YouTubeでデイトレードのライブ配信をしていると、実際に自分が売買した銘柄について、リアルタイムでコメントする場面があると思います。
例えば、「今、この銘柄を買いました」「ここで利益確定します」「この銘柄はまだ上がると思っています」といった発言です。
こうした発言は、自分自身の取引を視聴者に見せるための実況とも考えられます。一方で、視聴者からすれば、配信者がどの銘柄を買い、どのような相場観を持っているのかを知ることは、自分自身の投資判断を考える材料にもなります。
では、自分の売買を実況しながら銘柄について話すことと、視聴者に投資情報を提供することの間には、どのような違いがあるのでしょうか。
また、売買する直前に銘柄の魅力を説明したり、自分の保有ポジションを公開したりする場合には、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
投資系YouTubeライブでは、あらかじめ用意した原稿を読み上げるのではなく、相場の動きに合わせて発言することも少なくありません。そのため、配信者自身は単に取引の様子を見せているつもりでも、発言の内容やタイミングによっては、視聴者に特定の銘柄の売買を促すような情報提供になっている可能性があります。
もちろん、自分の取引を公開したり、保有銘柄についてコメントしたりすることが、直ちに違法になるわけではありません。また、銘柄について発言したという理由だけで、直ちに投資助言・代理業の登録が必要になるわけでもありません。
重要なのは、単に何を発言したかだけでなく、どのような目的で、どのような内容を、どのような形で視聴者に提供しているのかという点です。
この記事では、投資系YouTubeライブでデイトレードを実況する場面を想定し、「今、買いました」「今、売りました」といった発言から、売買前の銘柄解説、保有ポジションの公開まで、具体的なケースを取り上げながら注意点を解説します。
自分自身の売買をコンテンツにしている投資系YouTuberの方は、日々のライブ配信を振り返りながら、発信内容を見直すための参考にしてください。
- 本記事の概要
- 第1章 デイトレード実況も投資情報発信の一つ
- 第2章 「今、買いました」と発言するときの注意点
- 第3章 「今、売りました」と発言するときの注意点
- 第4章 自分のポジションを公開する場合
- 第5章 売買直前に銘柄について話す場合
- 第6章 個々の発言だけでなく、配信全体の流れを振り返ることが大切
- 第7章 自分の取引を見せることと投資助言・代理業の違い
- 第8章 視聴者が同じ取引をする可能性をどう考えるか
- 第9章 デイトレード実況者が意識したい発信ルール
- 第10章 まとめ|「自分の売買」と「視聴者への情報提供」を区別する
- よくある質問(Q&A)
- Q1.YouTubeライブで「今、この銘柄を買いました」と話すだけでも、投資助言・代理業の登録が必要になりますか?
- Q2.「僕ならこの株を買います」「自分は買いだと思います」と発言するのは問題ありませんか?
- Q3.自分の保有銘柄や買値・売値を公開してもよいのでしょうか?
- Q4.銘柄を買う直前に、その銘柄の魅力や上昇の可能性について話してもよいのでしょうか?
- Q5.視聴者から「この株は今、買ったほうがいいですか?」と質問された場合、どう答えればよいですか?
- Q6.無料で配信していて、視聴者から個別の相談料も受け取っていなければ、投資助言・代理業の登録は不要ですか?
- Q7.自分の配信が投資助言・代理業に該当するか判断できない場合、何を確認すればよいですか?
- 執筆者プロフィール
- 参考資料・関連ページ
本記事の概要
この記事のポイント3行まとめ
- 自分の売買を実況することと、視聴者に銘柄の売買を勧めることは区別して考える必要がある。
- 買付け・売却の実況や保有ポジションの公開では、発言内容やタイミングに注意する。
- 投資助言・代理業への該当性は、発言の一部だけでなく、情報提供の内容や方法などを踏まえて検討する。
想定読者
- デイトレードの様子をYouTubeライブで配信している方
- 自分の売買や保有銘柄について、リアルタイムでコメントしている投資系YouTuber
- ライブ配信における投資情報発信の法務上の注意点を知りたい方
この記事を読むと分かること
- 売買実況と、視聴者への投資情報の提供との違い
- 買付け・売却の実況や保有銘柄について話す際の注意点
- 投資助言・代理業への該当性を考えるうえで確認したいポイント
第1章 デイトレード実況も投資情報発信の一つ
自分の取引を見せることがコンテンツになる
デイトレード実況を中心とする投資系YouTubeライブでは、配信者自身の取引状況や相場観がコンテンツになります。
例えば、次のような内容が考えられます。
- 現在取引している銘柄や売買状況を実況する
- 買付けや売却を行った理由を説明する
- チャートや株価の動きについてコメントする
- 保有銘柄の今後の見通しを話す
- 取引で利益が出た場合や損失が生じた場合に、その理由を振り返る
こうした配信は、投資教育を目的とした講義とは異なり、相場の動きや実際の取引を見せること自体がコンテンツの中心になっている場合があります。
しかし、投資教育を目的としていないからといって、金融法務上の注意点がなくなるわけではありません。
配信者自身の取引を紹介するだけのつもりでも、銘柄の分析や評価、売買のタイミングに関する説明が加われば、視聴者にとっては投資判断の参考となる情報が提供されていることになります。
「取引の実況」と「銘柄についての情報提供」は重なり得る
例えば、ある銘柄を買い付けた際、次の2つの発言を比較してみましょう。

前者は、自分が行った取引の事実を伝える発言です。後者は、自分の取引を紹介するだけでなく、銘柄の見通しを説明し、買付けを勧めるような内容になっています。
もちろん、この比較だけで個々の発言の法的な評価が決まるわけではありません。しかし、同じデイトレード実況でも、発言内容によって視聴者に提供する情報の性質が異なり得ることは理解しておきたいポイントです。
自分の売買を公開しているという形式だけで判断せず、配信の中でどのような情報を提供しているのかを意識することが大切です。
第2章 「今、買いました」と発言するときの注意点
自分の買付けを報告する発言
デイトレード実況では、買付けを行ったタイミングで「今、買いました」と発言することがあります。
この発言は、基本的には自分自身の取引状況を視聴者に伝えるものです。
ただし、その前後にどのような説明があるかによって、発言全体の意味合いは変わり得ます。
例えば、次のようなケースです。

ここで重要なのは、「買いました」という言葉を使ってはいけないということではありません。
自分の取引を報告する発言と、視聴者に対して特定の銘柄の買付けを勧める発言とでは、情報提供の性質が異なるという点です。
「自分は買った」と「視聴者も買うべき」は別の話
配信者が実際に買い付けた銘柄について話す場合、視聴者はその発言を参考にすることがあります。
特に、配信者の取引実績や相場分析を信頼している視聴者であれば、「この人が買ったのだから、自分も買ったほうがよいのではないか」と考えるかもしれません。
しかし、配信者自身の投資判断が、そのまま視聴者に適した投資判断になるとは限りません。
配信者と視聴者では、投資経験、資金状況、保有期間、許容できる損失などが異なる可能性があるからです。
そのため、配信者としては、自分の売買を報告することと、視聴者に同じ売買を勧めることを区別しておく必要があります。
また、「投資は自己責任です」と付け加えれば、どのような発言をしても問題がなくなるわけではありません。免責的な注意書きよりも、実際に提供している情報の内容や発信方法が重要です。
第3章 「今、売りました」と発言するときの注意点
売却や利益確定の実況にも注意する
デイトレード実況では、買付けだけでなく、売却や利益確定、損切りについてもリアルタイムで発言することがあります。
例えば、次のような発言です。
- 「今、利益確定しました」
- 「ここで損切りします」
- 「思ったほど値動きがよくないので売りました」
- 「この銘柄はもう売ったほうがよいと思います」
- 「私は売ったので、皆さんも逃げたほうがいいです」
自分の売却を伝えることと、視聴者に売却を勧めることは同じではありません。
一方で、売却の理由を説明する際に、銘柄の先行きについて断定的な見通しを述べたり、視聴者の売却を促したりする場合には、発言の性質が変わる可能性があります。
例えば、「私は利益確定しました」という発言と、「この銘柄はこれから急落するので、今すぐ売ってください」という発言では、視聴者に伝えている内容が異なります。
後者は、単なる取引状況の報告ではなく、銘柄の見通しを示し、視聴者に具体的な行動を促す内容になっています。
損切りの実況と下落予想を区別する
損切りを行った場合にも、発言の内容を意識する必要があります。
例えば、「自分が想定していた価格を下回ったので損切りしました」という発言は、自分の取引ルールや売買判断を説明するものです。
これに対して、「この銘柄はこれから下がり続けるので、皆さんも今すぐ売ったほうがいいです」という発言は、視聴者に対して銘柄の見通しを示し、売却を勧める趣旨を含んでいます。
もちろん、相場の見通しを説明すること自体が、直ちに問題になるわけではありません。
ただし、売却の実況をきっかけとして、視聴者に特定の売買判断を勧めるような情報提供を行っている場合には、その内容や提供方法を慎重に確認することが大切です。
第4章 自分のポジションを公開する場合
保有銘柄や取得価格を公開する
投資系YouTuberの中には、現在保有している銘柄や取得価格、保有数量などを公開している人もいるでしょう。
こうした情報は、配信者がどのような取引を行っているのかを視聴者に伝える材料になります。
一方で、視聴者がその情報を参考にして、自分自身の売買を判断する可能性もあります。
例えば、次のような発言を考えてみましょう。

保有銘柄を公開すること自体と、その保有状況を根拠に視聴者へ買付けを勧めることは、区別して考える必要があります。
含み益を強調するときにも気を付ける
例えば、保有銘柄が値上がりした際に「この銘柄で大きな利益が出ています」と発言することは、取引実績を紹介する一つの方法です。
しかし、利益が出たことを強調しながら、「この銘柄を買えば、皆さんも同じように利益を狙えます」と説明すれば、視聴者に利益を期待させ、買付けを促すような情報提供になる可能性があります。
また、含み益や利益確定の実績だけを繰り返し紹介すると、視聴者がその取引のリスクや損失の可能性を十分に理解できないことも考えられます。
取引実績を紹介する場合には、実績の示し方が誤解を招かないか、利益だけを過度に強調していないかという点にも目を向けましょう。
自分のポジションと発言の関係を意識する
配信者が保有銘柄についてコメントする場合、自分のポジションと銘柄に対する評価が結び付いていることがあります。
そのため、保有状況を公開しているかどうかだけでなく、保有しているという事実をどのように銘柄の評価や推奨に結び付けているかを考えることが重要です。
自分のポジションを公開することを一律に避ける必要があるという話ではありません。取引状況の開示と、視聴者に投資判断を促すような情報提供を区別しながら、発信内容を組み立てることが大切です。
第5章 売買直前に銘柄について話す場合
発言のタイミングによって伝わり方が変わる
デイトレード実況では、銘柄について説明した直後に、自分の売買を実況することがあります。
例えば、次のような流れです。
- 「この銘柄は業績がよく、チャートの形も強いですね」
- 「この水準を上抜ければ、さらに上昇する可能性がありそうです」
- 「今、買いました」
このような配信では、銘柄についての分析と自分の買付けが連続しているため、視聴者には一体の情報として受け取られる可能性があります。
もちろん、銘柄について説明した直後に買い付けたというだけで、直ちに問題が生じるわけではありません。
ただし、銘柄の魅力を説明したうえで自分の買付けを示す場合には、単に取引の様子を見せているのか、それとも銘柄の買付けを視聴者に勧めるような情報提供になっているのかを意識する必要があります。
売買の直前に銘柄を推奨するような発言をしていないか
特に注意したいのは、売買の直前に、視聴者に対して具体的な行動を促すような発言をする場合です。
例えば、次のようなケースです。

ライブ配信では、発言を事前に推敲する時間が十分にないこともあります。そのため、相場の動きに合わせて話すうちに、銘柄の解説と自分の売買の報告が一体となることがあります。
こうした特徴を踏まえ、配信者は発言のタイミングだけでなく、発言内容や前後の文脈にも注意を払うことが大切です。
売買前・売買中・売買後の3段階で考える
自分の売買を実況する場合には、次の3段階に分けて発言を振り返ると、注意点を整理しやすくなります。

このように整理することで、個々の発言だけでなく、配信全体の流れを振り返ることができます。
第6章 個々の発言だけでなく、配信全体の流れを振り返ることが大切
保有している銘柄の見通しを話す
自分が保有している銘柄について、今後の株価や業績の見通しを説明することも、投資系YouTubeライブではよくある場面です。
例えば、次のような発言が考えられます。
- 「この銘柄は、今後の業績に注目しています」
- 「私は保有していますが、株価がどう動くかを見守りたいと思います」
- 「この銘柄はまだ上昇する余地があると考えています」
- 「私も保有しているので、今から買うのはおすすめです」
これらの発言は、銘柄についての評価や自分の保有状況との関係で、伝える内容が異なります。
特に、自分が保有していることを根拠に、視聴者にも買付けを勧めるような発言をする場合には、単なる保有状況の開示とは異なる性質を持ち得ます。
保有銘柄への評価と、視聴者への推奨を区別する
配信者が自分の保有銘柄について肯定的な見通しを話すこと自体が、直ちに問題になるわけではありません。
ただし、保有しているという事実を利用して銘柄の魅力を強調したり、視聴者に同じ銘柄を買うよう促したりする場合には、どのような情報を提供しているのかを確認する必要があります。
また、保有銘柄の見通しを話す場合には、予想と確定した事実を区別し、将来の株価について不確実性があることにも配慮した表現を心掛けましょう。
例えば、「今後の業績に期待しています」という見解の表明と、「この銘柄は必ず上がります」という断定的な表現では、視聴者に与える印象が大きく異なります。
前回の記事で取り上げた表現上の注意点とも関係しますが、今回は特に、保有銘柄について話すことと、自分のポジションを背景に視聴者へ投資判断を促すことの違いを意識することが重要です。
第7章 自分の取引を見せることと投資助言・代理業の違い
投資助言・代理業は、発言の一部だけで判断できない
ここまで、デイトレード実況における買付け・売却の報告、ポジションの公開、売買前の銘柄解説などを見てきました。
では、こうした発信は、金融商品取引法上の投資助言・代理業に該当するのでしょうか。
この点を考えるうえでは、投資助言・代理業の制度を正しく理解する必要があります。
金融商品取引法上の投資助言業務は、投資顧問契約に基づいて、有価証券の価値等や金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に関する助言を行う業務として定められています。投資助言・代理業には、投資顧問契約や投資一任契約の締結の代理・媒介も含まれます。
したがって、単に銘柄について話した、買付けや売却を実況した、という理由だけで、直ちに投資助言・代理業に該当すると結論付けることはできません。
一方で、自分の取引を見せているだけだと説明すれば、どのような情報提供であっても登録が不要になるわけではありません。
実際の業務内容や、助言の提供方法、契約や報酬の関係などを踏まえ、制度上の要件に照らして検討する必要があります。
不特定多数に向けた情報提供と、個別性の高い助言
金融庁の登録手続ガイドブックでは、一般的な情報提供にとどまる場合や、投資助言業務に対する実質的な報酬が支払われない場合など、投資助言・代理業の登録が不要となる可能性があるケースについても説明されています。
また、金融庁の監督指針では、不特定多数の者が随時に購入できる方法による投資情報等の提供について、登録を要しない場合がある一方、インターネットを利用していても、個別性・相対性の高い情報を提供する場合などには登録が必要となり得る旨が示されています。
つまり、インターネット上で発信していることや、不特定多数が視聴できることだけをもって、すべてのケースが同じように扱われるわけではありません。
例えば、一般公開されたライブ配信で相場全体の動向や銘柄の一般的な特徴を解説するケースと、特定の視聴者の状況に応じて個別の投資判断について継続的に助言するケースとでは、検討すべき事情が異なります。
ただし、無料の公開配信であれば必ず登録が不要になるという意味ではありません。提供する情報の性質や、報酬・契約関係、実際のサービスの仕組みなどを総合的に確認する必要があります。
デイトレード実況では何を確認すべきか
投資系YouTuberが自分の配信を振り返る場合には、次のような点を確認するとよいでしょう。

これらは、配信者自身が発信の実態を整理するための確認項目です。表の各項目だけで登録の要否が決まるわけではありません。
特に、無料ライブで銘柄を紹介しながら、有料会員向けには具体的な売買タイミングを案内している場合など、無料配信と有料サービスが一体となっているケースでは、サービス全体の内容を確認する必要があります。
また、登録の要否について疑問がある場合には、発言の一部だけを切り取って判断せず、実際の配信内容や関連サービスの仕組みを整理したうえで、金融商品取引法に詳しい専門家などに相談することも検討しましょう。
第8章 視聴者が同じ取引をする可能性をどう考えるか
自分の発言が視聴者に与える影響を意識する
デイトレード実況では、配信者が自分の取引を公開することで、視聴者が同じ銘柄を売買したくなる場合があります。
特に、配信者が高い人気や信頼を得ている場合、その発言は視聴者の投資判断に大きな影響を与える可能性があります。
例えば、配信者が「今、この銘柄を買いました」と発言した直後に、視聴者が同じ銘柄を買い付けることが考えられます。
しかし、配信者と視聴者では、取引に使える資金や売買のタイミング、リスク許容度などが異なります。配信者が利益を得たとしても、視聴者が同じ結果を得られるとは限りません。
そのため、配信者は、自分の取引を紹介する際に、視聴者がどのように受け取る可能性があるかを意識することが大切です。
利益だけでなく、リスクや不確実性にも配慮する
例えば、利益確定した場面だけを繰り返し紹介すると、視聴者には、配信者が取引で継続的に利益を上げているような印象が伝わる可能性があります。
実際には、損失が生じる取引もあれば、相場環境によって同じ手法が通用しなくなる場合もあります。
取引実績や相場観を紹介する場合には、利益だけを強調していないか、将来の値動きを確実であるかのように説明していないかを振り返りましょう。
また、「投資は自己責任です」という注意書きを設けることだけでなく、配信の内容そのものが視聴者に誤解を与えないかという観点も重要です。
視聴者への配慮と法的な判断は区別する
視聴者が配信者の発言を参考にする可能性を意識することは、適切な情報発信を行ううえで重要です。
ただし、視聴者が実際に売買したかどうかや、発言をどのように受け取ったかだけで、投資助言・代理業への該当性が決まるわけではありません。
法的な判断においては、実際の業務内容や情報提供の方法などを踏まえる必要があります。
したがって、視聴者への配慮は、法律上の判断を置き換えるものではなく、発信の内容や方法を見直すための重要な視点として位置付けるとよいでしょう。
第9章 デイトレード実況者が意識したい発信ルール
ここまでの内容を踏まえ、日々のライブ配信で意識したいポイントを整理します。
① 自分の取引状況の説明と、視聴者への推奨を区別する
「今、買いました」「利益確定しました」といった発言は、自分の取引状況を説明するものです。
一方で、「皆さんも買いましょう」「今すぐ売ったほうがいいです」といった発言は、視聴者の売買行動を促す趣旨を含みます。
自分の取引を紹介する際には、どこまでが取引状況の説明で、どこからが視聴者への投資判断の提示になっているのかを意識しましょう。
② 売買直前の銘柄解説に注意する
銘柄の分析を説明した直後に、自分の売買を実況する場合には、発言全体がどのように受け取られるかを考えましょう。
特に、買付けや売却を視聴者に勧めるような説明をしていないか、銘柄の見通しを過度に断定していないかを確認することが大切です。
③ 保有ポジションと銘柄評価の関係を意識する
自分の保有銘柄を紹介する場合には、保有しているという事実と、銘柄に対する評価を区別して説明しましょう。
また、自分のポジションを根拠に視聴者へ売買を勧めるような発言になっていないかにも注意が必要です。
④ 利益や将来の見通しを過度に強調しない
利益が出た取引を紹介する場合でも、将来の利益が保証されているかのような印象を与えないようにしましょう。
相場の見通しを説明するときには、予想と事実を区別し、価格変動には不確実性があることを踏まえた発言を心掛けます。
⑤ 配信全体と関連サービスを振り返る
個々の発言だけでなく、配信全体でどのような情報を提供しているかを確認しましょう。
また、無料配信のほかに有料会員向けの情報提供や個別相談などを行っている場合には、それらのサービスを含めた実態を整理することも重要です。
配信前・配信中に確認したいチェックリスト
- □ 自分の売買状況の説明と、視聴者に向けた銘柄の推奨を区別している
- □ 付け・売却の実況に、視聴者の行動を促すような発言が加わっていないか確認する
- □ 売買直前の銘柄解説と、その後の取引実況との関係を意識している
- □ 保有銘柄の紹介では、自分のポジションと銘柄評価の関係を意識している
- □ 利益だけでなく、損失や取引上のリスクについても適切に説明している
- □ 配信全体の内容や提供方法が、どのような情報提供になっているかを振り返っている
このチェックリストは、各項目にチェックが付いていれば法的に問題がないと保証するものではありません。日々の発信を見直すための目安として活用してください。
第10章 まとめ|「自分の売買」と「視聴者への情報提供」を区別する
デイトレード実況を中心とする投資系YouTubeライブでは、自分自身の売買状況の説明と、銘柄に関する情報提供が一つの配信の中で混在することがあります。
「今、買いました」「今、売りました」といった発言だけで、一律に問題の有無を判断することはできません。発言の内容やタイミング、前後の文脈、配信全体の内容などを踏まえて考える必要があります。
また、自分の取引を公開することや、保有銘柄についてコメントすること自体を、直ちに違法と考える必要もありません。
一方で、自分の売買を実況しているという理由だけで、どのような情報提供も問題がないと考えることも適切ではありません。
特に、銘柄の見通しを説明しながら売買を実況する場合や、自分のポジションを背景に視聴者へ売買を勧める場合には、発信の実態を慎重に確認することが大切です。
投資助言・代理業への該当性についても、単に発言の一部だけで判断するのではなく、実際の業務内容や情報提供の方法、契約・報酬の関係などを踏まえて検討する必要があります。
投資系YouTuberにとって、自分の取引をコンテンツにすることは、配信の個性や魅力を生み出す方法の一つです。その魅力を生かしながら、視聴者に誤解を与えない情報発信を行うためにも、普段の発言や配信の流れを定期的に振り返ってみましょう。
自分自身の売買を見せることと、視聴者に投資判断に関する情報を提供すること。この二つの違いを意識することが、デイトレード実況を継続していくうえでの重要なポイントです。
よくある質問(Q&A)
Q1.YouTubeライブで「今、この銘柄を買いました」と話すだけでも、投資助言・代理業の登録が必要になりますか?
A.その発言だけで、直ちに登録が必要になるとは限りません。
自分が実際に行った売買を実況することと、視聴者に特定の銘柄の売買を勧めることは、区別して考える必要があります。
ただし、発言の前後で視聴者に購入を勧めていたり、具体的な売買判断を継続的に提供していたりする場合には、配信全体の内容やサービスの提供方法などを踏まえた検討が必要です。
Q2.「僕ならこの株を買います」「自分は買いだと思います」と発言するのは問題ありませんか?
A.自分の考えを述べる発言であっても、文脈や伝え方に注意が必要です。
自分の投資判断や相場観を説明することと、視聴者に特定の銘柄の購入を勧めることは、必ずしも同じではありません。
一方で、銘柄の特徴や購入理由を説明しながら、視聴者に具体的な売買を促すような発信をしている場合には、単なる個人的な感想とは異なる評価につながる可能性があります。発言の一部だけで判断せず、配信全体の内容を意識しましょう。
Q3.自分の保有銘柄や買値・売値を公開してもよいのでしょうか?
A.保有銘柄や売買価格を公開すること自体が、直ちに問題になるわけではありません。
ただし、保有状況を公開する際には、視聴者がその情報をどのように受け取るかにも注意が必要です。
例えば、保有銘柄を紹介しながら購入を強く推奨する場合や、売買のタイミングに合わせて視聴者の取引を促す場合には、発信内容を慎重に確認する必要があります。また、取引状況を公開する際には、実際の取引内容と説明に食い違いが生じないようにしましょう。
Q4.銘柄を買う直前に、その銘柄の魅力や上昇の可能性について話してもよいのでしょうか?
A.自分の売買と銘柄に関する説明が重なる場面では、特に慎重な対応が求められます。
買付けの直前に好材料や値上がりの可能性を強調すると、視聴者に購入を促す発信として受け取られることがあります。
そのため、銘柄について話す際には、自分の投資判断を説明しているのか、視聴者に売買を勧めているのかを意識することが大切です。価格変動の可能性や投資リスクについても、偏りなく伝えるようにしましょう。
Q5.視聴者から「この株は今、買ったほうがいいですか?」と質問された場合、どう答えればよいですか?
A.個別の売買を安易に指示するのではなく、自分の見方や判断材料を説明する形を意識しましょう。
例えば、銘柄を購入するかどうかを視聴者に代わって判断するような回答や、特定の売買を直接促す回答は慎重に扱う必要があります。
相場環境や企業業績など、自分が判断の材料としている情報を説明する方法も考えられます。ただし、表現を「参考情報」や「個人的な見解」と言い換えれば必ず問題がなくなるわけではありません。実際の回答内容や配信全体の運営方法を踏まえて考えることが重要です。
Q6.無料で配信していて、視聴者から個別の相談料も受け取っていなければ、投資助言・代理業の登録は不要ですか?
A.無料であることだけを理由に、登録が不要と判断することはできません。
投資助言・代理業への該当性を検討する際には、発信内容だけでなく、情報提供の方法や契約関係、報酬の有無など、サービス全体の実態を確認する必要があります。
例えば、無料のライブ配信を入口として有料コミュニティや個別サービスへ誘導している場合には、無料配信だけを切り離して考えるのではなく、関連するサービス全体を整理することが大切です。
Q7.自分の配信が投資助言・代理業に該当するか判断できない場合、何を確認すればよいですか?
A.個々の発言だけでなく、配信内容とサービス全体の仕組みを整理することが重要です。
まずは、次のような点を確認してみましょう。
- 配信でどのような銘柄情報や売買判断を伝えているか
- 視聴者に具体的な購入・売却を勧めているか
- ライブ配信以外に、個別相談や有料コミュニティなどを提供しているか
- 料金や報酬を受け取る仕組みがあるか
- 配信内容と有料サービスの間に、どのような関係があるか
これらを整理しても判断が難しい場合は、金融商品取引法に詳しい専門家への相談も検討しましょう。登録の要否は、単一の発言や形式だけでなく、実際の業務内容に即して慎重に判断する必要があります。
執筆者プロフィール
金融法務コンサルタント。元行政書士として、IFA登録や投資助言・代理業登録の支援実績多数。
現在は、ブログ・noteを通じて、金融ビジネスに関わる実務家向けに、制度解釈や実務上の注意点を中心とした情報発信を行っています。現在公開中の有料note記事は、金融法務note集で紹介していますので、ご興味のある方は、ご覧ください。
本サイトでは、可能な限り一次情報・実務視点に基づいた解説を行っていますが、個別事案については一般論だけでは判断が難しいケースも少なくありません。そのような場合に限り、筆者が提供している金融法務サポートにおいて、制度上の位置付け整理やリスクの考え方についての整理支援を行っています。
本サイトでは、投資情報発信、投資助言・代理業、IFAビジネスに関する法務・コンプライアンス情報を解説しています。
ただし、個別の事業形態や状況によっては、情報だけでは判断が難しいケースもあります。そのような場合の補足的な選択肢として、コレクト金融法務コンサルタント事務所では、個別整理を目的とした金融法務サポートを行っています。
参考資料・関連ページ
※ 本記事は、以下の一次資料・業界ガイドラインを踏まえて作成しています。
参考資料
・金融庁:金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針VII. 監督上の評価項目と諸手続(投資助言・代理業)
・金融庁:投資運用業等登録手続ガイドブック
・金融庁:「投資運用業等 登録手続ガイドブック|2 登録の要否・種別」
関連ページ
・投資情報発信入門
・【基礎編】投資情報発信はどこから「金融規制の対象」になるのか?― 個人発信者が最初に知っておくべき基本ルール
・【基礎編】SNSで投資経験に基づく話をしても大丈夫?個人発信者が誤解しやすい3つのポイント
・【基礎編】『無料でやっていればOK』は本当か?投資情報発信と金融規制の基本的な考え方
・【基礎編】個人の投資情報発信者が安心して投資情報発信を続けるための工夫
・YouTubeで投資ライブをするときの法律上の注意点|デイトレ実況・視聴者との会話はどこまでOK?
・「この株、買ったほうがいい?」と聞かれたら?|投資系YouTubeライブで視聴者の質問に答えるときの注意点
・「僕なら買います」は大丈夫?|投資系YouTubeライブで気を付けたい表現

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