると考える必要はありません。

 ただし、記事全体を読んだ結果、

「この暗号資産を買った方がいい」

と読者が受け取るような内容になっている場合は注意が必要です。

 たとえば、

「この暗号資産は、○○という特徴があります。」

という説明と、

「この暗号資産は今が買い時です。初心者にもおすすめです。」

では、読者に与える印象が大きく違います。

 初心者の方は、「おすすめ」という言葉だけを見るのではなく、その後にどのような説明をしているかまで確認しましょう。

Q3.「この暗号資産は上がると思います」と、自分の意見を書くのもダメですか?

 自分の意見を書いたことだけで、直ちに問題になるとは限りません。

 ただし、

「絶対に上がる」
「確実に価格が上昇する」
「今買えば儲かる」

など、将来の利益を強く断定したり、購入を促したりする表現には注意が必要です。

 暗号資産の価格が将来どうなるかは、誰にも確実には分かりません。

 そのため、初心者の情報発信では、断定的な表現を避けて、

「今後の価格については不確実な部分がありますが、○○という点が注目されています。」

のように、事実と自分の考えを分けて伝えることを意識するとよいでしょう。

Q4.「私はこの暗号資産を持っています」と書くのは問題ありませんか?

 自分が保有している暗号資産について書くこと自体が、直ちに問題になるわけではありません。

 ただし、

「私は持っています。だから皆さんも買いましょう。」

という形になると、単なる保有状況の紹介とは意味が変わってきます。

 また、自分が保有していることを隠したまま、第三者に購入を強く勧めるような発信をすると、読者に誤解を与える可能性があります。

 自分の立場や利害関係が読者の判断に影響する可能性がある場合には、できるだけ分かりやすく伝えることを意識しましょう。

Q5.暗号資産交換サービスを紹介して、紹介料をもらうのはダメですか?

 「紹介料をもらう=すべて問題」というわけではありません。

 ただし、暗号資産関連サービスを紹介する場合には、

  • どのようなサービスなのか
  • 誰が運営しているのか
  • 広告・PRであることが分かるようになっているか
  • どのような報酬を受け取るのか
  • どのような内容を読者に伝えているのか

などを確認することが大切です。

 特に金融や暗号資産に関係するサービスでは、一般の商品紹介とは違ったルールが関係する場合があります。

 「広告だから何を書いてもいい」わけではないと覚えておきましょう。

Q6.「PR」「広告」と書いておけば、それだけで大丈夫ですか?

 「PR」「広告」と表示することは大切ですが、それだけで発信内容に関するすべての問題が解決するわけではありません。

 たとえば、広告であることを明示していても、

「絶対に儲かる」
「損することはない」
「今すぐ買うべき」

といった誤解を招く表現を使ってよいことにはなりません。

 広告であることを分かりやすく示すことに加えて、紹介する内容そのものにも注意することが必要です。

Q7.Xで投稿するだけなら、ブログやYouTubeよりもルールはゆるいですか?

 いいえ。

 「Xだから大丈夫」「SNSだから関係ない」と考えないようにしましょう。

 XのようなSNSでも、投稿内容によっては読者の投資判断に影響を与えることがあります。

 また、投稿本文だけでなく、

  • プロフィール
  • 固定投稿
  • リプライ
  • DM
  • 外部サイトへのリンク

などを組み合わせて発信している場合は、発信全体を見ることも大切です。

 短い投稿だからこそ、強い言葉だけが目立ってしまうことにも注意しましょう。

Q8.YouTubeで「おすすめの暗号資産○選」と紹介するのはダメですか?

 「おすすめ○選」というタイトルだけで、直ちに問題になるとは限りません。

 ただし、タイトルやサムネイルだけでなく、動画全体の内容を見ることが重要です。

 たとえば、

「初心者におすすめの暗号資産3選」

というタイトルで、

「この3つを買っておけば大丈夫」

「今すぐ買うべき」

といった説明をしていれば、単なる特徴紹介とは違う印象になります。

 YouTubeでは、

タイトル → サムネイル → 動画本編 → 概要欄 → 固定コメント → 外部リンク

まで含めて確認する習慣をつけましょう。

Q9.ブログやnoteなら、詳しく説明しているので問題ないですか?

 ブログやnoteだから安全、というわけではありません。

 むしろ長い記事の場合は、記事全体を読んだときにどのようなメッセージになっているかを確認することが大切です。

 たとえば、

  1. 暗号資産の特徴を説明する
  2. 将来性について説明する
  3. 値上がりの可能性を強調する
  4. 他の商品より優れていると説明する
  5. 「今が買い時」と結論付ける

という構成になっていれば、読者には「購入を勧められている」と受け取られる可能性があります。

 記事を公開する前に、

「この記事を最後まで読んだ人は、どのような行動をしたくなるだろう?」

と考えてみるとよいでしょう。

Q10.暗号資産を紹介する前に、紹介先の会社まで調べる必要がありますか?

 はい。暗号資産関連サービスを紹介するのであれば、紹介先について確認する習慣をつけることをおすすめします。

 たとえば、

  • どの会社が運営しているのか
  • どのようなサービスなのか
  • 必要な登録を受けている事業者なのか
  • 自分が紹介しようとしている内容とサービスの実態が合っているか

などです。

 「企業から紹介してほしいと言われたから、そのまま紹介する」のではなく、自分でも確認してから発信することが大切です。

Q11.金融法務の知識がない初心者は、暗号資産について発信しない方がいいのでしょうか?

 そんなことはありません。

 最初から法律を完璧に理解する必要はありません。

 まずは、

  • 投資を強く勧める表現を避ける
  • 「絶対」「確実」などの断定を避ける
  • 広告・PRなら分かりやすく表示する
  • 紹介するサービスについて確認する
  • 分からないことをそのまま発信しない

といった基本的なことから始めましょう。

 そして、発信を続けながら少しずつルールを学んでいけば大丈夫です。

 大切なのは、「知らないから何をしてもいい」と考えないことです。

Q12.結局、初心者は発信前に何を確認すればいいですか?

 まずは、次の5つを確認してみてください。

 迷ったときは、

「これは情報を伝えているのか、それとも投資を勧めているのか?」

と一度立ち止まって考えてみましょう。

 それだけでも、発信内容を見直すきっかけになります。

Q13.「法律に違反していないか分からない」ときはどうすればいいですか?

 無理に自己判断して、そのまま公開する必要はありません。

 特に、

  • 特定の暗号資産の購入を強く勧める
  • 暗号資産関連サービスを広告として紹介する
  • 紹介料を受け取ってサービスを紹介する
  • LINEやDMなどで個別に投資についてアドバイスする
  • 有料で投資に関する情報を提供する

といったケースでは、単なる一般的な情報発信とは違う問題が関係する可能性があります。

 「何となく大丈夫だろう」と公開するのではなく、不安を感じた段階で専門家などに確認することも大切です。

Q&Aから覚えておきたいこと

 暗号資産について発信するとき、初心者の方が最初からすべてのルールを覚える必要はありません。

 まずは、

「正確な情報を伝える」

「投資を強く勧める表現を安易に使わない」

「広告・PRであることを分かりやすくする」

「紹介するサービスや会社を確認する」

という基本を意識してみましょう。

 そして、発信前にもう一度、

「この発信を読んだ人は、どのように受け取るだろう?」

と考えてみてください。

 投資情報発信におけるコンプライアンスは、難しい法律用語を覚えることから始まるのではありません。

 「発信する前に一度立ち止まる習慣」をつくること。

 それが、初心者にとっての最初の一歩です。

執筆者プロフィール

 金融法務コンサルタント。元行政書士として、IFA登録や投資助言・代理業登録の支援実績多数。
 現在は、ブログ・noteを通じて、金融ビジネスに関わる実務家向けに、制度解釈や実務上の注意点を中心とした情報発信を行っています。現在公開中の有料note記事は、金融法務note集で紹介していますので、ご興味のある方は、ご覧ください。

 本サイトでは、可能な限り一次情報・実務視点に基づいた解説を行っていますが、個別事案については一般論だけでは判断が難しいケースも少なくありません。そのような場合に限り、筆者が提供している金融法務サポートにおいて、制度上の位置付け整理やリスクの考え方についての整理支援を行っています。

本サイトでは、投資情報発信、投資助言・代理業、IFAビジネスに関する法務・コンプライアンス情報を解説しています。
ただし、個別の事業形態や状況によっては、情報だけでは判断が難しいケースもあります。そのような場合の補足的な選択肢として、コレクト金融法務コンサルタント事務所では、個別整理を目的とした金融法務サポートを行っています。

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参考資料・関連ページ

※ 本記事は、以下の一次資料・業界ガイドラインを踏まえて作成しています。

参考資料
金融庁:「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」説明資料
金融庁:「国会提出法案等」
衆議院:「第221回国会閣法第57号法律案等概要」

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