「僕なら買います」は大丈夫?|投資系YouTubeライブで気を付けたい表現

投資情報発信

 投資系YouTubeのライブ配信では、視聴者との会話や相場の実況を通じて、さまざまな発言が飛び交います。

 たとえば、チャートを見ながら「僕なら買いますね」と話したり、気になる銘柄について「これは上がると思います」とコメントしたりすることがあるでしょう。デイトレードを実況している配信者であれば、「今から入ります」「ここから反発すると思う」といった発言も珍しくありません。

 こうした発言は、配信者自身の相場観や取引方針を伝えるためのものかもしれません。しかし、リアルタイムで多くの視聴者が見ているライブ配信では、何気ない一言が、視聴者に特定の銘柄の購入や売却を促すように受け取られることもあります。

 では、「僕なら買います」と発言すること自体に問題があるのでしょうか。「これは上がると思います」といった相場予想や、「絶対に上がる」「間違いない」といった強い表現は、どのように考えればよいのでしょうか。

 投資情報の発信においては、特定の言葉を使ったかどうかだけで、法律上の評価が決まるわけではありません。発言の具体的な内容や前後の文脈、情報の提供方法などを踏まえて考える必要があります。

 だからといって、ライブ配信中の発言を過度に恐れ、相場について何も話せなくなる必要もありません。大切なのは、自分の相場観や取引を伝えることと、視聴者に特定の投資行動を勧めることとの違いを意識し、誤解を招きにくい伝え方を身につけることです。

 本記事では、「僕なら買います」「これは上がると思います」といった身近な表現から、断定的な言い回し、リアルタイムの売買発言、価格予想まで、投資系YouTubeライブで気を付けたい言葉選びについて解説します。

 普段の配信で何気なく使っている表現を振り返りながら、視聴者とのコミュニケーションを維持しつつ、金融法務上のリスクにも配慮した発信を考えていきましょう。

  1. 本記事の概要
    1. この記事のポイント(3行まとめ)
    2. 本記事の想定読者
    3. この記事を読むと分かること
  2. 第1章 ライブでは発言を事前に推敲できない
    1. ライブ配信ならではの発言リスク
    2. 自分の発言が視聴者にどう伝わるか
  3. 第2章 「買う」「売る」「上がる」などの表現
    1. 投資用語を使うこと自体が問題なのではない
    2. 一般的な相場解説と具体的な投資判断への働きかけ
  4. 第3章 「僕なら買います」という表現
    1. 自分の投資判断を話しているだけなら問題ないのか
    2. 「自分なら買う」と「視聴者にも買ってほしい」は違う
    3. 「個人的な意見です」と付け加えればよいのか
  5. 第4章 「これは上がると思います」という表現
    1. 相場予想を述べるときに意識したいこと
    2. 予想の根拠と前提を説明する
  6. 第5章 「絶対」「確実」「間違いない」などの表現
    1. 断定的な表現が与える印象
    2. 自信のある説明と、確実であるかのような説明を区別する
  7. 第6章 「今から入ります」というリアルタイム発言
    1. 自分の取引を実況する場合
    2. 自分の売買と視聴者の投資判断を混同させない
  8. 第7章 「○円まで行くと思う」という価格予想
    1. 具体的な価格目標を示す場合
    2. 価格予想の根拠や前提を伝える
  9. 第8章 視聴者に行動を促すように聞こえる表現
    1. 直接的な推奨だけが問題になるわけではない
    2. 発言全体を確認する
  10. 第9章 投資ライブで意識したい言葉選び
    1. 自分の相場観と視聴者への推奨を区別する
    2. 事実・予想・意見を区別する
    3. 断定的な表現に頼りすぎない
    4. 価格予想には根拠や前提を添える
    5. リアルタイムの売買発言に注意する
    6. ライブ中に強い表現を使った場合は、必要に応じて補足する
  11. 第10章 まとめ
  12. Q&A|投資系YouTubeライブでよくある疑問
    1. Q1. 投資系YouTubeライブで「僕なら買います」と発言するのは違法ですか?
    2. Q2. 「この株は上がると思います」といった相場予想は問題ありませんか?
    3. Q3. 「絶対に上がる」「今すぐ買うべき」といった表現は避けたほうがよいですか?
    4. Q4. 自分が実際に買った銘柄について「買いました」と話すだけなら問題ありませんか?
    5. Q5. 「投資は自己責任です」と伝えておけば、発言の法的リスクを避けられますか?
    6. Q6. ライブ配信中に、視聴者から「この株は上がりますか?」と聞かれたら、どう答えればよいですか?
    7. Q7. 法律上のリスクを抑えるために、投資系YouTuberは何を意識すればよいですか?
  13. 執筆者プロフィール
  14. 参考資料・関連ページ

本記事の概要

この記事のポイント(3行まとめ)

  • 「僕なら買います」「これは上がると思います」などの発言は、言葉だけで法律上の評価が決まるわけではない。
  • 発言の文脈や具体的な内容、視聴者への伝わり方を意識することが重要。
  • 事実・予想・意見を区別し、誤解を招きにくい表現を心掛ける。

本記事の想定読者

  • デイトレード実況や相場解説を行う投資系YouTuber
  • ライブ配信で自分の相場観や売買について発信している人
  • 投資情報発信における法律上の注意点を知りたい人

この記事を読むと分かること

  • 「僕なら買います」「絶対に上がる」などの表現で注意したいポイント
  • 相場予想やリアルタイムの売買発言を伝える際の考え方
  • 視聴者に誤解を与えにくい言葉選びと、ライブ配信で意識したい基本方針

第1章 ライブでは発言を事前に推敲できない

ライブ配信ならではの発言リスク

 投資情報を発信する方法には、ブログ、note、SNSへの投稿、編集済みのYouTube動画など、さまざまなものがあります。

 これらの方法では、投稿前に文章や映像を確認し、表現を修正することができます。一方、ライブ配信では、その場の状況に応じて発言することが多く、事前にすべての発言を確認することは困難です。

 特に、投資系YouTubeライブでは、次のような場面が考えられます。

  • 株価が急上昇し、思わず「まだまだ上がりそうですね」と発言する。
  • 視聴者から「この株は買いですか?」と聞かれ、即座に回答する。
  • 自分の取引について説明する中で、「ここは買い場だと思います」と話す。
  • 相場が急落し、「今のうちに売ったほうがいいかもしれません」とコメントする。

 配信者にとっては、その場の相場観を伝えただけでも、視聴者は自分の投資判断に役立つ情報として受け取る可能性があります。

 そのため、ライブ配信では、発言する前に法律上の問題がないかを一つひとつ検討するというよりも、普段から発言の仕方について基本的な方針を持っておくことが重要です。

自分の発言が視聴者にどう伝わるか

 ライブ配信中の発言を考える際には、配信者が何を意図していたかだけでなく、発言全体がどのような意味を持つかにも目を向ける必要があります。

 例えば、配信者がチャートを見ながら「ここは買いだと思います」と発言したとします。

 配信者は、自分の分析結果を説明したつもりかもしれません。しかし、視聴者にとっては「この銘柄を買うべきだという推奨」と受け取られる可能性もあります。

 もちろん、視聴者がどのように受け取ったかだけで、法律上の評価が自動的に決まるわけではありません。発言の具体的な内容や前後の説明、配信全体の状況などを踏まえて検討する必要があります。

 大切なのは、配信者自身の意図と、視聴者に伝わるメッセージが必ずしも一致するとは限らないことを理解しておくことです。

第2章 「買う」「売る」「上がる」などの表現

投資用語を使うこと自体が問題なのではない

 投資系YouTuberが相場を解説する場合、「買う」「売る」「上がる」「下がる」といった言葉を使うのは自然なことです。

 これらの言葉を使わずに株式市場について説明するのは、現実的ではありません。

 重要なのは、特定の言葉を使ったかどうかだけでなく、何について、どのような内容を伝えているのかという点です。

 例えば、次のような発言を考えてみましょう。

 上の表は、発言を検討する際の着眼点を示したものです。特定の表現が含まれているだけで、その発言の適法性が一律に決まるわけではありません。

 また、一般的な投資知識を説明する場合でも、発信の内容や方法によっては別の論点が生じる可能性があります。

一般的な相場解説と具体的な投資判断への働きかけ

 投資系YouTubeライブでは、一般的な相場解説と、特定の投資行動を勧めるような発言が混在しやすい点にも注意が必要です。

 例えば、次の2つの発言を比較してみましょう。

発言A

 「株価が上昇しているときでも、その後に下落する可能性はあります。移動平均線や出来高など、複数の要素を確認して相場を分析することが重要です」

発言B

 「この銘柄は今が買い時です。まだ買っていない人は、すぐに買ったほうがいいですよ」

 発言Aは、相場分析の考え方について一般的な説明をしています。一方、発言Bは、特定の銘柄について、視聴者に購入を促す内容を含んでいます。

 このように、相場について話している場合でも、説明の目的や具体性、視聴者への働きかけには違いがあります。

 ただし、一般的な情報提供と具体的な投資判断への助言との境界は、単純に「銘柄名を出したか」「買うように勧めたか」だけで判断できるものではありません。

 投資助言・代理業の登録要否についても、発言の一部だけで結論を出すのではなく、情報提供の内容や方法、契約・報酬との関係などを含めて検討する必要があります。

第3章 「僕なら買います」という表現

自分の投資判断を話しているだけなら問題ないのか

 本記事のタイトルにもしている「僕なら買います」という表現は、投資系YouTuberが使いやすい言い回しの一つでしょう。

 視聴者に直接「買ってください」と伝えているわけではなく、自分だったらどうするかを説明しているだけだと考えることもできます。

 しかし、「僕なら買います」と発言していれば、どのような状況でも問題がないというわけではありません。

 例えば、次のような場面を考えてみましょう。

 配信者が特定の銘柄のチャートを表示しながら、次のように発言したとします。

「この銘柄、ここまで下がってきましたね。そろそろ反発しそうです。僕なら買います」

この発言は、配信者自身の相場観を説明するものとも考えられます。

 一方で、視聴者が購入を検討している場面で同じ発言をすれば、購入を後押しするメッセージとして受け取られる可能性があります。

 さらに、その後に「皆さんも今のうちに買っておいたほうがいいですよ」と付け加えた場合には、自分の投資方針を説明するだけでなく、視聴者に購入を勧める内容が明確に含まれることになります。

 重要なのは、「僕なら」という言葉が含まれているかどうかだけでなく、発言全体がどのような意味を持つのかという点です。

「自分なら買う」と「視聴者にも買ってほしい」は違う

 自分の投資判断について説明することと、視聴者に同じ投資行動を勧めることは、区別して考える必要があります。

 例えば、次のような発言が考えられます。

 この表も、各発言の適法性を一律に判定するものではありません。あくまで、どのような点に注意して発言を検討するかを整理したものです。

 例えば、「僕なら買います」と発言した後に、購入する理由や分析の前提を説明する場合と、購入を急ぐように視聴者に呼びかける場合とでは、発言全体の意味合いが異なります。

 また、視聴者から「この株、買ったほうがいいですか?」と質問されたときに「僕なら買います」と答える場合には、質問への回答という文脈も考慮する必要があります。

 このような質問への対応については、本シリーズ第2回の「『この株、買ったほうがいい?』と聞かれたら?」でも取り上げています。

「個人的な意見です」と付け加えればよいのか

 投資情報を発信する人の中には、「これは個人的な意見です」「投資判断は自己責任でお願いします」と付け加えることで、法律上の問題を回避できると考える人もいるかもしれません。

 しかし、こうした断り書きを付ければ、発言内容にかかわらず問題がなくなるわけではありません。

 例えば、特定の銘柄について「これは個人的な意見ですが、今すぐ買えば確実に儲かります」と発言した場合、前半に断り書きがあるからといって、後半の断定的な内容がなくなるわけではありません。

 大切なのは、免責文言を付けることだけに頼るのではなく、発言そのものの内容や伝え方を適切に考えることです。

 自分の相場観を伝えるのであれば、どのような根拠からそのように考えているのか、どのような前提があるのかを説明することも、視聴者の誤解を防ぐうえで役立ちます。

第4章 「これは上がると思います」という表現

相場予想を述べるときに意識したいこと

 投資系YouTuberが相場を解説する際には、将来の値動きについて予想を述べることもあるでしょう。

 例えば、チャートの形状や出来高、企業の業績などを踏まえ、「この銘柄は上がると思います」と説明する場面です。

 将来の株価について予想を述べること自体を、一律に問題があるものとして扱うことは適切ではありません。

 一方で、相場の予想は、将来の結果が確定していることを意味するものではありません。分析に基づく見通しと、確実な結果であるかのような説明は区別する必要があります。

 例えば、次のような表現を比較してみましょう。

  • 「このチャートを見る限り、上昇に転じる可能性もありそうです」
  • 「この銘柄は、ここから上がると思います」
  • 「この銘柄は必ず上がります」

 1つ目は、一定の条件に基づく可能性を説明する表現です。2つ目は、上昇するという予想を比較的直接的に伝えています。3つ目は、将来の値動きを確実であるかのように伝える表現です。

 ただし、語尾が「思います」であれば安全で、「上がります」であれば直ちに問題になるという単純なものではありません。

 発言の前後にどのような説明があるのか、どのような根拠に基づいているのか、視聴者に何を伝えようとしているのかなどを踏まえて考える必要があります。

予想の根拠と前提を説明する

 相場予想を伝える際には、予想の結論だけでなく、その根拠や前提を説明することも重要です。

 例えば、次のような発言が考えられます。

 「この銘柄は、直近の高値を上抜ければ、上昇が続く可能性があると考えています。ただし、上値を抜けられずに反落する展開もあり得るため、出来高や値動きを確認したいところです」

 この発言では、単に上昇すると述べるのではなく、どのような条件を想定しているのか、別の展開も考えられることを説明しています。

 こうした説明は、視聴者が配信者の考え方を理解する助けになります。

 もっとも、根拠やリスクを説明していれば、どのような発言でも問題がなくなるというわけではありません。説明の仕方を工夫することは、発信内容をより正確に伝えるための取り組みとして位置付けるべきです。

 また、予想が外れる可能性を説明することは、視聴者に対して不確実性を伝えるうえでも役立ちます。

第5章 「絶対」「確実」「間違いない」などの表現

断定的な表現が与える印象

 ライブ配信では、視聴者の注目を集めようとしたり、相場について自信を持って説明しようとしたりする中で、強い表現を使ってしまうことがあります。

 例えば、次のような発言です。

  • 「この株は絶対に上がります」
  • 「ここで買えば確実に儲かります」
  • 「この銘柄が上がるのは間違いないです」
  • 「このタイミングで売れば損はしません」

 こうした表現は、将来の値動きや投資成果が確実であるかのような印象を与える可能性があります。

 しかし、株式市場では、さまざまな要因によって株価が変動します。分析に自信があったとしても、想定どおりの結果になるとは限りません。

 そのため、投資情報を発信する際には、実際の根拠や分析の確度に見合わない断定的な表現を避けることが重要です。

自信のある説明と、確実であるかのような説明を区別する

 ここで注意したいのは、自信を持って相場を解説すること自体が問題なのではないという点です。

 例えば、特定のテクニカル指標や企業業績について、自分の分析結果を明確に説明することは、投資情報発信の一部です。

 問題となり得るのは、根拠や不確実性を適切に踏まえず、利益が確実に得られるかのように伝えたり、損失が生じないかのように説明したりすることです。

 そのため、表現を検討する際には、次のような点を意識するとよいでしょう。

 右側の表現も、それだけで法律上の問題がなくなることを保証するものではありません。重要なのは、実際の分析や見通しに即した、正確で誤解を招きにくい説明をすることです。

 なお、金融商品取引法には、金融商品取引業者等による広告等に関する規制や、一定の場面における断定的判断の提供に関する規制などがあります。ただし、各規制の適用対象や要件は異なります。個人のライブ配信におけるすべての発言に、同じ規制がそのまま適用されると理解するのは適切ではありません。

 したがって、断定的な表現を検討する際にも、言葉の強さだけで法律上の結論を出すのではなく、発信者の立場や発信の内容、方法などに応じて判断する必要があります。

第6章 「今から入ります」というリアルタイム発言

自分の取引を実況する場合

 デイトレードを中心とする投資系YouTubeライブでは、配信者自身の取引をリアルタイムで伝える場面があります。

 例えば、次のような発言です。

  • 「今から買います」
  • 「ここでエントリーします」
  • 「今、買いました」
  • 「ここで利確します」
  • 「この水準で損切りします」

 これらは、自分自身の取引を視聴者に見せるための発言です。

 しかし、視聴者が同じ銘柄を取引している場合や、配信者の取引を参考にして売買する場合には、その発言が視聴者の投資判断に影響する可能性があります。

 特に、売買のタイミングを伝える発言と、銘柄の値動きについての説明が組み合わさる場合には、注意が必要です。

 例えば、次の2つの発言を比較してみましょう。

発言A

「私は今、この価格で買いました。自分の取引として、ここからの値動きを確認していきます」

発言B

「今が買い場です。皆さんも今すぐ入ったほうがいいですよ」

 発言Aは、自分の取引について説明する内容です。一方、発言Bは、視聴者に具体的な投資行動を勧める内容を含んでいます。

 もちろん、発言Aのように説明すれば常に問題がないという意味ではありません。自分の取引を伝える場合でも、その前後にどのような銘柄解説や推奨があるのか、配信全体としてどのような情報を提供しているのかを踏まえて考える必要があります。

自分の売買と視聴者の投資判断を混同させない

 自分が買った銘柄について話す場合には、視聴者が「配信者が買ったのだから、自分も買ったほうがよい」と考える可能性があります。

 特に、配信者が過去の利益実績を強調していたり、売買のタイミングを細かく実況していたりする場合には、視聴者が発言を強い判断材料として受け取ることも考えられます。

 そのため、自分の取引について説明するときは、何を伝えようとしているのかを意識することが重要です。

 例えば、次のような点を整理しておくとよいでしょう。

  • 自分が実際に行った取引の説明なのか。
  • その銘柄の値動きについて分析を説明しているのか。
  • 視聴者に同じ取引を勧める意図があるのか。
  • 発言全体として、視聴者の売買を促す内容になっていないか。

 自分の取引を実況することと、視聴者に対して具体的な投資判断を勧めることは、区別して考える必要があります。

 なお、実際の取引内容やポジションの公開、売買前後の情報発信に関する詳細な論点については、本シリーズ第4回で改めて取り上げる予定です。

第7章 「○円まで行くと思う」という価格予想

具体的な価格目標を示す場合

 投資系YouTubeライブでは、「この株は1,000円まで上がると思います」「年内に2,000円を目指す展開もありそうです」といった価格予想を述べることもあります。

 具体的な価格を示すことは、相場分析を説明する方法の一つです。しかし、価格目標だけが強調されると、視聴者がその価格に到達することを確実な見通しとして受け取ってしまう可能性があります。

 例えば、次のような発言を考えてみましょう。

発言A

「直近の高値を上抜ける展開になれば、1,000円付近まで上昇する可能性もあると考えています」

発言B

「この株は絶対に1,000円まで上がります。今のうちに買っておきましょう」

 発言Aは、一定の条件を前提にした価格予想です。一方、発言Bは、価格の到達を断定するだけでなく、購入を促す内容も含んでいます。

 このように、同じ価格目標を話題にしていても、発言の具体的な内容や伝え方は異なります。

価格予想の根拠や前提を伝える

 価格予想を述べる場合には、どのような分析に基づいているのかを説明することが重要です。

 例えば、次のような点が考えられます。

  • チャート上の節目や過去の高値を参考にしているのか。
  • 企業業績や業績見通しを踏まえているのか。
  • どのような条件が満たされれば、その価格に到達すると考えているのか。
  • 想定とは異なる値動きになった場合、どのような可能性があるのか。

 こうした点を説明することで、視聴者は価格目標だけでなく、配信者がどのような考え方で予想しているのかを理解しやすくなります。

 ただし、根拠を説明したからといって、価格予想が必ず正確になるわけではありません。また、根拠を添えれば、どのような価格予想でも法律上の問題がなくなるわけでもありません。

 価格予想を伝える際には、予想であることを明確にし、実際の分析や前提条件に即した説明を心掛けましょう。

第8章 視聴者に行動を促すように聞こえる表現

直接的な推奨だけが問題になるわけではない

 投資系YouTubeライブでは、「買ってください」「売ってください」と直接的に伝えなくても、視聴者に特定の行動を促すように受け取られる発言をすることがあります。

 例えば、次のような表現です。

  • 「このチャンスを逃さないでください」
  • 「まだ持っていない人は、そろそろ入ったほうがいいと思います」
  • 「今の水準で売るのはもったいないですよ」
  • 「ここで買わないと、後悔するかもしれません」
  • 「皆さんも同じように取引してみてください」

 これらの発言は、文脈によって意味合いが異なります。しかし、特定の銘柄や売買のタイミングについて使われると、視聴者に購入や売却などの具体的な投資行動を促すメッセージとして受け取られる可能性があります。

 特に、視聴者の不安や焦りを強く刺激する表現や、利益を逃すことへの恐怖をあおる表現には注意が必要です。

発言全体を確認する

 発言を検討するときには、単語だけを切り取るのではなく、次のような点を確認するとよいでしょう。

 例えば、「この銘柄は上昇する可能性があると思います」と述べる場合と、「この銘柄は上がるので、まだ買っていない人は今すぐ買ってください」と述べる場合とでは、視聴者への働きかけが異なります。

 もっとも、一般的な相場解説に見える発言でも、具体的な内容や提供方法によっては別の検討が必要になることがあります。

 また、視聴者から質問されて答えた場合だけでなく、配信者が自発的に発言した場合にも、発言の内容を検討することが重要です。

 視聴者との会話を避けることが目的ではありません。自分が何を伝えようとしているのかを明確にし、視聴者が誤解しにくい伝え方を意識することが大切です。

第9章 投資ライブで意識したい言葉選び

 ここまで、投資系YouTubeライブで使われるさまざまな表現について解説してきました。

 実際のライブ配信では、発言するたびに法律上の問題がないかを細かく検討することは難しいでしょう。そのため、普段から基本的な考え方を整理しておくことが重要です。

自分の相場観と視聴者への推奨を区別する

 自分がどのように相場を見ているのかを説明することと、視聴者に同じ投資行動を勧めることは、区別して考えましょう。

 例えば、自分が買いたいと考えている理由を説明する場合には、分析の根拠や前提を伝えることが考えられます。

 一方、視聴者に対して具体的な購入や売却を勧めるような発言をする場合には、その内容や提供方法について、より慎重に検討する必要があります。

事実・予想・意見を区別する

 投資情報を発信する際には、確認できる事実、自分の分析に基づく予想、自分自身の意見を混同しないことも重要です。

 例えば、次のように区別できます。

  • 事実: 「本日の終値は1,000円でした」
  • 分析・予想: 「この水準を上抜ければ、上昇が続く可能性があると考えています」
  • 個人的な意見: 「私は、この銘柄の今後の値動きに注目しています」

 もちろん、実際には事実と分析が組み合わさる場合もあります。しかし、何が確認された事実で、何が配信者自身の見通しなのかを明確にすることは、視聴者の理解を助けます。

断定的な表現に頼りすぎない

 「絶対」「確実」「間違いない」といった強い言葉は、視聴者の注目を集めるかもしれません。しかし、投資の結果が確実であるかのような印象を与える表現には注意が必要です。

 自信のある分析を伝えたい場合でも、どのような根拠があるのか、どのような条件を想定しているのかを説明することが重要です。

価格予想には根拠や前提を添える

 価格目標だけを伝えるのではなく、どのような分析に基づいているのかを説明しましょう。

 また、予想が外れる可能性や、前提条件が変わる可能性についても意識する必要があります。

リアルタイムの売買発言に注意する

 自分の取引を実況する場合には、自分の売買について説明しているのか、視聴者に同じ取引を勧めているのかを意識しましょう。

 売買のタイミングと銘柄についての説明が組み合わさる場合には、発言全体がどのような意味を持つのかを考えることが重要です。

ライブ中に強い表現を使った場合は、必要に応じて補足する

 ライブ配信では、意図せず強い表現を使ってしまうこともあるでしょう。

 その場合、発言を放置するのではなく、必要に応じて、予想の前提や自分の意図を補足することが考えられます。

 例えば、「絶対に上がります」と発言してしまった場合には、その後に「先ほどの表現は強すぎました。私としては、現在の分析から上昇の可能性を考えていますが、値動きが想定と異なる可能性もあります」と説明することが考えられます。

 ただし、後から補足すれば、先の発言による問題が必ず解消されるというわけではありません。そもそも誤解を招きにくい表現を心掛けるとともに、必要な場合には配信後の対応も検討することが大切です。

第10章 まとめ

 本記事では、投資系YouTubeライブで気を付けたい表現について解説しました。

 「僕なら買います」「これは上がると思います」「今から入ります」といった発言は、投資系YouTuberが相場観や取引を伝える際に使いやすい表現です。しかし、言葉だけを切り取って、その発言が問題になるかどうかを一律に判断することはできません。

 発言の具体的な内容、前後の文脈、視聴者への働きかけ、情報の提供方法などを踏まえて検討する必要があります。

 特に、次の3点を意識しておきましょう。

1. 言葉だけで判断しない

 「買う」「上がる」といった言葉を使ったかどうかだけでなく、発言全体がどのような意味を持つのかを考えることが重要です。

2. 自分の相場観と視聴者への推奨を区別する

 自分の分析や取引について説明する場合でも、視聴者に具体的な投資行動を勧める内容になっていないかを意識しましょう。

3. 事実・予想・意見を区別し、誤解を招きにくい表現を心掛ける

 予想の根拠や前提条件を説明し、将来の値動きや投資成果が確実であるかのような表現に頼りすぎないことが大切です。

 投資系YouTubeライブでは、視聴者との会話や相場実況を完全に避ける必要はありません。自分の考えを伝えながらも、視聴者にどのように受け取られるかを意識することが、継続的なライブ配信の土台になります。

 なお、実際の発言が投資助言・代理業の登録を必要とする業務に該当するかどうかは、特定の言葉を使ったかどうかだけでは判断できません。情報提供の内容や方法、契約・報酬との関係などを含めて検討する必要があります。

 普段の配信で何気なく使っている言葉を振り返り、視聴者とのコミュニケーションを維持しながら、正確で誤解を招きにくい情報発信を目指していきましょう。

Q&A|投資系YouTubeライブでよくある疑問

Q1. 投資系YouTubeライブで「僕なら買います」と発言するのは違法ですか?

 「僕なら買います」と発言しただけで、直ちに違法になるわけではありません。ただし、発言の前後関係や具体的な内容、視聴者にどのような投資判断を促すものとして伝わるかなどによって、法的な評価が変わる可能性があります。

 自分の投資判断を説明する場合でも、視聴者に特定の銘柄の購入を強く勧めるような発信になっていないか、注意することが大切です。

Q2. 「この株は上がると思います」といった相場予想は問題ありませんか?

 相場について自分の見通しや意見を述べること自体が、直ちに問題になるわけではありません。ただし、予想を確実な事実のように伝えたり、根拠が不十分なまま断定的な表現を用いたりすると、視聴者に誤解を与えるおそれがあります。

 予想を述べるときは、その根拠や前提条件を説明し、将来の値動きには不確実性があることも意識しましょう。

Q3. 「絶対に上がる」「今すぐ買うべき」といった表現は避けたほうがよいですか?

 こうした表現は、視聴者に値上がりが確実であるかのような印象を与えたり、特定の投資行動を強く促したりするおそれがあるため、慎重に扱う必要があります。

 特に、値動きが不確実であるにもかかわらず、確実性を強調する表現には注意が必要です。強い言葉で注目を集めることよりも、発言の根拠や不確実性を適切に伝えることを優先しましょう。

Q4. 自分が実際に買った銘柄について「買いました」と話すだけなら問題ありませんか?

 自分が実際に購入したという事実を伝えることと、視聴者にその銘柄の購入を勧めることは、区別して考える必要があります。

 購入した事実を説明する場合でも、購入理由や今後の見通しをどのように伝えるかによって、発信の受け取られ方は変わります。また、保有状況や売買のタイミングなど、視聴者の判断に影響し得る情報を発信する際は、誤解を招かない説明を心掛けましょう。

Q5. 「投資は自己責任です」と伝えておけば、発言の法的リスクを避けられますか?

 「投資は自己責任です」と注意喚起することには一定の意味がありますが、その一言だけですべての法的リスクを回避できるわけではありません。

 発信全体の内容や実態が重要であり、断定的な説明や特定の投資行動を強く促す発言が、注意書きを付けるだけで問題のないものになるとは限りません。注意書きに頼るのではなく、日頃の発言内容そのものを見直すことが大切です。

Q6. ライブ配信中に、視聴者から「この株は上がりますか?」と聞かれたら、どう答えればよいですか?

 将来の値動きを断定するのではなく、判断材料や相場を見るうえでの考え方を説明する方法が考えられます。

 例えば、「上がるかどうかは断定できませんが、私はこの指標や材料に注目しています」といった形で、自分の見方とその根拠を区別して伝えることができます。

 ただし、特定の銘柄について具体的な投資判断を助言するような対応には、発信の実態によって別途検討すべき法的な問題が生じる可能性があります。

Q7. 法律上のリスクを抑えるために、投資系YouTuberは何を意識すればよいですか?

 まずは、発言が事実の説明なのか、将来予測なのか、個人的な意見なのかを意識して区別することが重要です。そのうえで、予想を確実なものとして伝えないこと、発言の根拠や前提を説明すること、視聴者に誤解を与える表現を避けることを心掛けましょう。

 また、単に特定の言葉を避ければよいというわけではありません。ライブ配信全体の内容や視聴者とのやり取り、情報提供の方法などを踏まえて、自分の発信がどのように受け取られるかを継続的に確認することが大切です。

執筆者プロフィール

 金融法務コンサルタント。元行政書士として、IFA登録や投資助言・代理業登録の支援実績多数。
 現在は、ブログ・noteを通じて、金融ビジネスに関わる実務家向けに、制度解釈や実務上の注意点を中心とした情報発信を行っています。現在公開中の有料note記事は、金融法務note集で紹介していますので、ご興味のある方は、ご覧ください。

 本サイトでは、可能な限り一次情報・実務視点に基づいた解説を行っていますが、個別事案については一般論だけでは判断が難しいケースも少なくありません。そのような場合に限り、筆者が提供している金融法務サポートにおいて、制度上の位置付け整理やリスクの考え方についての整理支援を行っています。

本サイトでは、投資情報発信、投資助言・代理業、IFAビジネスに関する法務・コンプライアンス情報を解説しています。
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参考資料・関連ページ

※ 本記事は、以下の一次資料・業界ガイドラインを踏まえて作成しています。

参考資料
・金融庁:金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針VII. 監督上の評価項目と諸手続(投資助言・代理業)
・金融庁:投資運用業等登録手続ガイドブック
・金融庁:「投資運用業等 登録手続ガイドブック|2 登録の要否・種別」

関連ページ
・投資情報発信入門
・【基礎編】投資情報発信はどこから「金融規制の対象」になるのか?― 個人発信者が最初に知っておくべき基本ルール
・【基礎編】SNSで投資経験に基づく話をしても大丈夫?個人発信者が誤解しやすい3つのポイント
・【基礎編】『無料でやっていればOK』は本当か?投資情報発信と金融規制の基本的な考え方
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