投資系YouTubeライブを続けていると、チャンネルの成長に伴って、企業やサービス提供者から広告・スポンサー案件の依頼を受ける機会が出てくることがあります。
例えば、証券会社や暗号資産関連サービスの紹介、投資スクールのPR、金融関連商品の広告、アフィリエイトリンクを利用したサービスの紹介などです。
こうした企業案件は、投資系YouTuberにとって重要な収益化の手段の一つです。しかし、一般的な商品紹介とは異なり、投資に関連する商品やサービスを取り扱う場合には、広告表示だけでなく、金融商品取引法などの金融関連法令にも注意する必要があります。
特に気を付けたいのが、スポンサーから報酬や提供を受けているにもかかわらず、その関係を視聴者に十分に伝えないままサービスを紹介してしまうケースです。
また、広告案件であっても、配信者自身の感想や評価を交えて紹介することは珍しくありません。しかし、企業から依頼を受けて行う紹介と、配信者が自主的に行う情報発信とでは、その法的な位置付けが異なる場合があります。
例えば、ライブ配信中に証券会社の口座開設を勧めたり、暗号資産取引サービスの利用を紹介したりする場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。また、アフィリエイト報酬を受け取る場合も、通常のサービス紹介と同じように考えてよいのでしょうか。
本記事では、投資系YouTubeライブにおける広告・スポンサー案件について、PR表示やアフィリエイトの基本から、金融商品・金融サービスを紹介するときの注意点までを整理します。
企業案件を受ける際に確認しておきたいポイントを理解し、視聴者との信頼関係を損なわない広告・PR活動を行うための参考にしてください。
- 本記事の概要
- 第1章 投資系YouTuberの収益化にはどんな方法がある?
- 第2章 YouTubeライブと企業案件
- 第3章 スポンサー提供を受けている場合
- 第4章 PR・広告であることをどう明示するか
- 第5章 アフィリエイトを利用する場合
- 第6章 金融商品・金融サービスを紹介する場合
- 第7章 「自分の感想」と「広告」の境界
- 第8章 視聴者に誤解を与えない広告表示
- 第9章 案件を受ける前に確認したいポイント
- 第10章 まとめ
- よくある質問(Q&A)
- Q1.企業から報酬を受け取らず、商品やサービスを無償提供された場合もPR表示は必要ですか?
- Q2.ライブ配信の概要欄に「PR」と記載しておけば、広告表示として十分ですか?
- Q3.アフィリエイトリンクをYouTubeの概要欄に掲載するだけでも、広告表示は必要ですか?
- Q4.企業案件であっても、自分が実際に利用した感想を話すのであれば問題ありませんか?
- Q5.証券会社や暗号資産交換業者のアフィリエイトを行うには、投資助言・代理業の登録が必要ですか?
- Q6.スポンサー企業から指定された広告文や台本は、そのまま読み上げても問題ありませんか?
- Q7.ライブ配信終了後にアーカイブ動画や切り抜き動画を公開する場合、改めてPR表示が必要ですか?
- 執筆者プロフィール
- 参考資料・関連ページ
- 投資情報発信入門講座のご案内
本記事の概要
この記事のポイント3行まとめ
- 投資系YouTubeライブのPR・スポンサー案件では、広告であることを適切に明示することが重要です。
- 金融商品・金融サービスの紹介では、広告表示だけでなく金融関連法令にも注意が必要です。
- 案件を受ける前に、広告主・報酬条件・紹介内容・表示方法を確認しましょう。
想定読者
- 投資系YouTubeライブで収益化を目指している方
- 企業案件やアフィリエイトを検討している投資系YouTuber
- 証券会社・暗号資産関連サービス・投資スクールなどを紹介する方
この記事を読むと分かること
- PR・スポンサー提供・アフィリエイトにおける広告表示の基本
- 金融商品・金融サービスを紹介する際の法務上の注意点
- 企業案件を受ける前に確認しておきたい実務上のポイント
第1章 投資系YouTuberの収益化にはどんな方法がある?
投資系YouTuberが収益を得る方法には、いくつかの種類があります。
代表的なものとしては、YouTubeの広告収益、企業から依頼を受けて行うスポンサー案件、アフィリエイト、自社サービスや有料コンテンツへの誘導などが挙げられます。
それぞれ収益の仕組みが異なるため、広告・PRに関する注意点も一律ではありません。
投資系YouTuberの主な収益化方法

ここで重要なのは、YouTubeの通常の広告収益と、配信者自身が企業から依頼を受けて行う広告・PR活動は区別して考える必要があるという点です。
例えば、通常のYouTube広告収益は、動画やライブ配信に広告が掲載されることによって発生します。
一方、スポンサー案件では、企業から依頼を受けて、配信者自身が特定の商品やサービスを紹介することになります。
後者の場合、単に動画に広告が表示されるだけでなく、配信者自身の発言や評価が広告の一部として機能することがあります。
また、アフィリエイトでは、配信者が紹介したサービスについて視聴者が口座開設や会員登録などを行うと、配信者に報酬が発生する仕組みが一般的です。
このように、同じ投資系YouTubeライブの収益化であっても、その仕組みによって検討すべき法務上の問題は異なります。
特に、企業から報酬を受け取って特定の金融サービスを紹介する場合には、広告表示の問題だけでなく、紹介行為の内容や契約関係についても確認しておくことが重要です。
第2章 YouTubeライブと企業案件
投資系YouTuberにとって、企業案件はチャンネルの収益化を進めるうえで有力な選択肢の一つです。
例えば、次のような企業案件が考えられます。
- 証券会社から依頼を受けて、口座開設キャンペーンを紹介する。
- 暗号資産関連サービスから依頼を受けて、取引サービスの特徴を説明する。
- 投資スクールから依頼を受けて、講座や受講プランを紹介する。
- 金融関連サービスのスポンサー提供を受けて、ライブ配信内で紹介する。
- 企業から商品・サービスの提供を受けて、実際に利用した感想を話す。
こうした案件では、企業との間にどのような関係があるのかを整理することが重要です。
スポンサー案件にはさまざまな形がある
企業案件といっても、必ずしも金銭報酬を受け取るものだけではありません。
例えば、次のようなケースも考えられます。
① 金銭報酬を受け取るケース
企業から一定の報酬を受け取り、ライブ配信内で商品やサービスを紹介するケースです。
企業から紹介内容や発言するポイントを指定されることもあります。
② 商品・サービスの提供を受けるケース
企業から商品やサービスを無償で提供してもらい、その使用感や特徴をライブ配信で紹介するケースです。
金銭報酬が発生していなくても、企業との間に提供関係があるため、その関係性を視聴者にどのように伝えるかを検討する必要があります。
③ アフィリエイト報酬を受け取るケース
企業の商品・サービスを紹介し、概要欄などに専用リンクを掲載します。
そのリンクを経由して視聴者が口座開設やサービス登録などを行うと、配信者に成果報酬が支払われる仕組みです。
④ 企業から紹介を依頼されるケース
企業から報酬や商品提供を受けていなくても、企業との関係性や依頼内容によっては、広告としての性質を持つことがあります。
したがって、金銭報酬の有無だけで広告に該当するかどうかを判断するのは適切ではありません。
ライブ配信ならではの注意点
企業案件を動画で紹介する場合と、ライブ配信で紹介する場合では、情報の伝わり方にも違いがあります。
通常の動画であれば、撮影後に内容を確認したり、広告表示を追加したりすることができます。
一方、ライブ配信では、視聴者との会話の流れで商品やサービスについて説明することがあります。
例えば、スポンサー企業の証券会社について紹介している途中で、視聴者から「この証券会社は本当におすすめですか?」と質問されることも考えられます。
その場で回答する際、配信者が自分の感想として話しているつもりでも、スポンサーとの関係がある以上、視聴者には広告として受け取られる可能性があります。
また、ライブ配信の途中から視聴を始める人もいるため、配信の冒頭で一度だけスポンサー提供について説明すれば十分とは限りません。
企業案件をライブ配信で取り扱う場合には、配信の進行や視聴者との会話も含めて、広告であることが適切に伝わるように工夫する必要があります。
第3章 スポンサー提供を受けている場合
企業からスポンサー提供を受けている場合には、その関係を視聴者に適切に伝えることが重要です。
特に、投資系YouTubeライブでは、配信者が日頃から投資に関する情報を発信しているため、視聴者が配信者の発言を専門的・客観的な評価として受け取ることがあります。
そのため、企業との関係を明らかにしないままサービスを紹介すると、視聴者が広告であることに気付かず、配信者の自主的な評価だと誤解する可能性があります。
スポンサーとの関係を明確にする
例えば、証券会社から報酬を受け取り、口座開設キャンペーンをライブ配信で紹介する場合を考えてみましょう。
このとき、単に「私がおすすめしている証券会社です」と紹介するだけでは、視聴者は企業との関係を正しく理解できないかもしれません。
実際には企業から依頼を受けて紹介しているのであれば、その事実が分かるように伝える必要があります。
また、スポンサーから金銭報酬を受け取る場合だけでなく、商品・サービスの無償提供や特別な利用機会を受けている場合にも、広告表示の必要性を検討することが重要です。
広告主から依頼された表示と自主的な感想の違い
ここで注意したいのが、企業から依頼を受けて行う紹介と、配信者が自分の意思で行う紹介の違いです。
例えば、普段から利用している証券会社について、配信者が自主的に使い勝手を説明するだけであれば、通常は広告主による表示とは異なるものとして考えられます。
一方、企業から依頼を受け、報酬や商品提供などを受けて紹介する場合には、企業が表示内容の決定に関与していると評価される可能性があります。
企業から具体的な台本や発言内容を指定されていない場合であっても、企業との関係性や依頼の経緯、報酬の内容などを踏まえて判断する必要があります。
したがって、「企業から発言内容を指定されていないから広告ではない」と単純に考えることはできません。
スポンサー案件を受ける際には、企業との契約関係や依頼の目的を確認し、広告としての性質を適切に整理しておきましょう。
第4章 PR・広告であることをどう明示するか
企業案件を取り扱う際に、特に重要なのが広告であることを視聴者に分かるように表示することです。
この点では、景品表示法上のステルスマーケティング規制について理解しておく必要があります。
ステルスマーケティング規制とは?
ステルスマーケティングとは、広告であるにもかかわらず、一般消費者が広告であることを判別しにくい形で商品やサービスを紹介することをいいます。
令和5年10月1日から、ステルスマーケティングは景品表示法上の不当表示として規制されています。
この規制では、企業が第三者に依頼・指示して行わせる表示も対象となります。
例えば、企業から報酬を受け取ったYouTuberが、その事実を明らかにしないまま、あたかも自主的な感想であるかのように商品やサービスを紹介するケースが考えられます。
このような場合、視聴者は広告であることを認識できず、配信者自身の独立した評価だと受け取ってしまう可能性があります。
なお、ステルスマーケティング規制の直接の対象は、原則として商品・サービスを供給する事業者、つまり広告主です。
広告を依頼されたYouTuberやアフィリエイターが、通常、同規制の直接の処分対象となるわけではありません。
ただし、広告主から依頼を受けて表示を行う立場であっても、広告であることを分かりやすく伝えることは重要です。広告主との契約上の責任や、チャンネルの信用という観点からも、適切な対応が求められます。
「PR」「広告」などの表示を活用する
広告であることを明示する方法としては、例えば次のような表現が考えられます。
- 「広告」
- 「PR」
- 「プロモーション」
- 「スポンサー提供」
- 「〇〇社から依頼を受けて紹介しています」
- 「〇〇社から商品・サービスの提供を受けています」
重要なのは、単に特定の言葉を記載することではなく、視聴者が広告主との関係を明確に認識できることです。
例えば、「協力」「おすすめ」「特別企画」といった表現だけでは、広告であることが十分に伝わらない可能性があります。
ライブ配信ではどこに表示すればよい?
ライブ配信の場合、視聴者が途中から参加することも考えられます。
そのため、配信開始時に一度だけ広告であることを説明するのではなく、配信中も視聴者が広告であることを認識できるようにする工夫が望まれます。
例えば、次のような方法が考えられます。

消費者庁のQ&Aでも、動画の場合、冒頭に「広告」と表示するだけでは、途中から視聴する人が見逃すおそれがあるため、動画全体を通じて広告であることが明瞭になるようにすることが望ましいとされています。
ライブ配信でも、この考え方を踏まえて表示方法を検討するとよいでしょう。
特に、配信の途中でスポンサー企業の商品やサービスを紹介する場合には、紹介する場面でも広告であることが分かるようにしておくことが重要です。
第5章 アフィリエイトを利用する場合
投資系YouTuberにとって、アフィリエイトも比較的取り組みやすい収益化方法の一つです。
例えば、証券会社や暗号資産交換業者などのサービスを紹介し、概要欄に専用リンクを掲載する方法があります。
視聴者がそのリンクを経由して口座開設やサービス登録などを行うと、配信者に報酬が発生する仕組みです。
ただし、アフィリエイトを利用する場合にも、広告表示や紹介内容について注意する必要があります。
アフィリエイトリンクであることを明示する
アフィリエイトでは、視聴者がリンクを利用することで配信者に報酬が発生する場合があります。
そのため、通常の参考リンクや公式サイトへの案内と区別できるようにしておくことが重要です。
例えば、ライブ配信の概要欄に証券会社の口座開設リンクを掲載する場合には、次のような表示が考えられます。
表示例
「本動画にはアフィリエイト広告が含まれています。概要欄のリンクから口座開設等を行った場合、当チャンネルに報酬が支払われることがあります。」
このように、リンクを利用した場合に配信者に報酬が発生する可能性があることを、視聴者に分かるように伝えます。
ただし、概要欄に一度記載しておけば、どのような場合でも十分というわけではありません。
表示の場所や文字の大きさ、色、視聴者が実際に認識できるかどうかなどを踏まえて判断する必要があります。
また、ライブ配信中にアフィリエイトリンクを積極的に案内するのであれば、配信中にも広告であることを説明することが望ましいでしょう。
アフィリエイト報酬と紹介内容の関係
アフィリエイトを利用する場合には、報酬を得るために特定のサービスを過度に推奨してしまうことにも注意が必要です。
例えば、次のような発言が考えられます。
- 「この証券会社は絶対におすすめです」
- 「ここで口座を開設しておけば間違いありません」
- 「この暗号資産取引所を使えば利益を出しやすくなります」
- 「今すぐ登録した方がいいです」
こうした表現は、サービスの内容や実際の利用条件を超えて、視聴者に過度な期待を抱かせる可能性があります。
特に、投資に関連するサービスでは、手数料、取引条件、価格変動リスク、元本割れの可能性など、利用者が理解しておくべき事項があります。
報酬を得るためにメリットだけを強調し、重要な注意事項を伝えないような紹介は避けるべきです。
また、アフィリエイト報酬が発生することと、配信者が紹介するサービスを客観的に評価していることは別の問題です。
自分自身の利用経験に基づいて感想を述べる場合にも、報酬関係を明示したうえで、実際に確認できる事実と個人的な感想を区別して説明することが重要です。
第6章 金融商品・金融サービスを紹介する場合
投資系YouTuberが広告・スポンサー案件を受ける場合、特に注意したいのが金融商品や金融サービスの紹介です。
一般的な商品・サービスの広告とは異なり、金融関連の広告では、金融商品取引法などの規制が関係する場合があります。
例えば、次のようなサービスが考えられます。
- 証券会社の口座開設サービス
- FX取引サービス
- 暗号資産交換業者の取引サービス
- 投資信託や株式などの金融商品の紹介
- 投資スクールや投資教育サービス
- 投資助言サービス
これらを紹介する場合には、広告表示の問題だけでなく、金融関連法令上の位置付けについても確認することが重要です。
金融商品取引法上の広告規制
金融商品取引法では、金融商品取引業者などが自ら行う金融商品取引業の内容について広告等を行う場合、一定の事項を表示することが求められています。
例えば、金融商品取引法第37条では、広告等に関する規制が設けられており、金融商品取引業者等が広告を行う際には、商号や登録番号、手数料等、所定の事項を表示することが必要となる場合があります。
また、金融商品取引業者等が行う広告等については、次のような点にも注意が必要です。
- 手数料や報酬などの費用を誤解させないこと。
- 元本欠損や損失が生じるおそれがある場合、そのリスクを適切に表示すること。
- 利益が確実に得られるかのような表示をしないこと。
- 取引のメリットだけを強調し、重要なデメリットを分かりにくくしないこと。
例えば、証券会社が株式取引サービスを広告する場合、取引手数料や価格変動による損失リスクなどについて、法令に従った表示が求められます。
ここで注意したいのは、金融商品取引法第37条の広告規制は、基本的に金融商品取引業者等が自らの業務について広告等を行う場合の規制だという点です。
企業から依頼を受けたYouTuberが広告を紹介する場合、金融商品取引業者自身に課される広告規制が、そのままYouTuberに同じ形で適用されると考えるのは適切ではありません。
もっとも、YouTuberが企業の広告内容を制作・紹介する場合にも、広告主が法令に適合した表示を行えるように協力する必要があります。また、広告主から提供された説明資料や台本をそのまま読み上げる場合であっても、その内容が正確かどうかを確認する姿勢が重要です。
金融サービスの紹介と投資助言は同じではない
もう一つ注意したいのが、金融サービスを紹介することと、投資助言を行うことの違いです。
例えば、証券会社の口座開設キャンペーンを紹介する行為と、特定の銘柄について視聴者に買付けを勧める行為では、法的な検討事項が異なります。
投資助言・代理業は、投資顧問契約に基づき、有価証券の価値等や金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に関する助言を行う業務などを対象としています。
そのため、特定の金融サービスを紹介したり、サービスの一般的な特徴を説明したりするだけで、直ちに投資助言・代理業の登録が必要になるわけではありません。
一方、企業案件として報酬を受け取りながら、特定の銘柄や金融商品の売買判断について具体的な助言を行う場合などには、実際の契約関係や提供内容を踏まえた検討が必要になります。
また、投資助言・代理業の登録が必要となるかどうかは、発言の一部分だけで判断できるものではありません。投資顧問契約の有無、助言内容、報酬関係、サービスの提供方法などを総合的に確認する必要があります。
したがって、企業案件を受ける際には、単に「金融サービスの広告だから問題ない」「広告案件だから投資助言にはならない」と考えるのではなく、実際にどのような情報を提供し、どのような行為を行うのかを整理しておくことが重要です。
投資スクールや有料サービスを紹介する場合
証券会社や暗号資産関連サービスだけでなく、投資スクールや有料の投資情報サービスを紹介する場合にも注意が必要です。
例えば、企業から報酬を受け取って投資スクールの受講を勧める場合、受講料、講座内容、提供されるサービスの範囲などについて、正確に説明することが重要です。
また、「受講すれば必ず利益を出せる」「初心者でも確実に稼げる」といった表現は、実際のサービス内容や根拠を超えて、視聴者に過度な期待を抱かせるおそれがあります。
投資教育サービスを紹介する場合には、投資知識を学ぶための講座なのか、具体的な投資判断に関する情報を提供するサービスなのかなど、提供内容の違いにも注意しましょう。
特に、投資情報の提供を伴うサービスを紹介する場合には、広告表示だけでなく、提供事業者の登録状況やサービスの法的な位置付けについても確認することが望まれます。
第7章 「自分の感想」と「広告」の境界
投資系YouTubeライブでは、配信者自身の投資経験やサービスの利用経験を交えて話すことがよくあります。
そのため、企業案件であっても、配信者自身の感想や評価を交えながら紹介するケースは少なくありません。
しかし、ここで注意したいのが、配信者自身の感想として話していることと、広告としての性質を持つことは両立する場合があるという点です。
自分の感想であれば広告にならない?
例えば、配信者が普段から利用している証券会社について、ライブ配信で次のように話したとします。
「私は普段からこの証券会社を利用しています。取引画面が見やすく、個人的には使いやすいと感じています。」
この発言が配信者自身の自主的な感想であり、企業から紹介を依頼されたものではないのであれば、通常は企業の広告表示とは異なるものとして考えられます。
一方、企業から報酬を受け取り、同じような発言をするよう依頼されていた場合には、事情が異なります。
実際に利用した感想であったとしても、企業から依頼を受けて行う表示であれば、広告としての性質を持つ可能性があります。
つまり、発言内容が配信者自身の感想であることだけを理由に、広告表示が不要になるわけではありません。
広告案件で注意したい発言例
企業案件では、サービスのメリットを伝えることが求められる場合があります。
しかし、紹介内容によっては、視聴者に誤解を与えるおそれがあります。

特に、投資に関連するサービスでは、利用者が損失を被る可能性もあります。
そのため、メリットだけを強調するのではなく、手数料、利用条件、価格変動リスクなど、視聴者が判断するために必要な情報を適切に伝えることが重要です。
また、広告主から指定された表現をそのまま使用する場合でも、内容が正確であるか、誤認を招くおそれがないかを確認する必要があります。
広告表示をしていても内容が適切とは限らない
ここで押さえておきたいのが、広告であることを明示すれば、どのような広告表現でも許されるわけではないという点です。
例えば、「PR」と表示したうえで、実際には保証されていない利益を確実に得られるかのように紹介した場合、広告表示の問題とは別に、表示内容そのものが不適切と評価される可能性があります。
広告であることを明らかにすることと、広告内容が法令に適合していることは、別々に確認しなければなりません。
企業案件を受ける場合には、広告表示だけでなく、紹介するサービスの内容や発言の根拠についても確認するようにしましょう。
第8章 視聴者に誤解を与えない広告表示
ここまで見てきたように、投資系YouTubeライブでは、広告であることを明示するだけでなく、視聴者がその内容を正しく理解できるように工夫することが重要です。
特にライブ配信では、視聴者が途中から参加したり、コメント欄で質問したりするため、広告表示を一度行えば十分というわけではありません。
配信の途中から視聴する人にも分かるようにする
例えば、配信の冒頭で「本日の配信は〇〇社の提供でお送りします」と説明したとしても、途中から視聴を始めた人は、その説明を聞いていない可能性があります。
そのため、スポンサー企業の商品やサービスを紹介する場面では、画面上にPR表示を設けたり、説明の中で広告案件であることを改めて伝えたりする方法が考えられます。
また、概要欄や固定コメントにもスポンサーとの関係を記載しておくと、視聴者が後から確認しやすくなります。
広告主からの説明と自分自身の評価を区別する
企業案件では、広告主から提供された資料を使ってサービスを紹介することがあります。
その場合、広告主が説明しているサービスの特徴と、配信者自身が実際に利用して感じたことを区別して伝えることが重要です。
例えば、次のような説明が考えられます。
「こちらはスポンサー企業から提供された資料に基づくサービスの説明です。私自身が利用した感想については、ここから別にお話しします。」
このように区別すれば、視聴者も企業からの説明と配信者自身の評価を整理しやすくなります。
もちろん、配信者自身の感想であっても、広告案件として依頼を受けているのであれば、広告であることの表示は必要です。
メリットだけでなく注意事項も伝える
金融商品や金融サービスを紹介する場合には、メリットだけでなく、利用者にとって重要な注意事項についても適切に説明する必要があります。
例えば、証券会社の口座開設を紹介するのであれば、取引手数料や取引条件などを確認することが重要です。
暗号資産取引サービスであれば、価格変動による損失や取引に伴うリスクについても理解しておく必要があります。
また、投資スクールを紹介する場合には、受講料や講座内容、受講によって得られる知識・サービスの範囲などを正確に伝えることが大切です。
広告案件だからといって、視聴者にとって不利益となる情報を省略してよいわけではありません。
アーカイブや切り抜きでも広告表示に注意する
ライブ配信が終了した後も、アーカイブ動画や切り抜き動画が公開されることがあります。
その際、ライブ配信時には広告であることを説明していたとしても、編集によってその部分が削除されると、後から視聴する人には広告であることが伝わらなくなる可能性があります。
例えば、スポンサー企業の商品を紹介している部分だけを切り抜いて公開する場合には、切り抜き動画にも広告であることが分かる表示を設けることが重要です。
この点は、次回の第8回「投資系YouTubeライブの切り抜き・Shorts・X投稿で注意したいこと」でも、さらに詳しく取り上げるテーマです。
第9章 案件を受ける前に確認したいポイント
最後に、投資系YouTuberが広告・スポンサー案件を受ける際に確認しておきたいポイントを整理します。
企業案件はチャンネルの収益化につながる一方で、紹介する商品やサービスによっては、視聴者の投資判断や資産形成に影響を与える可能性があります。
そのため、報酬の金額や案件の魅力だけで判断するのではなく、企業やサービスの内容、広告表示、紹介方法などを事前に確認することが重要です。
企業案件を受ける前のチェックポイント

特に、金融商品や金融サービスを紹介する場合には、広告主の事業内容や登録状況についても確認しておきたいところです。
例えば、証券会社や暗号資産交換業者などを紹介する場合には、単に企業から依頼があったというだけでなく、実際にどのようなサービスを提供しているのかを確認することが望まれます。
また、投資スクールや投資情報サービスについても、提供内容や料金体系、広告で説明する内容が実態と一致しているかを確認する必要があります。
契約時に広告内容や表示方法を確認する
企業案件を受ける場合には、広告表示や紹介内容について、企業側と事前に確認しておくことも重要です。
例えば、次のような事項を契約前に整理しておくとよいでしょう。
- ライブ配信内で紹介する内容
- 配信者が使用できる広告表現
- PRやスポンサー提供の表示方法
- 企業から提供される資料や画像の利用条件
- 広告内容の事前確認や修正の範囲
- 配信後のアーカイブや切り抜き動画の取り扱い
- 報酬の支払条件や支払時期
特に、企業から指定された表現を使用する場合には、その内容に誤りや誇張がないかを確認することが重要です。
また、企業から不適切な表現を求められたり、広告であることを明示しないよう求められたりした場合には、その案件を受けること自体を慎重に検討する必要があります。
案件を受けることによって一時的な収益を得られたとしても、視聴者からの信頼を失ってしまえば、長期的なチャンネル運営に悪影響を及ぼす可能性があります。
広告主との関係だけでなく、自分のチャンネルの視聴者や発信方針との相性も考慮して、案件を受けるかどうか判断しましょう。
第10章 まとめ
今回は、投資系YouTubeライブにおける広告・スポンサー案件について、PR表示やアフィリエイトの基本から、金融商品・金融サービスを紹介する場合の注意点までを解説しました。
投資系YouTuberにとって、スポンサー案件やアフィリエイトは重要な収益化手段の一つです。
しかし、投資に関連する商品やサービスを紹介する場合には、一般的な商品紹介とは異なる法務上の注意点があります。
今回のポイントを整理すると、次のとおりです。
① 広告・スポンサーとの関係を明確にする
企業から報酬や商品・サービスの提供を受けて紹介する場合には、広告であることや企業との関係性を視聴者に分かるように伝えることが重要です。
特に、ライブ配信では途中から視聴する人もいるため、配信中も広告であることが認識できるように工夫しましょう。
② 金融商品・金融サービスの紹介では金融法務にも注意する
証券会社や暗号資産関連サービス、投資スクールなどを紹介する場合には、広告表示だけでなく、紹介内容や金融商品取引法との関係についても確認する必要があります。
また、金融サービスの紹介と投資助言は同じではありませんが、具体的な投資判断に関する助言や契約の媒介などに踏み込む場合には、別途検討が必要になります。
③ 広告であることの表示と広告内容の適切性は別々に確認する
PR表示をしていれば、どのような広告表現でも許されるわけではありません。
サービスのメリットだけを強調したり、利益が確実に得られるかのような表現をしたりしないように注意しましょう。
投資系YouTuberが広告・スポンサー案件を適切に取り扱うことは、法令上の問題を避けるだけでなく、視聴者との信頼関係を維持するうえでも重要です。
チャンネルが成長し、企業案件の依頼が増えてきたときこそ、広告主との関係や紹介内容を丁寧に確認する姿勢が求められます。
単に収益を得ることだけを考えるのではなく、視聴者にとって有益で、誤解を与えない情報発信を心掛けながら、長期的に信頼されるチャンネル運営を目指しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q1.企業から報酬を受け取らず、商品やサービスを無償提供された場合もPR表示は必要ですか?
金銭報酬を受け取っていなくても、企業から商品やサービスの提供を受け、その提供を受けたことを前提に紹介している場合には、広告であることの表示が必要になる可能性があります。
ステルスマーケティング規制では、金銭報酬の有無だけでなく、企業が表示内容の決定に関与しているかどうかなどが重要になります。
そのため、無償提供だから広告表示は不要と考えるのではなく、企業との関係性や依頼内容を踏まえて判断することが大切です。
Q2.ライブ配信の概要欄に「PR」と記載しておけば、広告表示として十分ですか?
必ずしも十分とは限りません。
ライブ配信では、視聴者が途中から参加することもあるため、概要欄に記載するだけでなく、配信画面や配信中の説明なども活用して、広告であることを分かりやすく伝えることが望まれます。
特に、スポンサー企業の商品やサービスを紹介する場面では、その場面でも広告であることが認識できるように工夫しましょう。
Q3.アフィリエイトリンクをYouTubeの概要欄に掲載するだけでも、広告表示は必要ですか?
必要になる場合があります。
アフィリエイトリンクを経由して視聴者が口座開設やサービス登録などを行うと、配信者に報酬が発生する仕組みであれば、その関係を視聴者に分かるように伝えることが重要です。
例えば、「本動画にはアフィリエイト広告が含まれています」といった表示が考えられます。
また、ライブ配信中にアフィリエイトリンクを積極的に案内する場合には、概要欄だけでなく、配信中にも広告であることを説明するとよいでしょう。
Q4.企業案件であっても、自分が実際に利用した感想を話すのであれば問題ありませんか?
実際に利用した感想を話すこと自体が直ちに問題になるわけではありません。
ただし、企業から依頼を受けて報酬などを受け取り、そのサービスを紹介しているのであれば、実体験に基づく感想であっても広告としての性質を持つ場合があります。
また、実際の利用経験を超えてサービスの安全性や投資成果を保証するような表現は避ける必要があります。
企業からの説明と、自分自身の利用経験に基づく感想を区別して伝えることが重要です。
Q5.証券会社や暗号資産交換業者のアフィリエイトを行うには、投資助言・代理業の登録が必要ですか?
証券会社や暗号資産交換業者のサービスを紹介し、アフィリエイト報酬を受け取るというだけで、直ちに投資助言・代理業の登録が必要になるわけではありません。
投資助言・代理業への該当性は、投資顧問契約に基づく助言の提供など、実際の業務内容や契約関係を踏まえて判断されます。
ただし、サービスの紹介にとどまらず、特定の銘柄や金融商品の売買判断について具体的な助言を行う場合などには、別途検討が必要です。
Q6.スポンサー企業から指定された広告文や台本は、そのまま読み上げても問題ありませんか?
企業から提供された広告文や台本であっても、その内容を確認せずに読み上げることは避けた方がよいでしょう。
例えば、実際には保証されていない利益を確実に得られるかのように説明していたり、サービスのメリットだけを強調して重要な注意事項を省略していたりする場合には、問題が生じる可能性があります。
広告主から提供された資料であっても、説明内容が正確であるか、視聴者に誤解を与える表現が含まれていないかを確認することが重要です。
Q7.ライブ配信終了後にアーカイブ動画や切り抜き動画を公開する場合、改めてPR表示が必要ですか?
アーカイブ動画や切り抜き動画についても、広告であることが視聴者に分かるようにしておくことが重要です。
例えば、ライブ配信中にはスポンサー提供であることを説明していても、切り抜き動画の編集時にその説明部分を削除してしまうと、後から視聴する人には広告であることが伝わらなくなる可能性があります。
そのため、アーカイブや切り抜き動画を公開する際にも、画面上の表示や説明文などを通じて、広告主との関係が適切に伝わるようにしましょう。
執筆者プロフィール
金融法務コンサルタント。元行政書士として、IFA登録や投資助言・代理業登録の支援実績多数。
現在は、ブログ・noteを通じて、金融ビジネスに関わる実務家向けに、制度解釈や実務上の注意点を中心とした情報発信を行っています。現在公開中の有料note記事は、金融法務note集で紹介していますので、ご興味のある方は、ご覧ください。
本サイトでは、可能な限り一次情報・実務視点に基づいた解説を行っていますが、個別事案については一般論だけでは判断が難しいケースも少なくありません。そのような場合に限り、筆者が提供している金融法務サポートにおいて、制度上の位置付け整理やリスクの考え方についての整理支援を行っています。
本サイトでは、投資情報発信、投資助言・代理業、IFAビジネスに関する法務・コンプライアンス情報を解説しています。
ただし、個別の事業形態や状況によっては、情報だけでは判断が難しいケースもあります。そのような場合の補足的な選択肢として、コレクト金融法務コンサルタント事務所では、個別整理を目的とした金融法務サポートを行っています。
参考資料・関連ページ
※ 本記事は、以下の一次資料・業界ガイドラインを踏まえて作成しています。
参考資料
・消費者庁:「ステルスマーケティングに関するQ&A」
・金融庁:「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」
・金融庁:「投資運用業等 登録手続ガイドブック」
関連ページ
・投資情報発信入門
・【基礎編】投資情報発信はどこから「金融規制の対象」になるのか?― 個人発信者が最初に知っておくべき基本ルール
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・「僕なら買います」は大丈夫?|投資系YouTubeライブで気を付けたい表現
・デイトレードを実況しながら銘柄について話すときの注意点|「自分の売買」と「投資情報発信」の境界
・視聴者と一緒に相場を見るライブ配信の注意点|コメント・チャットへの回答と投資助言
投資情報発信入門講座のご案内
SNS・YouTube・noteなどで投資情報を発信する方向けに、オンライン講座プラットフォーム「公務員のライト」にて、投資情報発信者向けの「投資情報発信入門講座」をご提供しています。
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